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2010.2.26
 
 


変身を迫られた胡錦濤政権はどう動くか…

オバマ政権の中国に対する姿勢が変わってきたようだ。
 インターネット検閲とGoogle攻撃に対する批判、台湾への武器売却、為替政策変更要求、ダライ・ラマとの大統領会談、と続々と米中摩擦の種が持ち上がっている。
 米国の態度がここまで急激に変わった理由は何なのか考えてみた。

 もちろん、人民解放軍が近代化を進めており、脅威が増しているということがあるが、それにしては、変化が急だ。考えられるのは、2009年12月のCOP15(コペンハーゲン)での対立あたりか。
 そう思うのは、Guardianに、英国労働党政権Miliband温暖化対策相の中国ハイジャック発言が登場したせいでもある。この辺りに根があるのではないかという気がする。

 まあ、先進国は、COP15では酷い目にあったようだ。中国が協力姿勢を見せれば、温暖化目標について踏み込んだ形での決着も図れたようだが、中国が左派発展途上国に不退転姿勢を見せるように働きかけたというのが内情のようである。早い話、中国の拒否権発動で、まとまる筈の会議が潰れたということ。(1)一応、体裁だけ整えて終了はできたが。
 どだい、全会一致という仕組みが機能する訳はないのだが、中国の動きは目に余るものがあったようだ。

 ここで注目すべきは、中国が内容に反対して合意がとれなかったという点ではない。問題は、反対の“思想”である。国際機関による検証システムの導入は国家主権を侵すから絶対に認めるべきでないという考え方を振り撒いたらしい。お蔭で、左派発展途上国の非妥協的姿勢が生まれたということのようだ。
 流石の米国もこれでは“切れる”。忍耐もここまで。

 温家宝首相も、その後、何がおきているかわかったようで、2010年2月2日に「コペンハーゲン合意」支持を表明したが、(2)後のまつり。

主権を盾に世界を不安定化させるつもりかと問われているだけのこと。
 要するに、中国政府の姿勢は、イランや北朝鮮のような“癌”を広げかねないと見なされたということ。

 インド政府はその辺りの機微を理解しているようで、早速、対応。
 周辺国との合同軍事演習に際して、わざわざ、安全保障のためのものではないと発言する位で、インド洋周辺国の連帯が強まっていることをアピール。(3)
(オーストラリア,シンガポール,タイ,マレーシア,インドネシア,バングラデシュ,ミャンマー,スリランカの海軍+ニュージーランド,フィリピン,ベトナム代表)
 その一方で、中国はインドにとって脅威であるとの発言も。(4)要するに、“string of pearls” theory(5)論の大々的復活ということ。中国は大陸に閉じ込めておけといったようなもの。

 実際、パキスタンの港(Gwadar)→イスラマバード→カシュガルと遠大な輸送ルートへの投資が行われているようだし、ミャンマーの港から雲南省西端の瑞麗への石油パイプライン敷設も進める所存のようで、どう見ても、採算度外視である。スリランカHambantota港やバングラデッシュChittagong港の建設も大々的に進んでいるというから、その主張は間違いではない。

 ただ、人民解放軍(PLA)の力を冷静に見れば、以下のように考えるのが、当たらずしも遠からずか。(6)
〜China's Military・・・“?”〜
China's Military Is a Growing Threat. Not yet.
China's Armed Forces Are the Biggest in the World. Yes,
but it depends on how you count.
The PLA Is Slow, Conservative, and Backward. Not anymore.
China's One-Child Generation Will Weaken Its Military. Probably.
China Needs Its Army to Stamp Out Domestic Unrest. No.
China's War Plans Are All About Invading Taiwan. That was then.
China's Military Has Global Aspirations. Perhaps someday.

 結局のところ、イラン問題で、主権を侵すなということでイランの現政権支持を続けるつもりか、踏み絵をつきつけられているといったところだろう。北朝鮮にしても同じだ。
 中国が核問題でも、“主権”を侵すな式の主張を続けるなら、世界は戦乱への道に進むことになるが、それでよいのかいということ。

 --- 参照 ---
(1) John Vidal, environment editor: “Ed Miliband: China tried to hijack Copenhagen climate deal” Guardian [20 November 2009]
   http://www.guardian.co.uk/environment/2009/dec/20/ed-miliband-china-copenhagen-summit
Ec. Miliband: “The road from Copenhagen” Guardian [20 November 2009]
   http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/dec/20/copenhagen-climate-change-accord
(2)“温家宝総理、「コペンハーゲン合意」への支持を表明” 中国国際放送局 日本語部 [2010年2月2日]
   http://j.peopledaily.com.cn/94474/6885395.html
(3) “Milan exercise not a security bloc: Navy chief” PTI転載 [February 5, 2010]
   http://www.dnaindia.com/india/report_milan-exercise-not-a-security-bloc-navy-chief_1343598
(4) Vikas Bajaj: “India Worries as China Builds Ports in South Asia” NewYorkTimes [2010/02/16]
   http://www.nytimes.com/2010/02/16/business/global/16port.html
   Vikas Bajaj: “China's "string of pearls" meant to encircle India?
  Expanding its activities in South Asia, China could eventually pose a serious threat to India” deccanherald-The New York Times
   http://www.deccanherald.com/content/53291/chinas-string-pearls-meant-encircle.html
(5) Vijay Sakhuja: “Maritime Multilateralism: China's Strategy for the Indian Ocean” Jamestown Foundation [November 4, 2009]
   http://www.jamestown.org/single/?no_cache=1&tx_ttnews%5Btt_news%5D=35692&tx_ttnews%5BbackPid%5D=7&cHash=9ed1a946b0
   C. Pehrson: “string of Pearls: meeting the challenge of china’s rising power across the asian littoral” SSI [July 2006]
   http://www.strategicstudiesinstitute.army.mil/pdffiles/PUB721.pdf
(6) DREW THOMPSON: “Think Again: China's Military It's not time to panic. Yet.”Foreign Policy [MARCH/APRIL 2010]
   http://www.foreignpolicy.com/articles/2010/02/22/think_again_chinas_military?page=0,0


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