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2010.5.11
 
 


昨今の政治状況を眺めて[自民党はどこへ行くのか]…

谷垣自民党は、何を変えたいのだろうか。
 ゴールデンウィーク突入前に、再生を掲げる谷垣自民党が「マニフェスト骨子」を公開した。ずいぶん時間がかかったものである。
 その割には、こんなものかという印象。グローバル競争のなかで、国力回復に一歩踏み出そうという気迫が全く感じられず幻滅。
 そんなことは、ローカルな選挙区事情からすれば票集めにつながらないということか。

 その一方で、お家芸の憲法改正だけは忘れずに主張。ただ、オマケ的な順位ではあるが。
 自主憲法制定を目指すと言いながら、実際は巧妙に避け続ける、この党の伝統的なやり方の踏襲か。
 防衛予算を削り、その分を地方ばら撒きに充当してきたお陰で、軍事産業は先細りである。自衛隊には、米軍の海兵隊のような緊急対処部隊もない訳で天下泰平路線のままだが、そんな状態にしておいて、いったいどんな自主憲法を作ろうというつもりなのだろう。

雇用問題は確かに重要だが。
 それではイの一番にあげているのは何かといえば、雇用問題。確かに、ここが日本にとって一番頭が痛い点である。
 しかし、本質的問題は、国力が落ちているということ。その問題を放置して対処療法でしのぐのは無理筋である。日本経済を牽引している企業の競争力は今のままなら低下一途。そのうち日本経済を支えることができなくなってもおかしくない。どうして正直に書かないのだ。それがなければ他の政党となにもかわらぬ。なにせ、日本は、全ての政党が正社員の雇用維持を求めているのである。そんなことでなんとかなるものでないのは自明ではないか。
 言うまでもないが、正社員化でトータルの雇用を増やそうとすれば、企業への雇用助成金と、規制による解雇禁止しかない。言うまでもないが、こんな方向に進んで日本経済が上向くことなどありえない。企業の競争力を落とす道を歩むだけのことで、日本の黄昏政策である。
 ビジネスマンが、この手の政策を打ち出すような党を信用するかな。

企業減税策をビジネスマンがその通りうけとるかは疑問。
 もちろん、まともそうに映る施策もある。それは企業減税。グローバルに見て、税率が高いから下げて競争力強化という理屈だろう。グローバル競争に晒されている企業にとってみれば、当然の話だ。しかし、それなら何故もっと前に行わなかったのか。ここが肝。
 とってつけた政策ということ。

 自民党とは儲けている企業からできる限り税を徴収し、競争力が失われていく産業や、どうにもなりそうもない企業への補助に回すことで票を集めてきた政党である。地方の既得権益層最優先で歩んできたのである。政治的安定には必要悪ということで、ビジネスマンに黙認させてきた訳だ。政権交代が実現してしまえば、もうその手は通用しないのだがね。
 ココに日本の一番の問題が隠されている。資本コストを割り込んでいる上、解決策も見つから無い企業を生き延びさせるための政治が行われてきたということ。言うまでもないが、こんなことをすれば、悪貨が良貨を駆逐することになる。だが、グローバル市場で見れば、日本の“良貨”企業が圧倒的な強さを発揮できたからなんとかなってきたのである。しかし、これからはそうはいかない。新興国から“良貨”を凌駕する勢力が次々と育ってくるからだ。自民党には、その感覚は無いということ。こまったものである。

 なぜなら、そんな状態での企業減税は必ずしもプラスには働かないからだ。グローバル企業といえども、国内での競争にも勝たなければならない。減税のお陰で弱体企業も潤うから、国内のどうでもよい競争に貴重な資源を浪費させられることになる。“悪貨”企業のために、“良貨”企業の足が引っ張られることになりかねないのだ。もう、日本には、弱体企業を生き延びさせる余力などないというのに。

グローバルな視点はゼロ。
 このマニュフェストの一番の特徴はグローバル経済に対処し国力を回復しようという気迫が感じられない点。・・・自民党は、そんなものには全く興味が無い政党になり下がったのではないかと思うほどだ。

 そもそも、海外市場のお陰でどうやら経済が立ち直ってきたのである。普通の感覚なら、これからどのように海外と取り組むのか、提言の一つもあるものではないか。

 産業を支えてきた大企業の競争力は落ち込む一方で、新入社員といえば、やる気はないし質も悪いから、創造性には期待できそうにないというのが偽らざる現実。日本企業の強みが失われていくのは自明である。
 しかも、人口は減る一方で老齢化は急速に進むのだから、日本市場は確実に縮退していくのだ。企業にとっては、海外市場での競争力強化は最大の課題。これに失敗すれば、日本企業は沈没していくしかなかろう。
 こんなことはわかりきったこと。しかし、自民党はそんなことなど全く気にならない訳である。

なにもできなかった規制緩和が突然どうしてできるのか。
 規制緩和も施策にあがっている。構造改革を進めようということではなく、雇用増進のためのようだが。
 小泉政権では、スローガンを掲げただけで、ほとんど何もできなかったのに、今度はどうしてできるのだろう。政権党でないから、これ幸か。当時は、耳目を集めるだけの特区を始めたが、こんどは雇用特区でも提案するつもりなのかも。
 それとも、タクシーのように、新事業をさせない、名前だけの規制緩和を増発したいのかも。タクシーでは、確かに、雇用は大幅に増えたし。(批判派から弱肉強食で運転手が食べれぬと大騒ぎされ、それにまともに反論もできなかったことを思い出す。)

民族政党色を出せば支持が集まると思っているのだろうか。
 そうそう、夫婦別姓、外国人参政権、憲法九条で対立点を鮮明しているが、それにどれだけの意味があるか考えた方がよいのではないか。民族精神を鼓舞すれば経済が立ち直る訳でもなかろう。国力回復を実現するような政策なしに、国論が二分しているような点で戦えば、普通は野党ボロ負けとなる。逆に、勝てたりすればもう精神論で突っ走るしかなくなる。それが政治家が選ぶ道なのか。

 政治家なら、少しは考えて欲しいものである。もともと、国力充実ということで、「安保反対」運動をも外交カードに使いながら安全保障をうまく切り盛りしてきたからこその長期政権だったことを忘れたわけでもなかろう。いくらでも工夫の余地があろうものを。
 と言ってもなんだかわからないか。
 政治家巧者とは、対立組織のなかに共感を呼ぶようなやり方をとるもの。そして、組織の力を弱体化させ、世論を呼び込むのである。例えば、現政権の外交には人権のジの字もないが、基盤の組織は人権を気にする人ばかりだと思うなら、そこを突けばボディブローのように効くもの。北朝鮮、ロシアのチェチェンでの粛清拷問状況を許さずということで国際連帯を図るとか、いくらでも手はある。

またゾロ教育政策。
 自民党議員の危機感は、国力低下ではないといういうことかも。そう感じさせるのが教育改革のスローガン。
  「教育立国日本」と称して、当たり前の主張を掲げているからだ。
    ・世界トップレベルの学力
    ・規範意識
    ・日本に誇りを持つ
 間違えてもらってはこまるが、上記を失わせたのは、自民党政権である。
 いまや、ビジネスに役に立つような学力もなさそうで、やる気もなさそうな大卒だらけである。グローバル市場に打って出るための人材は滅多にお目にかかれないのが実情。就職のために研鑽に余念がないアジア新興国の大卒とわたりあえる状態ではない。アジアはすでに単純労働力利用の地域ではないのである。現在の一番の問題はソコ。
  「土曜授業の復活」などもう遅すぎる。それに、一度なくした制度を復活させたりすれば、親にとっては都合が悪いことだらけで、票が飛んでいくだけだろう。
 だいたい、そんな程度で世界トップレベルの学力と規範意識が生まれるものかね。
 不登校・中退者を出さないための施策も驚き。志ある子供に支援するという。そんな問題としてとらえている訳である。

 まあ、政治の素人の話より、ご自分でお読みになった方がよかろう。
   → 自由民主党 「マニフェスト骨子」 (2010年4月22日)


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