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2008.10.13 + 追記2本
 
 


迫り来る衆院選挙に想う…

 政治の論議はなかなか難しい。
   “政党がきっちりとしてマニフェストを示すならば、
   それを理性的に判断して選択するのが
   日本の民主主義の発展には重要である。”
  → 永久寿夫: 「小沢の不誠実、麻生の構想力」 Voice [2008年11月]

 それは確かにそうなのだが。
 現実には、“耳ざわりのよいこと”を訴えるしかなかろう。
 それは小泉政権の功罪でもあると思う。

 国民へ直接語りかけることでリーダーシップを発揮し、今までの日本では考えられなかったことができたのは事実。しかし、よく考えれば、その方針とは、そもそも、民主党が提起してきたものと大差ない。そして、肝心なところには手をつけなかったのではないか。
 ところが、選挙では民主党ではなく、自民党が大勝。

 問題は、この総括。
 例えば、経済の観点で見れば、こう映る。
  ・竹中路線の貫徹
    -金融業界の不良債権一掃
    -国による企業再生
    -新規上場等の株式市場の活性化
  ・労働市場の規制緩和
    -国内雇用減少阻止
    -大企業の国際競争力回復
  ・地方公共工事財源の抑制
    -地方経済低迷
    -日本経済全体の信用度向上
  ・光ケーブル使用拡大
    -インターネット通信網普及
  ・米国との同盟関係強化
    -米市場拡大/経済摩擦防止
    -為替レート安定
    -資源の安定調達保障
  ・中国との外交的緊張
    -欧米より慎重な中国投資
 これ以外にも、経済特区やベンチャー作りなどが喧伝されたが、泡沫施策に近いのではないか。なにせ、既存産業を揺るがしかねない規制緩和はすべて避けたのである。
 ただ、金融不良資産がなくなり、外需が旺盛だったから、労働規制緩和によって収益性が回復した大企業が投資リスクをとれるようになったのは大きかった。しかし、国内投資は魅力が薄いから、必要不可欠なレベルで終始。
 要するに、悪化は防げたが、長期低迷を止める施策は打てなかったということ。

 ところが、自民党後継総裁のもとで争われた参議院選挙では、民主党が突如方向転換してきた。驚いたことに、小沢代表がかつて打ち出した『日本改造計画』とはなんの整合性もない方針。もともと、地方はゼネコンで食べていけなくなるから、自分達でなんとかしろと言っていた筈だが、それとは水と油のような政策を訴えたのだ。
 まあ、自由貿易論者である筈の米国の共和党政権が、繊維アパレル産業では、票を得るために、頑強な輸入規制を続けるようなものかも知れぬが。
 ともあれ、この結果、与党大敗北。

 これを「民意」と解釈した福田政権は小泉路線からの転換を開始した。致しかたなかろう。しかし、それでも支持率は降下一途。
 当たり前である。バラマキ予算を組まない限り、地方経済の上向き感が出る訳がないからだ。
 そこで、麻生政権誕生だ。議員任期切れが迫ってきたから、個人の人気にすがりその力で勝利を狙う以外にないということ。地方の経済的自立と「自由と繁栄の輪」構想が核だが、言葉はどうあれ、できることは限られている。

 だが、そうはいっていられまい。地方経済は疲弊というより、自壊が始まった可能性さえ否定できない。将来の見込みがなさそうな企業が整理されず残っているようだし、不良債権が溜まっている地方銀行がない筈もなかろう。
 確かに、これは、小泉改革のツケである。生産性が低い産業を温存させたのだから。しかし、支持率が高かった小泉政権でさえ手をつけられなかったのに、新政権に何ができるかだ。どうにもならない産業を活かし、新産業を興すことができるとは思えまい。

 そして、両陣営ともに、地域自立化を語るが、それは地域競争の持込でもある。経済運営が稚拙で、新産業勃興を抑制する地域は没落していくことを意味する。はっきりとそう語らない限り何も変わるまい。
 要するに、五十歩百歩ではないか。

 一番こまるのは、両者の外交姿勢が違うことで政権選択させようとの風潮。それはそれで重要な問題であることは確かだが、安全保障で自立する力がないのに、無理な施策で国民を引っ張り、外交的緊張を発生させて欲しくない。
 輸出入で支えられている経済であり、問題が発生しても自己解決能力などないのだから。

 はっきり言えば、できもしない美しいビジョンを作りを競ったところで、空しいということ。
 そんなことより、今やるべきがあろう。力のある産業をさらに地道に伸ばす工夫であり、新産業勃興の仕掛けを考案することではないのか。
 そんな知恵が出せるうちに進めないと、大変なことになりかねないと思うが。

 --- 追記1 ---
麻生内閣は国内での支持を集めるために、「東アジアでの緊張創出の道に進むしかない」と見ていると書いたので、読み違える人がいるようだ。・・・米国が北朝鮮テロ指定を解除すれば、次はエネルギー支援に進む。当たり前だが、日本が大スポンサー役として期待されているのである。そのなかで、日本はどういう態度を示せるか。他国すべてが緊張緩和に進もうと主張するなかで、日本だけが反対することになりかねないということ。
  冗談半分話→ 「政治は予想通りの展開」 [2008年9月22日]

 --- 追記2 ---
政治家の質の悪さに驚いた。“個人の見解”だそうだが、そのTV発言の一部(2008/09/29-1:07〜1:13)が書き下ろされているので、ご参考ということで、引用しておこう。
[http://d.hatena.ne.jp/sk-44/20081001/1222813889]
 ・預金金利を上げるべきです。銀行は。銀行に預金金利を、それこそ強力な行政主導指導をして。
 ・なぜならば、日本のほとんどの銀行は、国民の税金で潰れるところを助けてもらったんです。
 ・だけどいまだに大銀行の経営者の人たちの所得は、相対的には非常に高いです。
 ・そしてべらぼうに利益を上げてきました、この間。
まるで、経済学的知識ゼロの、主婦の茶のみ話のレベル。 政治家が、ここまでひどいとは思わなかった。
ただ救いは、この話を引き継いだ、高橋洋一氏の一言。
「党の幹部の人が、ウチもそういう議論してるうちはなかなか難しいんだよな、って言ってましたね。」
これとは、全く関係ないが、思わず、日本の金融危機に際した米国金融高官の発言を思い出してしまった。
 ・教科書にはこの現象はでてこない。
 ・先進国で発生したことはない。
 ・これは政治問題である。
その通り。

 --- 参照 ---
(日本の選挙で使用される投票箱の写真) [Wikipedia] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Vote-Box.jpg


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