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2010.1.26
 
 


昨今の政治状況を眺めて[自民党大会]…

名護の現職市長敗退は、自民党の参議院改選議員の行く末を暗示している。
 2010年1月24日の名護市長選で、 現職(自民,公明)が、普天間基地の辺野古移設反対派(社民,共産,民主,社大,そうぞう,国民新)に敗れた。過去3回は移設容認派が当選していたのだが。
 予想されたようにかなりの接戦。[17,950v.s.16,362](1)
 だが、投票率は76.96%と、住民を二分する戦いとしては高い数字ではなかった。

 辺野古移設はこれで消え、問題解決は難しくなった。現政権にとっては頭が痛いところだが、前政権勢力の切り崩しに成功した訳で、参議院選挙にこの流れを持ち込むつもりだろうから、重要な勝利だったと言えよう。
 自民党の基盤が、サラミ戦術的に切り取られていくという好見本。

 政府や、地方自治体に足がかりが無い候補が、参議院選で苦戦するのは自明である。

 そう感じたのは、同日、前原国土交通相が八ツ場ダム水没予定地区住民との意見交換会を開催したとのニュースが流れたこともある。
 「ダムがない状況でどう生活を作り上げていくか、何度でも(地元に)足を運べたい」(2)と述べたそうである。
 確か、住民の力を集めて、政権に対抗していくと言っていた自民党幹部がいたが、とうに忘れてしまったようである。このような姿勢は、直接的に票に響くと思うが。

 しかも、よりにもよって、これらは自民党大会開催日の話。
 この調子では、自民党は参議院選挙でも大敗か。

自民党は内向きになる一方だ。
 それはそうと、自民党の「新綱領」なるものには驚いた。小沢体制と戦うぞという意気込みだけ。そんな綱領しか作れないのでは、すでに負け戦。
 対立軸として民族主義をもってきただけに映ってしまうから、支持者も限られジリ貧では。

 部外者から見れば、政治屋家業集団であることを正直に吐露した作文そのものだが、綱領として採択された上、大会は大いに盛り上がったらしい。どうも感覚が違う人の集まりのようだ。

 ただ、盛り上がったのは単純な理由かも。
 国会での質問がさっぱりだった総裁が、プロンプターで練習して望んだらしく、小沢叩きで頑張るとの迫力ある決意表明を行ない、大うけしたようだ。
 しかも、政調会長が、公明党との対立も辞せずとの姿勢で、外国籍者地方参政権への断固反対表明演説を行ったから、意気があがったということのようだ。
 そして、話題性ある党員を登壇させて、集票の「玉」があることも示したから、出席者は元気が湧いてきたのかも。

 だが、どう見たところで、これらは内向き志向そのもの。これが、「再生」イメージに繋がるとはとうてい思えない。支持率はさらに下がるのではないか。
 いったい、自民党執行部はなにを考えているのかね。

 自民党が衆議院選挙で見捨てられた理由は、まともな政策を打てなくなったと見られたからではないのか。支持基盤の既得権益層の要求が錯綜しており、どうにも動けなくなっていると思われてしまい、党がバラバラになっているように映ったということ。
 民主党政権に期待が集まったというより、政権交代で、利権を切らないと流れが変わらず、ズルズル悪化しそうな感じがしたため、政権交代になってしまったと見るべきでは。
 もしそうなら、現政権幹部の利権政治をいくら批判したところで、自民党の支持率が上がるとは思えないが。

 そのことを理解していない訳ではなさそうだが、どうにもならないということか。
 「利益誘導型政治との決別」と語る一方で、「自民党から比例候補を擁立した団体を、党の総力を挙げ政府・与党の圧力から守り抜く」とくれば、何も変わらない政党との印象を与えただけ。

 なかでも、大笑いは、参議院候補者に関するマスコミの解説。総裁は定年制を守りたいが、それをすると党内にしこりが残るから動けない状態だというのだ。
 これで“公正な政策や条件づくりに努める。”政党と称するのだから、どう受け取られるかわかりそうなものだ。正直に、どうしても議員の個人票が欲しいと言えばよいのに。
 時代に取り残される始めると、何をやっても裏目に出る訳だ。

 このままで、参議院選惨敗でだと、組織の態をなさなくなるかも。

ビジネスマンの支持を失うための綱領作りをしてどうするつもりなのか。
 それでも、採択された綱領に、(3)保守党らしさが残っているなら、ビジネスマンも少しは支持する気持ちも湧いたかも知れぬが、民主党と同じようなものときたのだから流石に唖然。

 なにせ、国民の安全に関して、現状認識もなければ、どう守るのかもはっきり言わないのである。
 しかも、ビジネスマンが気にしている、どのような政治を目指すのかは何も述べず。一体、どういうつもりなのか。

 明確なのは、2005年綱領(4)で語った、「小さな政府を」を消し去ったこと。もともと、自民党政治とは「小さな政府を」と口で言うだけで、実際は大きな政府を続けてきた訳である。それを、ついに削ったのである。
 「食糧・エネルギーの安定的確保を」とか、「世界一、安心・安全な社会を」という気概も失ったようだ。
 「高い志をもった日本人を」より、「共助する国民」があるべき姿というのだから。鳩山首相の提唱する、なにがなんだかわからない「友愛」路線を、理解し易い単語に変えたかと思うほど。これには仰天。

 まあ、もともと鵺的な組織だから、前の綱領も含まれていますとか言って、適当に立ち回るのだろうが。

 なんと言っても特筆すべきは、「知と技で国際競争力の強化を」という気力が完全に萎えてしまった点。競争の気分ではないのである。“美しい自然、温かい人間関係、「和と絆」の暮らし”で行こうというのだ。どうやって食べていこうというのかね。
 ギスギスした競争などせず、皆で穏やかに衰退していこうと呼びかけたのかな。老人社会にはそれが一番うけると見たのかも。

どこが保守らしい綱領なのか。
 ビジネスマンからすれば、冗談のような文章も掲げられている。
 「われわれは、国民総生産を、与党のみの独善的判断で国民生活に再配分し、結果として国民の自立心を損なう社会主義的政策は採らない。」

 産業政策によって、半強制的に資金を傾斜配分させる発展途上国型の政治をいつまでも続け、規制によって各産業の動きを政府がコントロールしてきたのは、自民党なのである。
 普通は、それを“社会主義的政策”と呼ぶのだが、日本だけは自由主義政策とされるのである。
 小泉政権など、口だけで、規制撤廃はほとんど手付かず。

 要するに、現政権とはバラ撒き手法が違うことをウリにしたいのである。そんなことをしている場合かね。
 グローバルに活躍する企業を生み出せなかれば、日本経済が上向くことなどあり得ないのだせ。グローバルに見て、存在感のある企業などほんの僅かという現実がわかっていないのではないか。
 家電企業が雄飛というのは、今は昔の世界。税金頂戴ビジネスや、政府の手厚い保護で食べているドメスティックな企業と一緒に沈没したくないと考えるのがビジネスマンだ。いい加減にしてくれないか、となるぜ。

 そうそう、なんだかわからぬ項目もある。
 「政府はすべての人に公正な政策や条件づくりに努める」というのだ。一体、どう意味かね。
 政治の一番重要な役割は、短期的には嫌われたり、損する人が出ても、長期的に不可欠なことなら実行に打ってでることだが、そんなことはしないと確約したいうことか。
 あるいは、飛行場の無い地方がでてしまうのは不公正という類の話かも。
 ボスが皆の意見を十分斟酌して落としどころを見つける調整型政治スタイルを今後も続けるという宣言なのかも知れぬ。

 これでは、ビジネスマンが一斉に自民党離れを始めかねまい。

 --- 参照 ---
(1) “名護市長選 稲嶺進氏が初当選 普天間の辺野古移設反対” 琉球新報 [2010年1月25日]
   http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-156206-storytopic-213.html
(2) “「八ツ場」住民と初対話 前原国交相、中止は堅持” 日本経済新聞 [2010年1月24日]
  http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20100125ATFS2401124012010.html
(3) “【自民党大会】自民党新綱領の要旨” 産経新聞-msn [2010.1.24]
   http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100124/stt1001241201006-n1.html
(4) http://www.jimin.jp/jimin/jimin/houshin/index.html


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