↑ トップ頁へ

2008.12.11
 
 


麻生首相の失敗の本質…

 自民党の石原幹事長代理が「自民党議員の7割から8割が『麻生政権で選挙をやって与党でいられるのか』と疑問を持っている。」と発言したそうだ。(1)

〜 麻生総理の扱い 〜(2)
-週刊誌- -見出し-
週刊文春 漢字だけじゃない!
麻生太郎の「マンガ脳」
週刊新潮 マンガばかり読んでいるからだ!
「学習院の恥」とOBも見放した
「おバカ首相」麻生太郎
週刊朝日 麻生「マンガ脳政権」の崩壊が始まった
サンデー毎日 “阿呆”太郎に
自民党内からも「これだけは言わせろ」
週刊現代 “おバカ”じゃすまねえよ
フライデー 宮崎駿監督「麻生首相は“恥ずかしい”」
 まあ、週刊誌には、礼儀をわきまえない、とんでもない見出し(2)が躍っており、今や、児童までが総理大臣を揶揄する状況だから致し方あるまい。
(世論調査の数字は、共同通信の12月4/5日の電話調査結果によれば、支持率25.5%、不支持率61.3%。(3)自民党大敗は間違いなさそうな数字ばかり。)

 政治家にとって、多少の漢字が読めないことなど末梢的な問題だと思うが、証券市場の常識ゼロと報じられれば話は別。
 しかも、クーポン券配布といった、素人でもわかる愚策を提案したから、統治の仕組みを全く理解していない政治家の印象を与えてしまった。
 その上、緊急事態と言いながら、経済対策の議論は野党のお陰でゴチャゴチャするから、正月明けから始めると堂々と主張すれば、どんな反応がでるかは自明だと思うが。

 危機の時には、明るい展望を語れる政治家に人気が集まることを理解した上で、地方のバラマキ期待に応える政策を打ち出すことで集票を図っているとばかり思っていたが、集票どころか失票行動しかできなかったようだ。

 政治抗争の鉄則は、「溺れた犬は叩かねばならぬ」だから、この先どうにもならなくなるかも。
 もっとも、首をすげかえたくても、自民党は人材枯渇らしいし、公明党は黙まりだから、耐える算段なのだろう。皆で選んだのだから、溺れるなら一緒にという気概がある訳ではないようだ。

 経済界が、この政権の誕生を支持したのだから、まさか麻生首相が週刊誌の見出しのようなとんでもない人物であるとも思えないのに、このていたらく。
 まともなスタッフがいないのか、聞く耳を持たないのか、はたまた権力闘争の罠に陥ったのか、さっぱりわからぬが、リーダーシップ発揮の仕方がわからないのかも知れない。

 そう思うのは、この手の失敗は、日本の組織では結構見かけるからだ。もちろん、企業内での話だが。

 すでにできあがった仕組みのなかで、権限を与えられて、ワンマン的に振舞うことで失敗する人は少なくないが、その現象とよく似ているのである。
 たいていは、命令できる地位に登ったので、能力もないくせに自分の力を見せつけたから上手くいかないのだと評される。
 だが、当人にしてみれば、権限を与えられたから、自分の能力を十二分に発揮しようと努力しただけにすぎない。両者の認識には相当のギャップがあるのが普通。
 ここだけ見て、云々しても実態はよくわからないが、逆の例を知ると本質が見えてくる。

 不思議なことに、誰が見ても凡庸で、とんでもない指示を繰り返すリーダーにもかかわらず、成果が生まれたりすることがある。どうしてそうなるかと言えば、単純。
 リーダーが力を発揮しているように映るよう、部下が一団となって動いているのだ。そのまとめ役は「番頭さん」と呼ばれていたりすると言えばおわかりになる方も多かろう。このサポートチーム、骨があり、リーダーが間違った方向に行きそうな兆候をいち早く見つけ、予め注意したりする。組織を壊しかねない指示内容が含まれていると、換骨奪胎も辞さない。しかし、決して表にでて旗を振ることはないし、勝手に方向を決めたりもしない。分をわきまえて動くのである。日本の組織の特徴はここにあると言えなくもない。

 麻生首相は、こうしたチーム作りが苦手なのではないか。

 もっとも、それならそれで、米国流でいけばよい話なのだが。
 Obama次期米国大統領のチーム編成はその典型。(4)
 Summers元財務長官のような頭が切れる専門家と、AIGがかかえるCDS問題を理解しているGeithnerニューヨーク連邦準備銀行総裁を起用して、経済運営を進めるようだし、対外問題については、国防長官を留任させ、Hillary Clinton上院議員を外交の顔として抱え込むのだ。この体制で“チーム”として、一丸となって危機に対処しようという目論み。
 誰が考えても、簡単とは思えない、とんでもない布陣だ。しかし、経済運営や外交の経験が薄く、知識も欠いていることを自覚しているから、この手しかなかったということだろう。
 気心が通う仲間と一緒になって政権運営をする訳にはいかなかったのである。

 プラグマティズムの権化としか言いようがない人事采配だが、これがどのように“Change”に繋がるのかは、さっぱりわからぬ。なにせ、共和党勢力にはしごく好評な人事なのだから、政策が大きく変わらないということ。(5)
 要するに、国家的没落阻止のため、危機感をもって機敏に動いていることを見せつけているだけのこと。
  ・・・麻生首相の失敗のモトはココではないか。

 --- 参照 ---
(1) “石原伸晃幹事長代理「麻生政権はがけっぷち」 自民党に首相反発続々” 産経新聞 [2008.12.5]
  http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081205/stt0812052316008-n1.htm
(2) 週刊文春 http://www.bunshun.co.jp/mag/shukanbunshun/adv/081127.htm
  週刊新潮 http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/backnumber/20081119/
  週刊朝日 http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=9946
  サンデー毎日 http://www.mainichi.co.jp/syuppan/sunday/news/20081121-173255.html
  週刊現代 http://kodansha.cplaza.ne.jp/wgendai/article/081201/top_02_01.html
  フライデー http://www.bitway.ne.jp/kodansha/friday/scoopengine/index.html
(3) “内閣支持率25.5%に急落 小沢氏、党首力で逆転” 共同通信 [2008.12.7]
  http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008120701000234.html
(4) OBAMA BLOG http://my.barackobama.com/page/content/hqblog
  -2008年12月2日
   President-elect Obama and Vice President-elect Biden Announce Key Members of their National Security Team
  -2008年11月25日
   President-Elect Barack Obama and Vice President-Elect Joe Biden Announce Key Members of Economic Team
(5) ネオコン系とされるメディアが、こうした人事を概ね支持しているようだ。
  Fred Barnes: “The Obama Jolt ” The Weekly Standard [2008.12.8]
  http://www.weeklystandard.com/Content/Public/Articles/000/000/015/856nzktr.asp


 政治への発言の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2008 RandDManagement.com