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2010.2.19
 
 


昨今の政治状況を眺めて[経済戦略研究会]…

自民党は内向き体質を脱皮できるか。
 自民党は政治と金の問題で政権を追い詰めるつもりのようだ。マスコミに乗って動こうというつもりらしいが、政治家は同じ穴の狢と見られているのだから、それで支持率が上がる筈がなかろう。参院選必負路線である。
 ただ、わかっていても、民主党と同じで、バラバラの考え方の議員のよせ集まりだから、政策で魅力的な訴求点を打ち出すこともできないということだろう。それに、下手に内部で議論を始めたりすれば、脱党のお誘いに合うから、組織防衛にはこの一手に限るということのようだ。
 実に、内向きな発想である。

 注意すべきは、この「内向き発想」は自民党特有という訳ではない点。そう思ったのは、五輪スノボー代表選手の服装問題。
 だらしない服装で、謝罪もふざけているというのでマスコミあげて騒然。要するに、以下のファッションがいかんぜという訳。
  ・腰パン
  ・外垂れシャツ
  ・緩みメクタイ
  ・黒サングラス
  ・トレッドヘアー

 しかも、いかにも言われて謝罪会見という雰囲気ありあり。それがさらに怒りを呼んだらしいが、どこかでみかけたようなシーンである。
 おかげで、ビジネスマンは大笑いである。
 スノボー遊びの練達者とは、もともと、そんな風体と見なしているからだ。上記の格好など、その世界では普通ではないか。ただ、一般人のスノボー好き は、世間体もあるから、真似できないだけのこと。そんなスノボー好きも増えたからよくわからなくなってはいるだけのこと。
 ちょっと昔は、スノボーなど誰も知らないマイナーな遊び。パンク顔負けのファッションで決め、ラフな動きを整然と決めることが美学の特殊な世界と見られていたものである。
 夏のスポーツで言えば、大昔のサーファーみたいなもの。
 半強制的にスポーツ刈りにさせられ、「真面目に頑張ります」と宣誓する既存スポーツとは正反対の分野である。世界的に力を認められなければ、日本では、誰も注目もしなかった競技でしかなかろう。

 日本社会を知らないで、スノボーだけで過ごすと、社会のなかでどう動けばよいのかわからないという好見本。
 サッカーをラグビーのような品行方正なスポーツにしてしまう国に住んでいることも知らないのかも。それを、常識が無いと見ることもできるが、社会に合わせたところで、スノボー生活にとってはなんのメリットも無いというだけの話とも言える。

 間違う人が多いが、歴史が短いスポーツ分野だからこんなことになる訳ではない。朝青龍関問題で騒がしかったが、相撲界の特殊性を見ればわかる筈だ。こちらは総当たりではないし、チャンピオンが“神域”を示す綱を締める訳だから、スポーツとして比較はできないが。

 自民党議員も全く同じ体質かも。
 お世継ぎの政治屋稼業が多いから、日々、組織内の常識だけで動くことになるのだろう。全くの内向き発想。それが永田町で生き抜く智恵でもあるからどうにもならない訳だ。
 まあ、企業のビジネスマンも人のことを批判できるほどではないが、様々なお客様とお付き合いするから、そこまで内向きになることはなかろう。

「経済戦略研究会」発足はGood Newsかも。
 そんな自民党だが、ようやく、外向きの動きがでてきたようだ。成長戦略の議論をする議員が集まり始めたようである。

 自民党支援層がサラミ戦術的に崩されていくことは必定なのだから、余りに遅すぎる一歩。特に、民主党の小沢幹事長は、自民党内での覇権争いの渦中にいた人物であり、組織崩しのコツを身につけている筈。企業が嫌がる動きを共産党や旧社会党左派辺りにさせたりして、企業の自民党支援も切りにかかるに違いない。
 思想的な芯がなければ、これに対抗できる訳がなかろう。そこで対立軸を持ち込もうとすれば、ビジネスマンが嫌がる国粋的な方向にもってこざるを得なくなる。しかし、それは支持者を強固にまとめることはできるが、支持者層が狭まるだけ。没落必至。
 要するに、成長戦略という明確な指針を打ち出せなければ、この党は自然衰退しかない。

 それにしても動きが遅い。
 しかも、鳩山政権を「成長戦略なきばらまき政策をとっている」との批判でまとまったらしいが、このスローガンも能がない。(1)
 内容はその通りだが、この言葉こそが自民党の一番の問題でもある。バラマキこそ、自民党のお家芸だったと見られていることを知らない訳でもなかろう。税金の再配分政策で、支援組織の票を集める仕組みで政権を維持してきたのであり、それが限度にきたことを認識しなければ、支持は戻ってこないと思うが。
 こんなスローガンを聞かされる方にとってみれば、既得権益層にバラマキ先を戻そうとの姿勢表明に映るだけ。綱渡り的な財政運営は自民党の方が得意だから、バラマキなら自民党方式が優っているとしか聞こえないということ。

 そんなこともあり、「経済戦略研究会」発足といっても、又、ゾロ、勢力争いの組織と言えないこともない。ただ、現状認識だけはまともなようだ。
(呼びかけ人: 舛添要一[会長],菅義偉,梶山弘志,塩崎恭久,世耕弘成,川口順子の6氏)

 「政界再編を野党がやるのは極めて難しい。自由な議論を党内でやることが、自民党の活力になる」とのこと。ここが重要である。本気に国を立て直そうという核となる政治思想が無いから、どうにもならないのだ。
 鳩山邦夫元総務相は、「官から民」の徹底を示したことに疑問を呈し、途中で退席したという。(2)実に、結構なことではないか。
 そんな方向性の人までが参加して、成長戦略でもなかろう。

ただ、議論したからといって、道が拓けるものでもない。
 日本の問題は2つあると思う。
 一つは、「官」が、投資効果が見込めないどころか、先行き重荷を背負い込むプロジェクトを乱発すること。これは、官僚組織の問題ではない。政権の集票力向上策の質が悪すぎるのである。

 ギリシアほどではないと言う人が多いが、小生は地方の状況はたいしてかわらないと思う。税金で生活しているのだが、そんな自覚などないし、生活が悪くなれば政府になんとかせよと要求をつきつけるのだから、なんの違いもなかろう。
 その最たるものは、農業である。ビジネスマンの常識では、経営が成り立つ筈のないものが、延々と続いている。しかも、生産性低い方が儲かり、生産性が高い方が苦しむような構造にしているのだ。お蔭で、生産性が低い部分がいつまでも温存される形になる。
 その歪みを温存しながら、新事業の息吹を与えると称する動きを接木するのだから、もう滅茶苦茶である。

 要するに、生産性が悪く、生産性向上の見込みも全くない領域にできるだけお金を注ぎ込むのが自民党の手法と見られているのである。生産性が高い領域が、力を発揮できるうちはそれも可能だが、それが弱りきっても、まだ続けるというのだからお話にならない。
 従って、民主党のほうがましかもと語るビジネスマンがでても当然である。なにせ、主流はいかにも自由貿易主義者然としている政治家だからだ。
 自民党の考えるビジネスマンとは、規制に守られて食べれる企業や、無駄な公共事業で食べている企業の人々かと思うほど。

 ともかく、自民党は、地方にお金を回し、生産性が高い地域に人を動かさない施策を続けてきたのである。その票集めの仕組みが、ついに破綻したということ。これを率直に認めない限り、自民党はどうにもなるまい。
 当たり前だが、こんな話を真正直に表立って議論できる訳がない。議論すれば道が拓けるどころか、票が飛んで行くのがおち。
 政治家らしい表現で上手に方向転換できるかが問われているということ。

企業支援ならやることはいくらでもある。
 こんな姿勢なのだから、自民党の成長戦略が機能しないのは当たり前。
 自民党型企業支援とは、日本を背負っている企業が対象ではなく、ぶる下がって生きている企業が主対象なのだから。
 まあ、もともと、政治銘柄で無い企業が発展してきたから、日本経済がここまで大きくなれた訳で、それは当然かも知れないが。

 ここら辺りが、もう一つの日本の問題と係わる。
 金融業界にお金が無い訳ではないのに、それが企業に回らず、国債購入になるという驚くべき状況。国内には、貸し先も、投資先も少ないということ。
 しかも、好調な企業は、おしなべて内部留保を厚くしている。国内投資抑制に励んでいるということ。デフレ状況で、投資効率も悪いなら、手元現金の方がましだから、常識的な方針である。
 しかも、人口減少と高齢化にともなって、数量的な消費は落ちて当たり前。
 これで経済が伸びたら奇跡である。

 そんな状態で、十年一日の如く、昔と同じパターンで成長戦略作りに励むのが自民党体質。マクロで大きな流れに乗ると経済は発展するという発想以上でもなければ以下でもない。無味乾燥なシンクタンクの経済展望をまとめたようなもの。そんなものが機能する時代かね。
 ただ、そう言われるとこまるから、それぞれの業界の意見を入れてまとめる。
 これが最悪。

 ビジネスとはあくまでも主体あってのもの。流れを作ろうとしているビジネスマンがいない業界など、いくら支援しても意味はない。具体的にリーダーがどこか、どのように登場してくるのか言えない産業を、頭のなかで絵を描いてもどうにもなるまい。未だに、護送船団方式の産業政策しかできないと見える。

 自民党は、競争に明け暮れるビジネスマン感覚がお嫌いなのかも。成長よりは、美しく衰退していきたいと考えているのかと思うほどだ。

 その例が、アニメの殿堂。
 揶揄されたが、官僚は良い仕事をしたと思う。関係するすべての企業に“万遍なく”“平等に”なるように産業振興するという方針なら、これ以上の政策は無理だからだ。
 どんな業界かわかれば、こうなるのは自然な流れである。頂点のアニメ製作企業は質の高い仕事ができるが、底辺の、膨大な人数を抱える企業群は、資金繰りもままならずが実情。テレビ番組製作者にいい加減なプロポーザルを出して赤字受注で生きているような商売も多いと言われている位だ。これら全ての企業を一括りにして、業界構造をいじらず、大きな産業をつくるための施策を作ろうというのだ。無理難題。
 グローバルに飛躍して、大きく飛躍しそうな企業を育てるには、構造改革は避けて通れない。流れに合わない企業は没落することになる。
 しかし、そのような伸びる企業を登場させることで税収が増え、周辺の雇用も増すというのが、実践的な成長戦略。
 既得権益で潤う企業が嫌がることには手をつけるなという条件では、こんなことはできない。そうなると、できることはアニメの殿堂くらいしかないのである。決して悪い方針ではない。業界全体にはプラスに働くのは間違いないのだ。こんなものを作るだけでも大変な労力が必要であり、よくまとめあげたものだと思う。

 時代を切り拓いていくのは、産業ではなく、ビジネスマンである。そんなビジネスマンと一緒になって政策を作ればよいだけのこと。一端その流れができれば、日本の官僚システムは有効に働く筈。
 ただ、それは“贔屓筋”行政といわれかねない。その責任を政治家がとるのが政治主導の意味である。従って、オープンに“贔屓筋”と交流するしかない。
 こんなことが自民党にできるかな。
 ビジネスマンは無理だと見ているのである。その点では、民主党の方がましというビジネスマンがいるのもうなづける。

 もちろん、“贔屓筋”が見えない政策もいくらでもありうる。
 敢えて文化の違う企業が合併して海外展開を図るような動きや、独立心旺盛は企業内の一部門をMBOで独立させる動きへの支援策はお勧めである。
 逆に、“万遍なく”“平等に”振興するような、ベンチャー支援策は止めることだ。そんなことは悪貨が良貨を駆逐するだけ。すべきことは、本気で“目利き”役を果たそうとしている組織が動き易くなるような方策。どうにもならなくなっている事業を、お金をつけてやる気のあるベンチャーに売るのもよい手だ。

 まあ、この程度の話は、現役のビジネスマンならいくらでもでてくる。有能な官僚にまかせれば、総合的な政策など、朝飯前仕事かも。

 「経済戦略研究会」が、本気で自民党を方向転換しようと考えているかは、これからの議論の調子でわかってくるだろう。

 --- 参照 ---
(1) “舛添氏ら政策勉強会 呼びかけ人に6氏” 日本経済新聞 [2010.2.16]
   http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20100217ATFS1602I16022010.html
(2) “自民党内に危機感 キーマン舛添氏が新勉強会発足” 産経新聞-msn [2010.2.18]
   http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100218/stt1002180013000-n1.htm


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