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2010.5.31 |
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アフガニスタン行き詰まり…〜 国家情報長官辞任は当然 〜2010年5月米国・国家情報長官が辞任することになった。(1)テロ未遂事件が発生したのだから当然の話だと思う。もともと、2001年のテロを防げなかったので編成された組織だし。 ともかく、米国の情報機関はアフガニスタン/パキスタン辺りの状況が全く読めていなかったのは間違いなさそうである。その最たるものが、Tehreek-e-Taliban Pakistanの司令官を無人機攻撃で死亡させたとの1月の発表。その死んだ筈の当人がビデオで登場し、米国攻撃を宣言したのだからとんでもない失策である。罠にはめられた可能性が高い。 そして、米国・司法長官が“Pakistani Taliban Behind Times Sq. Attack”(2)との見方を示すようでは、どうにもなるまい。 CIAとの確執の結果の辞任と書かれている記事もあるが、要するに、パキスタン・アフガニスタン情勢について見方が割れていたということではないか。 それに、アフガニスタン駐留軍への情報提供と、米国本土のテロ防止用情報提供という、異なる目的の任務分担で意見が割れて当たり前。どちらも上手くいかないので大統領もついに痺れを切らしたというところでは。 〜 パキスタン国軍情報機関とタリバンは同根 〜 もともと、タリバンとパキスタン国軍の特別組織は同根だったのだから、今更、それを分けることなどできる訳がないし、パキスタン軍が完璧に反タリバン化するとは思えない。 ただ、米国から潤沢な軍事援助が降ってくるとなれば、要求に応じて反タリバンに映るような動きはできるというだけの話。 従って、米国からの援助を増やすために、タリバンを裏で支援することも十分ありうる。それに、国軍からみれば、アフガニスタンがタリバン政権になる方が摩擦が生まれず有難いだろう。 駐留軍がそのうち撤退することがはっきりしているのだから、アフガニスタンの政権にしても、タリバンに認めてもらうしか生き残りの手はないと考えているに違いない。たたき出される可能性もあるから、親米系は逃亡の準備もしている筈で、それが汚職のもとでもあろう。 アフガニスタンの現政権は、駐留軍に軍事的に支えてもらっているから成り立っているにすぎず、軍事援助を回してもらえるから離反部族が出ないだけ。部族集合体国家での選挙で選ばれた政治家に力がある筈がない。 駐留軍が撤退すれば即現政権の姿勢に変わる部族続出だろう。それが、この地域の風土だと思う。 そんなことを考えれば、パキスタン国軍情報機関の支援のもと、タリバンが活発化するのは自明。 こんな素人でもわかることを、国家情報長官が読めなかったのである。 国軍の上層部はエリート層であり、高度な教育を 受けているから、おそらく振る舞いは欧米流だろう。しかし、心根は反欧米と見た方がよい。世界の大国として動きたいのである。従って、欧米の大国の弱点を徹底的に考え抜いてきている。そこを理解しないとえらい目にあうと思われる。 要するに、米国に対するカードとして何を持つとよいか、次の一手はどうあるべきか、熟考しているのが、パキスタンの情報機関の上層部。そもそも、地域に関与してきたソ連を追い出すために、アフガニスタンのタリバンを育てあげたのである。それを知っていれば、素人でも、その次は米国籍の闘士を育てるのではと考えるのではないか。 〜 対タリバン政策の失敗を認識か 〜 ただ、このことに、大統領は気付いているようだ。・・・“Taliban has done through assassination and indiscriminate killing and intimidation.”(3) 言い回しから見て、米国のアフガニスタン安定化路線が破綻したことを理解していそうだ。要するに、産業を興すために金をバラ撒く一方で、軍事力を強化してタリバンを叩く方式は諦めざるを得ないということ。 だいたい、海外部隊にタリバンと非タリバンを区別する能力がある訳がない。ゲリラ活動とは、その弱点をついて仕掛けるのが基本。海外部隊にはまともな情報がないから、非タリバン層を攻撃させられることになり、残るのは被害者部族の海外部隊への怒りのみ。 一方、海外から産業振興型援助を受け取ればどうなるかもはっきりしている。タリバンによる惨殺が待ち構えているだけのこと。駐留軍は早晩消えるが、タリバン勢力は残るのである。援助を喜んで受け取るのは、もともとタリバンと戦っている勢力か、タリバンに通じていて何かを目論む勢力しかいる訳がなかろう。一般的な支援など、安定にプラスに働くことなどありえまい。 〜 アフガニスタンでついに形勢逆転 〜 そして、ついにきた。 首府で、駐留軍の車列が攻撃を受けたのである。 しかも、その翌日には、Kabulの北80KmにあるNATOのBagram空軍基地が攻撃にさらされた。(4) アフガニスタン流で考えれば、これは面目丸つぶれ。人々は、いずれタリバンが戻ってくることを確信したに違いない。勝負あり。 もともと、この国は部族の集合体。まとまりなど皆無。重要なのは、部族の威信と、利害だけ。強くて、威厳ある民族勢力には、一目おくというだけの話。タリバンが戻ってくるなら、それはそれでよかろうという見方に変わったのは間違いあるまい。 こんな風土なのだから、駐留軍の攻撃対象が本当にタリバンかどうかもわかったものではなくなる。どの部族にしても、勢力争いにプラスになるか、軍事支援を得られるかだけで、外人部隊とつきあっていくだけのこと。 しかも、首府だけでなく、タリバンの拠点と見なされている南部地区でも動きがあった。(5) ここで力を誇示されてしまえば、勢力逆転である。民衆が外国軍隊に協力することは、もうあり得まい。 これからは、タリバン出没という情報も罠だったりして危険この上ないものとなろう。しかも、内部情報が筒抜けだったりして、奇襲攻撃を受けるかも。 〜 アフガニスタン政策の転換必至 〜 それをいみじくも語るのが、18日に首府で発生した米軍の車列に対する自爆テロ。内通者がいなければ、こんなことができるものではない。しかも、それを周囲が見て見ぬふりをしていた可能性も高い。アフガニスタン情報機関が、これはパキスタンの軍情報機関が関与したと見なしたが、(6)そう言うしかない。 すでに長い戦乱が続いているから、住民は駐留外人部隊に敵意しかもっていないに違いない。しかも芥子栽培地域には手も足もでない状態に追い込まれていると思われる。(その一帯の税金徴収者はタリバンということ。) ここまでくると、兵力を増強しても、もうどうにもなるまい。 オバマ政権は早晩政策転換に迫られよう。 --- 参照 --- (1) Adam Entous: “Obama urged to reassess intelligence czar's powers” Reuters [May 24, 2010] http://www.reuters.com/article/idUSTRE64N5V920100524 (2) “Interview With Eric Holder” ABC Week [05/09/2010] http://abcnews.go.com/ThisWeek/video/interview-eric-holder-10596851 (3) @West Point: “Remarks by the President at United States Military Academy at West Point Commencement” The Whi/te House [May 22, 2010] http://www.whitehouse.gov/the-press-office/remarks-president-united-states-military-academy-west-point-commencement (4) “Taliban attacks U.S. Bagram base” The Hindu [5月19日, 2010] --Photo掲載 http://beta.thehindu.com/news/international/article433373.ece?homepage=true “Nine-hour battle for Afghanistan airbase” Mirror-UK [20/05/2010] http://www.mirror.co.uk/news/top-stories/2010/05/20/nine-hour-battle-for-afghanistan-airbase-115875-22270997/ (5) “Troops wounded as Taliban attack southern Afghan base” Reuters [2010年05月23日] http://jp.reuters.com/article/topNews/idUSTRE64K0Q520100523 “Insurgent Attack on Kandahar Airfield” ISAF Joint Command - Afghanistan [5/22/10] http://www.isaf.nato.int/article/isaf-releases/insurgent-attack-on-kandahar-airfield.html (6) ROD NORDLAND and ABDUL WAHEED WAFA: “Afghan Spy Agency Accuses Pakistan Agency in Suicide Bombing” NewYorkTimes [May 24, 2010] http://www.nytimes.com/2010/05/25/world/asia/25afghan.html 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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