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2010.4.21
 
 


昨今の政治状況を眺めて[たちあがれ日本の登場]…

 マスコミを大騒ぎさせて、5人の超ミニ政党が誕生したが、マスコミの報道は揶揄的な発言の紹介が基調。
   【みんなの党 渡辺喜美代表】 「立ち枯れ」と聞き間違えるように言い、会見爆笑。(1)
   【民主党 渡部恒三元衆院副議長】「自民党を支えるべき老人がどんどん飛び出し、家出老人の続発だ」(2)
 「シルバー政党」である上、平沼赳夫代表と与謝野馨共同代表の理念が違う。しかも、「保守」との言葉も無いそうだから、(3)マスコミの取り上げ方は妥当なところだろう。
 そして、止めは公明党の「参院選に全く影響なし」との表明か。(4)

 こんなところだけ見ていると、寄り合い所帯を作らざるを得なくなった背景がよくわからなくなる。
 小生が見るに、この野合の一番の特徴は、政党名略称表記でひと悶着おこさせた点に出ている。この動き、常識もなにもあったものではない。すでに定着している新党日本の名称と同一にするというのだから。(5)しかし、これが結党の意味を教えてくれる。

 仕掛け自体は、新党日本に、日本という言葉を使われるのが面白くないという嫌がらせに映る。だが、これで世間の耳目を集めることができる訳で、周到に考えられたシナリオだろう。
 このお蔭で、この党から立候補すれば、世間の常識を無視する人物とのレッテルを貼られる。・・・これが狙いだろう。まともそうな政策を接木しておけば、変革を担うべき、流れに抗して立ち上がったように振舞えるからだ。
 こんな姑息なことまでせざるを得ないのだから、古典的保守がせっぱつまった危機感を抱いているのは間違いなさそう。

 野合だろうがなんだろうが、自民党外で動く必要が生まれたのである。
 それは何かといえば、おそらく夫婦別姓法案を葬り去ること。

 当たり前だが、女性が活躍するビジネスの現場ではとうの昔から別姓など当たり前。この世界では、姓と家族問題とは無関係。
 しかし、古典的保守層の世界は180度違う。姓とは、家の問題だからだ。家族構造はあくまでも家長と専業主婦でなければ駄目なのである。これを壊されると、国が崩れると考える訳である。
 この層は自民党でもおそらく多数派ではないが、貴重な票田である。従って、民法改正に動くことがほぼ決まっても、(6)自民党は動かなかったのである。そこで“例外的”夫婦別姓制度でおりあいをつけようとの動きも出たが、(7)一歩も進まなかった訳である。
 古典的保守層は実数は少ないが、票の重みが実質3倍の地域に偏っているため、動けないということ。
 ところが、政権交代で状況が一変。仲間と思っていた改憲保守層からも、夫婦別姓推進の声があがるに至れば、危機感を覚えるのもわかる。しかも、上手くつきあってきた公明党が外国人参政権賛成派であり、今後どうなるか不安でたまらぬというところでは。
 ここは、なにがなんでも立ち上がらねばとなったのではないか。

 「家」制度で生きている人達にとっては、民主党政権誕生は国の基盤を崩されかねない動きが始まったたことを意味する訳で、これは一大事ということ。差別の仕組みと世界から批判されようが、嫡子制度も守りたいに違いないだろうし。

 自民党政権は夫婦別姓法制化はしないが、反対との姿勢を鮮明にしない姿勢をとり続けてきたが、野党化しても、その体質を変えようとしないので、不満爆発といったところ。
 なにせ、誰が見ても支持回復見込みは無いのだから。
 従って、有名人を引き込んで大騒ぎし、与党内の夫婦別姓反対派を引き込み、大いにかき回そうとの算段だろう。マスコミを活用した、それなりによくできた戦術と言えよう。

 消費税増税の仕事を避けた安倍首相と基層は瓜二つ。古き日本を取り戻せば、国は飛躍できるという精神論だけ。
 たちあがれ日本とは、ただただ目立つための、自民党の分派ということ。それは、谷垣自民党総裁の態度を見れば一目瞭然。
 小選挙区で落選し、比例区自民党票で当選した議員が離党するに際し、わざわざ会合を持った上、そこで議員辞職を迫るどころか、除名せず協力関係を続けるというのだ。なんだかね。
 しかも、“「私と与謝野氏は考え方が違わないのに残念だ」と述べるにとどめた”(8)というのだから、自民党はすでに政治組織の態をなしていないのかも。

 --- 参照 ---
(1) “新党を「立ち枯れ?」 渡辺喜美氏がチクリ” 産経新聞2010.4.7
   http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100407/stt1004071840011-n1.htm
(2) “渡部恒三氏、自民党は「家出老人の続出だ」” 産経新聞2010/04/07
   http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100407/stt1004072306014-n1.htm
(3) “新党「たちあがれ日本」 喫緊の課題は参院選対策 理念の違いで対立も?” 産経新聞2010.4.11
   http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100411/stt1004110048003-n1.htm
(4) “公明・井上幹事長 たちあがれ日本は「参院選に全く影響なし」” 産経新聞2010.4.16
   http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100416/stt1004161853006-n1.htm
(5) “略称「日本」で波紋 後発の「たちあがれ」に「新党日本」が反発” 産経新聞2010.4.14
   http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100414/stt1004142050014-n1.htm
(6) 法制審議会総会決定「民法の一部を改正する法律案要綱」平成八年二月二十六日 法務省
  http://www.moj.go.jp/shingi/shingi_960226-1.html
(7) 平成14年7月24日 「民法の一部を改正する議員立法案〜例外的夫婦別姓制度」 野田聖子ホームページ
   http://www.noda-seiko.gr.jp/old_data/hitokoto/140724.html
(8) “与謝野氏が離党届提出 谷垣氏「残念だ」” 産経新聞2010.4.3
  http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100403/stt1004031242010-n1.htm


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