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2009.2.26
 
 


日米首脳会談とは何なのか…

 麻生首相は政府専用機で2月23日夜に米国入り。その翌日、オバマ米大統領との会談がホワイトハウスで行われた。1時間の予定が20分超過し、昼前に終了した。
 同席者は、国務長官、大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、国家経済会議(NEC)議長だった。(1)
 昼食相手は、アーミテージ元国防副長官とアジア通。その後、国立墓地を訪問し、夕刻帰路についた。

 ジャーナリストの見方は、「支持率が低迷する麻生首相としては、人気の高いオバマ大統領との会談で政権浮揚のきっかけをつかみたいと、安全保障問題を中心に日米同盟強化を訴えた。ただ、日米連携をアピールする場となる共同記者会見や昼食会はないという厳しい現実にも直面した。」(2)といったところ。

 もともと、昼食会無しで、共同コミュニケの発表もしないと言われていたが、「テレビカメラの前で短いコメントを述べるはずだった」(3)のも、取り止めたというし、「記者団の前に姿を見せただけで、何も語らず、肩を組んで立ち去ってしまった」のだからそういうことなのだろうか。

 ともかく、世界に発信したいことはなかったということ。
 だが、それは当たり前だ。
 僅か1週間前に、クリントン国務長官が訪日し、中曽根外相と首相と会談したばかりなのだから。
 それに、財務相の醜態を容認し、経済不調にも即応できず、支持率が1割の首相であることが海外で広く知られしまったばかり。そんな首相と個人的に親しさを見せたがる政治家がいる訳がなかろう。
 あくまでも日本の首相というだけの扱い。

 当然ながら、米国での話題性は低い。どうせ、早晩、首相は入れ替わると見られているのだから、致しかたあるまい。
 Washington Postのニュースは、大統領施政方針演説一色。タイトルはすぐに見つからない。
 どうせ、どこも、大統領が日本の首相と会いましたというベタ記事扱いなのではないか。
 記事の内容も、実につまらぬ引用。・・・
米: “cornerstone of security in East Asia”+“Obviously, the friendship between the United States and Japan is extraordinarily important to our country”
日: “on behalf of not only Japan but as a nation, we are very honored to be here as the first of foreign guests.”(4)

 う〜む。
 プラグマティズムの権化のような米国の政治家が、エール交換のような意味の薄い会合に貴重な時間を割くものだろうか。大いなる疑問。
 米国は、麻生首相に訪問してもらって、実現したい構想に乗れと説得したかったのではないか。そうでなければ、“貸し”を作って、日本が身を切れとの要求があると見るしかない。

 少し考えてみよう。

 情報源は記載されていないので、記者会見を恣意的にまとめただけのものかも知れぬが、日本側が説明したとされる、首脳会談の主な内容が記載されている記事がある。(5)まあ、全般的な話。とても首脳会談が必要とは思えない。

 だが、首相が記者団に語った内容は、これとは大きく違う。
 「機軸通貨であるドルの信頼維持が一番大事」であり、「ドルの信頼性が損なわれると非常に大きな影響が出る」から、「ドルの信頼性を得るためにどうするのが一番大事かについて、いろいろ話をした」というのだ。(6)
 「半分は景気対策、経済の問題が大きかった」という。

 なるほど。
 と言うことは、米国が、日本に対して、何らかの重要なコミットメントを要求したが、それが、麻生外交の基本方針と決定的に違っていたのではないか。
 素人の邪推で語れば、クリントン国務長官訪問に合わせるように、中曽根外相が近隣を飛び回ったのも、その調整かも。

 議論は経済問題だったというから、米国がASEANと日・中・韓で、より強固なドル経済圏を作る構想を持ちかけた可能性がある。
 これは、「自由と繁栄の弧」(7)とは正反対。「価値の外交」ではなく、それこそ「ドルの外交」。
 この最終議論が行われたのかも。
 要するに、意見が合わないということ。

 それにしても、首相の口の軽さと、常識のなさは、相変わらず。こまったものだ。
 「はっきりとクリントン国務長官と同様の意見を述べておられました。」(8)と言う発言には唖然。
 しかも、様々な話を「したんですけども…。色々な意味で非常によく知っておられました」というのだ。「北朝鮮の話についても詳しかった」そうである。当たり前だ。現実を知らないで、軍隊の最高司令官が勤まる訳がなかろう。

 --- 参照 ---
(1) Sachiko Sakamaki and Roger Runningen: “Obama and Aso Focus on Economy in First Meeting (Update2)”
   Bloomberg [Updated: February 24, 2009 15:35 EST]
   http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=aHHTa6zkoSaM&refer=home
(2) 石橋文登、有元隆志:「異例の日米首脳会談 記者会見なし、昼食会なし」産経新聞 [2009.2.25 18:26]
   http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090225/plc0902251834009-n1.htm
(3) 「これが「オバマ流」…日米両首脳、記者に語らず立ち去る」 読売新聞 [2009年2月25日17時18分]
   http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090225-OYT1T00648.htm?from=navr
(4) Glenn Kessler: “Obama Meets with Japanese Prime Minister”Washington Post (Foggy Bottom) [12:15 PM ET on Feb 24, 2009]
   http://voices.washingtonpost.com/44/2009/02/24/obama_meets_with_japanese_prim.html?hpid=topnews
(5) 「麻生首相―オバマ大統領 日米首脳会談の要旨」朝日新聞 [2009年2月25日11時33分]
   http://www.asahi.com/politics/update/0225/TKY200902250093.html
(6) Caren Bohan: “Japan PM Aso says he and Obama discussed US dollar” Reuters [Feb 24, 2009 2:25pm ES]
   http://www.reuters.com/article/usDollarRpt/idUSWBT01072120090224
   「オバマ米大統領とドルの信頼性維持について協議=麻生首相」 ロイター [2009年 02月 25日 05:48 JST]
   http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT839204520090224
(7) 麻生外務大臣: “「自由と繁栄の弧」をつくる” 日本国際問題研究所セミナー講演 [平成18年11月30日]
   http://www.mofa.go.jp/MOFAJ/press/enzetsu/18/easo_1130.html
(8) 【麻生首相ぶら下がり詳報】 “日米首脳会談後「オバマ氏は信頼に足る指導者」” 産経新聞 [2009.2.25 07:50]
   http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090225/plc0902250753004-n1.htm


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