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2010.4.19 |
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中国を民主化できる訳がなかろう。…〜 中国国民は独裁制度を不可欠と考えているのでは。 〜北京発のジョークが面白い。・・・ “We learned from the Soviet Union, and it collapsed. We learned from Japan, and it collapsed. We learned from the United States, and it collapsed,”(1) これを聞いて笑えないとしたら、中国民衆の実像を間違って読み取っているかも。 こんな話をしたくなったのは、Googleの大騒ぎがあったから。コレ、多分、中国内で見ればひとりよがりにすぎまい。もともと他の検索エンジンの方がよく使われており、撤退にたいしたインパクトが無いという話ではなく、中国内で、米国流の民主主義を求めているような人は極く一部ではないかという意味で。 大多数の民は、今の体制で経済的繁栄が続くなら、政治的自由度が抑えられてもそれはそれで結構というところではないか。関心事項はあくまでも生活。政治的不満は決して小さいものではないが、それは政治的自由度の低さに対するものではなく、為政者の汚職体質への強烈な怒りからくるものだと思う。 要するに、自分達の国はまだまだ発展途上であり、政治的な自由度が増せば生活が良くなると考えている人は滅多にいないということ。独裁政治を無くせば、たちどころに政治的安定性が損なわれ、経済発展が阻害されかねないと見ている人が大半だろう。 “自由主義陣営”と目されるタイや、普通選挙が実施され“民主化”されたキルギスが、良い方向に進んでいると感じている人がいるとは思えまい。軍政から、民主選挙で樹立された政権に権限が委譲されたところで、結局は混乱に陥るだけというのが現実感覚そのもの。 なにはともあれ、政治的安定最優先で行こうということ。 なにせ、ボブ・ディランの公演でさえ不許可。(2) 傍から見れば、羹に懲りて膾と吹くようなものだが、官僚システムとは概してこうなるもの。 〜 一党独裁のシンガポール・モデルが好まれるのは当たり前。 〜
と言っても、GDP per capitaが一桁上の都市国家だし、英国植民地だったから、そうそう参考になるまいと考えがちだが、そうとも言えまい。シンガポールは、独立当初から物質的栄華を目標に設定しており、完璧な一党独裁国として発展した。その結果、栄華を極めたのだから、この“成功”を真似をしたくなるのは極く自然なこと。 なにせ、先進国のレベルに達してからも、野党の存在感は薄く、単に普通選挙を実施していることを示すための地位に押し込められている感じしかしない。中国共産党にとっては、これこそ理想の姿と言えよう。 英国流の法治の仕組みを取り入れていた上、米国優遇策を採用してきたから、独裁政治に対する風当たりを上手に避けてきた訳で、ここいら辺りは是非にも真似したいといったところか。 それに、非漢民族の独立運動は、中国共産党の目の上の瘤。華人の国でありながらマレー文化やインド文化と上手く共生し、海外から労働者も受け入れている状況は垂涎の的だろう。 ただ、シンガポールの汚職に厳しい姿勢の導入は無理とはなから諦めているかも。シンガポールにしたところで、汚職に染まり易い体質だから政権安定のためにそうした姿勢を取らざるを得ないというだけ。独裁政治の副作用であり、なくすことなどできる訳がない。従って、広大な国土でシンガポール同様の姿勢で臨んだところで実効性は疑問。腐敗撲滅は無理。 言論統制への反逆より、こちらの方が中国共産党の命取りになりそうな気がする。 まあ、ともあれ、中国人が、シンガポールこそ自分達のあるべき未来像と考えるのは自然な話ではなかろうか。 そうなれば、GDP per capitaが6,600ドルでしかない状態で、民主化に進むなど危険きわまりないとみなされる。政治的混乱のタネは、方法は問わず、ともかくすぐに消しておけとなる。民主化の波など発生する筈がない。 〜 日本や米国は経済的利益を上げるための相手でしかなかろう。 〜 シンガポールのようになるためには、当たり前だが、資本主義国と仲良くしていくことが大前提となる。特に、日本や米国との関係は非常に重要であろう。 しかし、それは、他国の政治の仕組みを理解して、親交を深めることを意味する訳ではなかろう。ここが肝要。 特に、日本の場合は国家発展のために学ぶ対象にもされていないと思われる。と言うより、反面教師か。労働人口急減対応策は何も無いし、医療・介護・年金の際限なき支出拡大を抑えることもできず、生産性向上に向けた産業再編など夢物語。そんな国と深い付き合いを進めたいと考えるとしたらどうかしている。 衰退間違いなしだから、今のうちに、利用できそうなものをできるだけ確保しておけといったところだろう。 それでは、米国をどう見ているか。 これが難しい。人口13億人の国だから全体像が読めないのである。 Googleから見れば、ネット人口が巨大だから中産階級が相当な数に上っており、その人達と心情は結構合うと考えてもおかしくないが、おそらくそれは大きな間違い。 まあ、間違うのも道理ではある。2006年の米国での博士号取得者の出身大学1位は清華大学、2位は北京大学で、3位がカリフォルニア大学バークレー校なのだから。(3)このイメージで中国を見てしまえば、韓国同様に中産階級が増えてきたなら、同じように民主化要求が高まると考えておかしくあるまい。 しかし、中国の場合、根本的な仕組みが違うのである。中産階級は、国全体での労働力の自由移動が許されない状態だからこそ、自分達の高い生活レベルが維持できているということを知らない訳ではなかろう。ひとたび、政治的安定が揺るがされれば、現在の生活レベルはどうなるかわからないのである。そんなハイリスクな民主化路線に乗る人は滅多にいないだろう。 Googleの動きを醒めた目で眺める人だらけというのが実態だと思う。
そして、シンガポールを目標として経済の繁栄を狙うなら、まだまだ投資を受け入れ続ける必要がある。この点で、米中蜜月を壊すわけにはいくまい。それに、米国は、先端技術を学ぶ先としても外せないし、輸出先の大市場でもある。米国との対立だけはなんとしても避けるというのが鉄則だろう。 しかし、米国流の民主主義を学ぼうなどと考える人は滅多にいない。 まあ、それは当然でもある。 例えば、アラブの国で普通選挙を実施すれば、宗教原理主義勢力が過半数を占めるか、部族頭領指定の議員だらけの議会になりかねない。ところが、米国は、それを直視せず、理想論で無理矢理民主化を進めさせたりするのだから、結果は始めからわかったようなもの。 実利を狙うなら、他国がどんな政治をしようが、口出しせず、気にしないで付き合うのがベストとなる。 ただ乗りと言われない程度に、世界の安定のために協力はするが、それ以上はおことわりということだろう。 経済発展のためには、米国や日本の力が必要だから、要請があれば協力もするし、ある程度の妥協もするというに過ぎまい。 〜 中国を入れた地域安定の仕組み作りが逆に不安定化を助長するかも。 〜 ただ、そのような話を、かつての日本のような経済一辺倒姿勢として眺める訳にはいくまい。 当たり前だが、中国はシンガポールのような小国ではない。中華帝国としてのプライドを捨てる訳がなかろう。そして、もっと重要なことは、米国大統領を呼びつけた“建国の父”、毛沢東主席の思想を今もって堅持している点。 かつての中華政権が君臨していた領土圏の回復と、周辺国が帝国に敬意を払う形での地域安定化を目指しているのは間違いなかろう。その手段は、平和的なものであるとは限らないのである。・・・ “帝国主義国についていえば、われわれは、やはり、そこの人民と団結するとともに、それらの国ぐにとの平和的共存につとめ、商売をやり、起こるかもしれない戦争を制止するようにしなければならない。しかし、われわれは、けっして、かれらについて実際にそぐわない考えをもつべきではない。” [毛沢東 1957年] “軍隊は国家権力の主要な構成要素である。国家権力を奪取し、しかもそれを保持しようとするものは、強大な軍隊をもつべきである。われわれを「戦争万能論」だと笑うものがあるが、そのとおり、われわれは革命戦争万能論者である。・・・ 世界全体を改造するには鉄砲によるほかはない、ということができる。” [毛沢東 1938年] 従って、チベットだけでなく、モンゴル、北朝鮮もいずれ独立国とみなされなくなる可能性も否定できない。そこまでいかなくても、朝鮮半島統一を認めない可能性は高い。 周辺国についても、次第に親中国勢力支援を強めるだろう。そして、人民解放軍はシーレーンと西太平洋全域を軍事支配下におくべく、着実に歩を進めているのである。「4月10日、土曜日に中国の潜水艦2隻が浮上して、その周辺を7隻か8隻の護衛艦が隊をなして沖縄本島から宮古島の間を南下」(4)といった活動を始めているのが実態である。言うまでもないが、今までになかった事例である。 いよいよ本格的に海に乗り出すとの宣言そのもの。(5)これこそが、中国流の地域安定路線そのもの。 そんな動きを早くから肌で感じ取ったからこそ、東南アジアで軍備拡張が始まっていると考えたらよかろう。[2000-2004年から2005-2009年に, Singaporeで146%, Malaysiaが722%と大膨張.(6)] アジアは政治不安定化の道を歩み始めたのである。 もちろん、それは日本にも当てはまる。 --- 参照 --- (1) Sebastian Mallaby: “For rising China, an identity crisis” Washington Post [March 26, 2010] http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/03/25/AR2010032502407.html (2) “ボブ・ディラン、残りのアジアツアーをキャンセル” AFP 発信地:香港 [2010年04月05日] http://www.afpbb.com/article/entertainment/music/2715682/5569844 (3) “米博士号取得者の出身校トップは清華大学、北京大学” 人民網日本語版 [2008年09月09日] http://j.peopledaily.com.cn/94447/94448/6496251.html (4) 大臣会見概要 [2010年4月13日] http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2010/04/13.html (5) “Joint formation carries out collaboration training in distant waters” China Military Online [2010-04-12] http://eng.chinamil.com.cn/news-channels/china-military-news/2010-04/12/content_4178118.htm (6) “15 Mar 2010: New SIPRI data on international arms transfers reflect arms race concerns” Stockholm International Peace Research Institute http://www.sipri.org/ media/pressreleases/100315armstransfers 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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