日米のリーダーの違い(20090105)

2009.1.5

日米のリーダーの違い…

　Obama米次期大統領の支持率は高い。なんと82％で、不支持率は15％でしかない。
　閣僚指名でも、支持は56％で、平均以下との評価を下したのは11％に過ぎない。⁽¹⁾

　どうしてこれほどの人気を集めることができるのかわからぬが、なんとなく、本気感を与えるからかも。
　“Far from being an excuse for inaction or delay, the magnitude of the work ahead is all the more reason to begin that work.”⁽²⁾という姿勢がうけているような気がする。政府のリーダーシップの下で雇用問題を乗り切れば、もともと持っていた成長力が復活してくるとのイメージが国民に生まれ始めたということだろう。

　いかにも米国らしい。

　思わず、Apple ComputerのSteve Jobs CEOが行ったスピーチを思い出してしまった。⁽³⁾
　その主旨はごくありきたりなもの。しかし、苦難の生い立ちを聞かされれば、人々の心に染み入る言葉となる。そんな話ができる人に期待が集まるのが米国社会ということではないか。

　これと好対照なのが、日本の社会。

　麻生内閣支持率は下降一途である。2008年末で、支持率21％、不支持率73％と惨憺たる数字だ。⁽⁴⁾
　なんの苦労もなく、まともな勉強もせずに生きてきた首相だから、税金バラ撒き政策しかできないとのイメージが定着してしまったから、この先さらに低下一途だと思われる。しかし、それより驚きなのは、首相のリーダーシップ発揮が期待できない政権を好む政治家が多いことの方だ。指導力発揮ができないなら、それはそれで、かえって好都合と見ているのだろう。

　そんな状況下で、当の首相が、「最も早くこの不況から脱するのは、日本」であり、「もっと自信を持っていい」と威勢のよい言葉を発した。⁽⁵⁾正月らしさを打ち出すという意味では常套句に近いが、センスが悪すぎる。
　明るく振舞っただけのことだろうが、世間から見れば、それは能天気に映りかねない。

　すでに、米国市場の冷え込みが続くのは間違いないことが、津々浦々まで語られているからだ。つまり、この先数年、日本経済を支えてきた輸出企業が不調に陥ることを、皆、感覚的にわかっているということ。それに、多くの製造業で、製造施設の老朽化が進んでいることも、薄々感じている。だが、国内投資に踏み切る企業は例外的でしかないと見ている人ばかり。どう見たところで、日本経済を支える産業の不振は避けようがないのである。
　しかも、製造業以外には期待できそうにない。見ただけで不調一途とわかるサービス業者は少なくないし、税金だけで食べている業態が余りに多いからだ。これらの内向き業種が、雇用を支えることができるとは、誰も思っていまい。
　はっきり言って、普通に考えれば、曙光などどこにも見えないのである。
　従って、これから大変なことになるという予感が広がっている。これが現実。

　そこに、信頼度ゼロの宰相が、空元気発言。どんな反応がでるかは自明ではないか。

　そんな現象に気付いたのは、戦後の食糧難で酷い目にあい、その時に資産もほとんど失ってしまった方と話をしたからである。
　そもそも、世界大恐慌以来の100年に一度の経済危機などと語ること自体が、日本の政治家の無能さを示していると感じるようだ。戦争はついこないだのことだからだ。
　なんの知恵も湧かない“空元気”政権が進めるのは、現実隠蔽と、無理筋の追求しかないそうだ。あとは、ナショナリズムを鼓舞さえすればなんとか政権は維持できるという。それが日本の体質らしい。
　再び苦難の時代に引きづりこまれると、覚悟を決めたとのこと。

　--- 参照 ---
(1) Paul Steinhauser: “Poll: America's honeymoon with Obama continues” CNN [2008.12.24]
　　 http://edition.cnn.com/2008/POLITICS/12/24/obama.approval/index.html
(2) Lawrence Summers: “Obama's Down Payment　A Stimulus Must Aim for Long-Term Results” Washingtonpost [2008.12.28]
　　 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/12/26/AR2008122601299.html
(3) [text] “'You've got to find what you love,' Jobs says” Stanford Report [2005.6.14]
　　 http://news-service.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.html
　　 [video] Apple創始者Steve Jobsの伝説のスピーチ[日本語字幕付8:49] YouTube
　　 http://www.youtube.com/v/qQDBaTIjY3s&hl=ja&fs=1
(4) 「麻生内閣支持21％、不支持73％　衆院選比例投票先、民主が自民逆転」日本経済新聞 [2008.12.28]
　　 http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt22/20081228AS3S2800Q28122008.html
(5) 内閣総理大臣　平成二十一年　年頭所感
　　 http://www.kantei.go.jp/jp/asospeech/2009/01/01syokan.html

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