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2009.11.9 |
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昨今の政治状況を眺めて[参議院補選後]…〜 自民党はついに見限られたようだ。 〜2009年10月25日、参議院補欠選挙が行われた。たった2議席というものの、民主党が過半数に達しない参議院の選挙だから重要である。結果は、順当に民主党勝利。 どうも、自民党は知名度が低い候補を立てたらしい。 惨敗の衆議院選挙が終わったばかりで、支持率高止まりの鳩山政権に太刀打ちできる訳がないということで、全力投球するつもりはなかったのかも。 政権交代済みで、自民党を応援したところでなんの見返りも期待できない業界団体が積極的に支援する筈もないし、衆議院選挙の落選候補者が支援にかけつけても力にはなるまい。その上、公明党が表立っては支えなかったから、どうにもならないというところか。 しかし、それにしても投票率が極めて低かったのに、自民党に票が集まらない。 自民党の新総裁体制は不評ということでは。「保守政治の原点に立ち返る」(1)では、なんだかわからないし。 〜 新体制の安易な姿勢がさらなる自滅につながるかも。 〜 まあ、こうなると「全員野球」を掲げる自民党新執行部ができそうなことは限られる。とりあえずすぐにできるのは以下の2つしかないということか。 ・靖国参拝を宣伝して、保守層の支持回復を狙う。 自民党総裁・前首相等知られる人を総動員することになる。 ・醜聞暴きで、民主党のイメージにダメージを与える。 民主党の自民党離脱組の体質からして、叩けばいくらで埃はでよう。 おそらく、この結果は裏目に出る。靖国参拝で保守をまとめようとの姿勢は最悪。靖国への対応が不満なので、保守層が自民党から離れたとは思えないからだ。もしそうなら、民主党政権樹立を避けるために、衆議院選挙であそこまで票が減ることはなかったろう。 逆に、離れた層は見放すかも。なにせ、中国はGDPで日本を凌駕することは間違いなく、今や最大の輸出相手国なのである。しばらく米国経済は低迷するだろうから、中国とASEAM諸国との経済関係を良好に保てない政治は大いにこまると考える人が少なくなかろう。そんなことはどうでもよいと思うのは、税金で食べている層だけではないか。 そんなことをしていると、西日本中心の地方政党に没落する可能性さえあると思うが。 醜聞暴き作戦はさらに没落を深める可能性が高い。長期政権が抱えてきた利権体質を追求する訳ではないからだ。自民党側でも発生したりすれば、どうにもならなくなろう。衆議院の解散が行われないから、一時的に政治が混乱するだけの話で終わるのが関の山。醜聞が原因の混乱で野党に期待が集まるということは考えにくい。 自民党にまかせたところで状況が変わると考える人がいるとは思えないからだ。 この辺りの感覚が自民党政治家には欠けているのではないか。 〜 谷垣執行部は政治的勘が欠落しているのかも。 〜 民主党が自民党よりましと思われているのは、政策を転換すると広言している点。そして、自民党とは違いしがらみが少ないから、改革に動き易いと見られているだけ。政策内容が魅力的だから票が集まったとはとうてい思えまい。 今のままでは、日本だけが世界の経済発展の流れから取り残されていくから、 手を打たねばと感じている人が大多数。なにも変えたくない自民党を諦め、新しい動きを歓迎して当たり前。 ところが、自民党の谷垣執行部はそう考えていないようだ。 なにせ、代表質問の論点が「約束違反・言行不一致」。あげくのはてには、自民党が消費税率変更を打ち出したことを誇る始末。自民党政治はよかったと主張するつもりかネ。感覚のズレははなはだしいものがある。 西村政調副会長の質問も、マスコミの風潮に踊らされたようなもの。日本郵政人事は、言行不一致と批判。「天下り阻止」派ならこうした批判にも意味があるが、もともと行政改革担当大臣を離党に踏み切らせた組織が行う質問であるとの認識を欠いているのではないか。それがどう映るのかわかりそうなものだが。 総裁選挙の時、自民党支持の高齢者がポツリと語っていたのを思い出してしまった。なんだ、通産官僚とお世継ぎ候補しか新しい玉はないかというのである。そんなイメージの議員に、こんな質問をさせて人気が出るものかネ。 だいたい、連立政権の不一致を突くと言うのだから、センスが悪いことおびただしい。自民党が社会党と連立した時代を忘れている人などいないのだぜ。 基地問題にしても、橋本政権が大成果をあげたと大騒ぎしておきながら、結局なにもできなかった。その理由をはっきり言ったらどうなのかね。その位のことをしなければ、インパクトなどゼロに近いのでは。 日米関係に関して、自民党を支持するしかない人々に拍手喝采を浴びるような質問をしたところで、党勢が変わる訳ではないのだから。米国政権が我慢の限度を超えるとどうなるか、そのイメージを伝える工夫ぐらいしたらよさそうなものと思うが。わかりきった話をしたところで、自民党流の米国従属発言と見なされるだけだ。 (米国との不和は、食糧輸入、エネルギー供給網、工業製品輸出に不安が生まれることを意味する。オバマ政権は内向きの上に、内政が火事だから、米国にメリットがなさそうな日米首脳会談に興味があるのか疑問だ。そんなことがわかっているなら、どこを突くべきかじっくり考えたらよさそうなものだ。) そもそも、野党の主張をしっかり聞く人など滅多にいないことを忘れているのではないか。それこそ、捨て身作戦の気概がなければ、どうにもならないと思うのだが。 〜 何が問題か勘違いしているのではないか。 〜 新総裁が誕生しても、自民党支持離れが止まらないのは、派閥ボス交による意思決定の悪イメージが定着してしまったことが大きい。それがわかっていながら、「家庭や地域の絆を大切にする」と語るのだから感覚の鈍さは特筆もの。利権の「絆」を守り続ける決意表明に受け取られかねない表現であることもわからないのかネ。せっかくの清新イメージをわざわざ打ち消してしまった。 「わが党は常に与党という慢心があり、政権運営におごりが表れていたかもしれない」(2)と語ったそうだが、一体、どこが「おごり」だったというつもりなのだろう。別に、昔から同じことを続けているだけ。しいて言えば、有能な政治家を登用できなくなっただけのことでは。 強引な集金システムを続けようが、票田維持のために地方に金をバラ撒こうが、日本経済が発展しているならビジネスマンも黙認する。しかし、ただただ、国債を発行して地方に金をバラ撒く政治を続けられたのではたまったものではない。しかし政権党だし、社会主義政党と組む政党を支援する訳にもいかないから、仕方なく支持してきたにすぎない。 その結果、とんでもない借金の山。 自民党政権が続けば、財政破綻間違いなし。米国の住宅バブル破裂と同じで、いつか発生する。避けることはできない。 従って、「国民に大きな負担を押しつけることになり、破綻のシナリオだ」という民主党への批判ほど空虚なものはない。自民党の小出しバラマキによる破綻より、国民に破綻状態であることを早く知らせる民主党型バラマキの方がましということ。 その点では、小泉元首相の政治感覚は鋭い。歴代総裁への挨拶回りでの発言は正鵠。「小泉構造改革路線を忠実にやっているのは民主党だ。子ども手当の財源のためには小泉改革以上の無駄カットが必要だ。手練手管にならず、建設的な国会論戦を挑んでほしい」(3)。 小泉政権は、構造改革は口だけで何もしなかったが、おそらく、後続政権で消費税問題にケリとのシナリオ。残念ながら、政治的センスを欠く安倍政権は保守バネ維持しかできず、それがもとで自壊。ここで勝負がついた。 〜 自民党は、ビジネスマンの完全な自民党離れを促進するつもりかも。 〜 おそらく、自民党は、ビジネスマンが、自民党型バラ撒きに辟易しているのがわからないのだろう。 はっきり言って、ビジネスマンは、民主党型バラ撒きをたいして気に留めてはいない。すでに、自民党によって、財政が破綻しているのだから、そうそうバラ撒きができる訳がないからだ。財源を手当てするためには、現行法で動いているプロジェクトをバサバサ切るしかない。そんなことをすれば、税金で食べている産業を干上がらせることになる。極めてハードな政策転換だ。 まあ、もう、それしかあるまいが本音。自民党の“今のままズルズル”方式でも、結局のところ財政破綻の荒波をかぶるのは見えているのだから。 民主党さんよ、やるなら、やったらというのがビジネスマンの正直な感覚だろう。 ともあれ、政策転換が行われれば、税金で食べるだけの産業が立ち行かなくなることは必定。これは、地方のさらなる疲弊を招く。連鎖倒産発生で深刻な不況に陥る可能性もあろう。ショック療法が効きすぎて、国全体の経済がおかしくなるかも知れない。しかし、もうそれしか手の打ちようが無いと見ている訳だ。 そんな状況を肌感覚で理解しているのが亀井郵政改革・金融相だろう。地方の疲弊を知っているから、トンデモ発言を繰り返すのである。 こうした発言に驚く人も少なくないようだが、それは、国政だけ見ているからである。政権転換が実現したのは、国政だけという点を忘れるべきではなかろう。 中央政治と地方政治には「ねじれ」が発生しているのである。税金で食べるだけの地方だらけで、そこでは既得権益層がすべてを牛耳っている。国政が構造改革方向に振ろうとしても、地方政治が従うことはない。谷垣執行部の目指す「絆」とは、こうした勢力との紐帯を意味しているのは間違いない。 その姿勢が露呈すれば、ビジネスマンは自民党支持に戻ることはなかろう。パイが無いのに、地方バラ撒き調整政治を志向する勢力を支援する訳がないからだ。 そうなると、自民党は、保守バネだけに依拠する地方政党になるかも知れぬ。民主党が、それを狙うなら、簡単にできるし。地方に予算権限を丸投げすればよいのである。 〜 本質的な問題は危機感の喪失だと思われる。 〜 こんなところまで来ているのに、自民党が変わらない理由は単純である。未曾有の経済危機という言葉は発しているが、ビジネスマンとは違って、危機感が薄いのである。 世界的にみて、経済的に大きな打撃を受けたのは日本という事実になにも感じないのだろうか。日本経済を支える基幹産業の2009年3月期の企業収益を見ればことの重大性がわかろう。 自動車7社の合算赤字額: 1兆円弱 電機エレ6社の合算赤字額: 2兆円 銀行・証券6社の合算赤字額: 2兆円 設備、債務、雇用の過剰を抑え、ようやくリスクをとれるようになってきたところで、これである。競争力発揮どころではなかろう。 しかも、日本全体でも、平成21年上期の企業からの税収はマイナス(還付金)。とんでもない状態である。 「落日の東京モーターショー、市場の地盤沈下を象徴」(4)といった類の見出しが躍ったが、これも当然。税金補助による需要の先取りでなんとか持ちこたえているだけ。補助金がなくなれば市場縮退は避けられまい。 これは自動車特有の現象ではない。どこを見たところで、需要沈滞一色。 もともと同業者が多すぎる産業ばかりだから、生き残りをかけた熾烈な競争が始まってしまった。こうなると、収益どころではない企業続出は間違いなかろう。 まともなビジネスマンなら、国内市場に見切りをつけ、新興市場に重点を変える。そんな市場にしがみ付いていたらどうなるか、考えただけでゾッとするからだ。 従って、水面下では、怒涛のような流れが始まっている筈。 はっきり言えば、日本は、潜在的経済成長率ゼロの社会と化したのである。 (この先、年金生活者体質が広まるから、物価低下要求は高まるし、購入意欲も減退する。相続税圧縮になる不動産価格低下も歓迎されるだろうから、デフレは深刻化するかも。成長率ゼロ実現さえ難しくなりそうだ。) この状況で、国内既得権益層との「絆」政治を重視する政党が残れるものかね。もし残ったとしたら、それは日本沈没ということ。 〜 このまま行けば、日本の保守は瓦解するのではないか。 〜 それにしても、ここまで来ても、既得権益層の税金ぶる下がり維持政策を続けたい保守政治家ばかりとは、驚異的だ。日本の「保守」とはそうした意味なのかも。中国共産党首脳が、保守政治家に、日本はそろそろ社会主義を止めたらどうかと言われたとの笑い話があるが、冗談ではなさそうである。 本気で自民党を再生したいなら、「保守」の再定義は不可欠ということがよくわかる。伝統的価値観を重視するというスローガンだけ一致させ、実態的には四分五裂状態では動けないのは当たり前。意見が割れる経済問題は当座の安定策でお茶を濁す以上はできないのは、こうした体質にある。 話は飛ぶが、そんな政治にあわせるから、日銀も同じ体質に陥るのだと思う。 それでも、ようやく、まともな政策総括論文が発行されるらしい。(5) まともなビジネスマンは昔から口にしていた話だ。ジャブジャブ金を流したところで、金融業界が安定するだけで、投資先が生まれないから、無駄だという話。まあ、国債の利息で銀行に一息ついてもらっただけ。それ以上の政策の意味はない。金が余れば怒涛のように海外に流れるだけの話。しかもご丁寧なことに円安政策だったし。 これが世界の金融業バブルを発生させた遠因でもある。一方、「国債の海外依存率」が低いことをいいことに、この金融政策のお陰で、自民党はバラ撒き政策を続けたのである。これが、経済通を自称してきた自民党政治の本質である。 当座の安定を実現できれば、後は自ずと開けてくると夢想する人達ばかり。現実は、金融業本来の機能が弱体化し、経済浮揚の力も出なくなってしまっているのだが。 しかし、都合の悪いことは見たくないか、見えないのか、日本民族の精神力で、なんとかなると信じているらしい。これが、日本の自称保守勢力の実像である。 → 「オリンピック招致失敗」 [2009.10.26] 政権が変わったのだから、日銀も、少しは、ビジネスマンの発想を取り入れたらよさそうに思う。もっとも、目標インフレ率を掲げれば、企業はその数字を見て動くと主張するドグマ経済学者が闊歩する状況だから、簡単ではないが。 当たり前だが、ビジネスマンは、インフレターゲットなどという数字ではなく、具体的に日銀が何をしそうかで動く。コントロールなどできるとは思っていないからである。誰も口にださないだけの話だ。 ともあれ、政権交代で、いよいよビジネスマンは動きはじめる。 それに関心を示さず、保守バネと、醜聞問題にうつつを抜かすと、保守勢力は完璧に無視される存在になりはてるのではないか。 --- 参照 --- (1) “谷垣総裁、温厚だが頑固 宮沢元首相が師 保守の理念受け継ぐ ” 産経新聞msn [2009.9.28] http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090928/stt0909281911009-n1.htm (2) “民主公約「羊頭狗肉、無理ある」 衆院代表質問で自民・谷垣総裁” 産経新聞msn [2009.10.28] http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091028/plc0910281313015-n1.htm (3) “谷垣総裁に小泉元首相がチクリ 「民主こそ小泉路線」” iza産経新聞iza [2009/10/01] http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/307699 (4) 「落日の東京モーターショー、市場の地盤沈下を象徴」 東洋経済 [09/10/27] http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/dd22871ca055909622cd7bb4ab0244b4/ (5) Shigenori Shiratsuka(白塚重典): [forthcoming] “Size and Composition of the Central Bank Balance-Sheet. Revisiting Japan’s Experience of the Quantitative Easing Policy” BoJ http://www.economist.com/businessfinance/displaystory.cfm?story_id=14649284 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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