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2009.4.20
 
 


G20とは何だったのか…

 “The Group of Twenty meetings that start on April 2, ought to have started on April 1 instead. ”(1)
  ---Buiter教授の言った通りだ。実態は、各国の国内向けに用意された政治ショー。

 結局のところ、実効性あるものは、IMFの引き出し権追加だけではないか。
 WSJによれば、麻生首相が、米国の負担にならぬ、この策を提案したらしい。ただ、それは、Geithner財務長官がアドバイサーとして呼んだTed TrumanのSDR増額主張に乗っただけと見られている。しかし、折角、米国を支援したにもかかわらず、WSJの見方は冷たい。(2)
 結局のところ、融資を受ける資格が無いような国が資金をドルで引き出すことになるから、米国にとってはプラスでは無いと言うのだ。ゾンビ国家の破綻先送り策と言いたげ。

 もっとも、問題の根源は、米国の借金まみれ体質にあるのだから、自分勝手な話ではあるが。

 ともかく、予想された通り、財政拡大については、ユーロ圏の同意は得られないから、指標数字無き“合意”文章でお茶を濁すしかなかったようだ。
 金融規制も同じことで、総論だけの記載。今後、議論の場は作られるが、規制反対の米国が動く保証など無い。
 “会議は踊る”状況一歩手前なのかも。

 ユーロを機軸通貨に育て上げたい勢力と、ドルによる世界秩序を続けたい勢力がぶつかり始めたということか。
 ともかく、ユーロ圏に、米国のような膨大な財政赤字を持ち込んだりすれば、ユーロの仕組みが瓦解しかねないから、妥協できる訳がない。
 それに、古い欧州は成熟社会だ。財政出動が景気刺激になるとは見ていまい。発展途上国への投資を続け、その旺盛な需要で欧州全体経済を持ち上げる路線が望ましいに決まっていよう。米国とは意見が合わなくて当然だ。

 つまり、結局のところ、先進国で、突出して高いGDP比で、政府支出を敢行するのは、日本だけになろう。
 しかも、潜在成長率を上げる施策は全く打たず、なんの経済刺激にもならない公共事業と、需要の先食いのための財政出動を行うのである。その後は、あてにならぬ、外需たのみということ。

 それはさておき、なんと言っても、今回の圧巻は、周小川 (Zhou Xiaochuan)中国人民銀行総裁の提案だろう。(3)機軸通貨体制を、ドルからIMFの準備通貨に換えようというのだから。
 まあ、世界の反応を見るための、デキレース臭い。本番では知らん顔だし。

 Summers国家経済会議委員長は、ドル依存軽減と短期流動性付与を狙った通貨基金(AMF)構想を潰した張本人。実に強硬な姿勢を見せたことは語り草だが、今回は静かそのもの。そんな状況ではないということだろう。
 まあ、デフレが止まりそうにない中国としては、ここは、為替問題議論を封じることができさえすれば、これ幸といったところでは。IMFの運営に関する全面的な発言権確保は無理と見て、米国への適度な圧力として働けば、当面は十分と見なしたように映る。
 すでに、軍事的にも、米国衰退の流れは固まっており、後は熟柿が落ちるのを待つという方針だろう。
 それに、金融ショックはまだあるかも知れないし。

 なにせ、何時までたっても不良債権総額の話が出てこない。これがなんとも不気味。デリバティブ未決済金額がとてつもない数字で、トバシか先送りしかない状況ということも有り得る。
 米国は、いくら問題を指摘されても、顕在化するまでは無視し続ける体質がありそうで怖い。
 次だけは、未然に手をうって欲しいものだ。


【21世紀は、危機の連鎖を招くような政策判断が続いた。】
 ・ITバブル崩壊。
 ↓
 ●「経済低迷を避けるため超低金利政策しかない」と強引な資金流入。
 ↓
 ・米国の住宅価格急伸。
 ↓
 ●「ITバブル崩壊後の経済を支えるためにはある程度のバブルは止むをえない」と放任。
 ↓
 ・格付け機関がサブプライムローンを高評価し投資ブーム到来。
 ↓
 ●「そのうち市場はバブルを認識して収束する」として黙認。
 ↓
 ・海外資金を活用したファンドの急膨張。
 ↓
 ●「円・元安」を放置し、規制外金融活動を是認。
 ↓
 ・米国へのマネー流入が続き、放漫融資化。
 ↓
 ・住宅ローンの焦げ付きによる貸し手の破産発生。
 ↓
 ●「100億ドル規模の巨額な損失でも、独立したセクター内の問題で留まる」として、放置。
 ↓
 ・住宅パブル破綻。
 ↓
 ・この分野に係わった、レバレッジが大きいヘッジファンドが崩壊。
 ↓
 ・規制業種の金融機関のいくつかが破綻。
 ↓
 ・リスクが見えない複雑な金融商品市場が消滅。
 ↓
 ●「公的な住宅債券を国が保障すれば状況は安定してくる」として、さらなる対策を放棄。
 ↓
 ・投資銀行の破綻。
 ↓
 ●「規制が緩い業種なので破綻しても、金融全体に及ぼす影響は軽微である」として、破産容認。
 ↓
 ・MMFの主要投資先だったCPへの信用が壊滅し、CP市場は事実上消滅。
 ↓
 ・インターバンク取引停止。【金融メルトダウン】
 ↓
 ・クレジットスプレッド急拡大(リスクプレミアム超高騰)。
 ↓
 ・規制金融業種の破綻懸念。
 ↓
 ・株式のパニック的売却の進展。
 ↓
 ●「金融機関救済宣言」不可避。
 ↓
 ・インターバンク市場復活。
 ↓
 ●「主要金融機関破綻懸念が払拭されれば、金融市場は正常化される」とし、制度論議に注力。
 ↓
 ・政府保証不可能な国からの資金逃避。
 ↓
 ●「途上国はIMFの従来型対応で十分」と見て、救済スキーム創設放棄。
 ↓
 ・途上国通貨の一斉暴落。
 ↓
 ・一次産品価格暴落も加わり途上国金利暴騰。
 ↓
 ・途上国投資の膨大な損失でレバレッジ型投資家は金融資産売却。
 ↓
 この先、何がでてくるかわかったものではなかろう。

 --- 参照 ---
(1) Willem Buiter: “The G20: expect nothing, hope for the best and prepare for the worst” Financial Times [March 29, 2009]
   http://blogs.ft.com/maverecon/2009/03/the-g20-expect-nothing-hope-for-the-best-and-prepare-for-the-worst/
(2) “The G-20's Funny Money The IMF has a plan to create cash and pass it all over the world.” Wall Street Journal [APRIL 1, 2009]
   http://obama.wsj.com/article/0gMG2pvevnbpI?q=Bill+Clinton
(3) Zhou Xiaochuan: “Reform the International Monetary System” 中国人民銀行 [2009-3-23]
   http://www.pbc.gov.cn/english/detail.asp?col=6500&id=178




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