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2010.7.20
 
 

雑感: 参議院選挙[続]…

〜 「大きな政府派」は地方組織の活性化に成功したようだ。 〜
 参議院選挙結果をまとめれば、「超大きな政府派v.s.大きな政府派」の戦いで、大きな政府派が勝利したということになろう。その勝利の原動力となったのは、明らかに若手。ただ、その背景には、マニフェスト作りがありそうだ。
 民主党も似たりよったりのマニフェストを出してきた上に、グローバル企業の競争力を意識したものになっていたから、自民党版は霞んでしまった。だが、苦労して作っただけの価値はあったようだ。それに、消費税増税を先手で掲げたことが、首相の消費税増税発言を呼ぶことになり、間接的ではあるが、民主党敗北のきっかけを作ったといえそうである。

 しかし、勝利を支えたのは、あくまでも自民党の地方組織だと思われる。おそらく、迫り来る地方選を睨んで地方議員がフル回転で動いた筈。自分の選挙のためにも、頑張らざるを得まい。末端組織が本気で動けば、自民党はそうそう簡単に負けることはない。初めて与党になったばかりの民主党の力とは雲泥の差。それを肌で知っていたのが小沢前幹事長といえよう。どう見ても、古い体質そのものの政治家だが、握手と会合による仲間内意識と打算で動く地方政治文化のなかで力を発揮するには、そうならざるを得ないというだけのこと。

〜 第三極の変化にそれほどの意味はなかろう。 〜
〜 参議院選挙の民・自議員数 〜
選挙年 投票率 民主党
議員数
自民党
議員数
他党
議員数
二大政党
比例区
集票率
2001年 58.84% 26 64 31 55%
2004年 56.57% 50 49 22 68%
2007年 58.64% 60 37 24 68%
2010年 57.92% 44 51 26 56%
【他党議員数内訳】
 2001年: 共5+社3+公13+由6+保1+無3
 2004年: 共4+社2+公11+無5
 2007年: 共3+社2+公 9+国2+日1+無7
 2010年: 共3+社2+公 9+改1+た1+み10
 ただ、民主v.s.自民ばかり見ていると流れを見落とすと考える人も少なくないようだ。特に、マスコミがキャスティング・ボートを握る第三極という解説を流すので、どうしてもそこに関心があつまる。
 それもわからないではないが、小生は第三極が時代の流れを変えることはないと見ている。せいぜいのところ、政局不安定で国政の大混乱が続けば、救国内閣樹立しかないということで、公明党が出てくるだけにすぎまい。

 これまでの参議院選挙を見ても、二大政党以外の党の議席は限定的である。つまり、二大政党への不満層の受け皿政党が存在してきたというだけのことでは。

 従って、みんなの党の大躍進を大きな変化と見るのは行きすぎだと思う。
 超大きな政府派や大きな政府派ばかりのなかで、唯一の「小さな政府派」だから目立つが、その支持は限定的なものでしかなかろう。
 本来なら、国政選挙は、「大きな政府派v.s.小さな政府派」であって欲しいから、そちらに進む兆しと見たくなるが、それは現実とは違うと思う。

〜 日本の一番の問題は、“民意はバラマキ政策”という点。 〜
 そんな風に思うのは、みんなの党人気は党首の人柄によるところが大きそうだからでもある。(ムードで人々をのせるタイプ。今時、日銀がマネーを出せば、デフレから脱出できると主張する政治家だから注意した方がよい。)
 この手法、かつての小泉人気創出とよく似たところがある。
 そう言えばおわかりではないか。スローガンは華々しかったが、なにもできなかった小泉型「規制緩和」キャンペーンそっくり。

 小泉首相が何故規制緩和できなかったかといえば、支持層の既得権益を揺るがしかねないから。総論賛成、各論反対でにっちもさっちもなのだ。自由貿易に至っては、ほとんどタブーに近かろう。自民党お得意の、“自由な議論主義”で誤魔化すのがオチ。
 だが、支持層を大切にしてきたにもかかわらず、自民党は支持を急速に失った。それは、地方へのバラマキを減らし続けたからだ。ほとんどそれだけで食べている地方が多いから、地域経済がへたったのは当然。と言って、今更、元に戻してバラマキもできないということで、自民党は隘路にはまった訳だ。
 そこをついて、無駄な税金投入を止め、違う形のバラマキで行こうと提起したのが民主党。中央政府の無駄を省けばバラマキ可能との主張がうけただけのこと。
 しかし、誰が考えたところで、民主党が、中央政府の複雑怪奇な内部の大清掃ができるとは思えまい。どこに手をつけようとしても、そこには支持基盤の労働組合が控えているからだ。小泉路線の“規制緩和”と同じようなもの。ただ、大喝采を浴びた、蓮舫議員の“特区”での事業仕訳はそれなりの成果はあがったようだが。

 さあ、そこでだ。
 突然登場してきた「小さな政府派」だが、それは 「超大きな政府派」や「大きな政府派」と本質的に違う主張をしていると見てよいかだ。
 実は、その判断は簡単である。
 本気なら、率先して提起すべき不人気政策があるからだ。それは、富裕高齢者への年金バラマキをやめること。(但し、捕捉は難しいから、簡単にできる訳ではない。)消費税増税をしないというのは、この層へのバラマキでもある。この問題に触れないなら、それは見せ掛けの「小さな政府派」。「大きな政府派」の方がまとも。
 そして、もう一つはFTAの推進を最優先に考えているかだ。

 こんな話をお読みになればわかると思うが、「超大きな政府派v.s.大きな政府派」というとんでもない政治がはびこっているのは、バラマキ期待の層だらけなので、政党としては打つ手無しというにすぎない。
 自民党政府が、実情をできる限り伝えない方針で来たツケ。政治は黙っておまかせ下さいスタイルだったからここまできてしまったのである。野党になったのだから、そろそろふんぎりをつけ動くべき時だと思うが。


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