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2010.10.26
 
 

雑感: 衆院補選前の政党支持率を眺めて…

衆院補選は予想通り。
 10月24日の衆院北海道5区補欠選挙はさっぱり盛り上がらなかったそうである。政権党が「世代交代」をアピールするだけなのだから、(1)有権者の関心をひきつけることができたら奇跡に近い。
 もっとも、長らく問題をおこしてきた自民党が「クリーン」をスローガンにしたというのだから、盛り下がらざるを得まい。結局のところ、今まで通り一票お願いしますという古典的なドブ板選挙で勝負がつくことになる。こうなれば、なんの魅力もなくなった民主党に投票するのは、コア支持層だけ。大敗は当たり前。

 尚、有権者調査によれば、選挙で重視する政策や問題は、社会保障と景気・雇用という状況。(2)
 にもかかわらず、「世代交代」v.s.「クリーン」が争点だというのだから、ほとんど意味がない選挙と言ってよいだろう。ただ、民主党と自民党、そしてマスコミだけが、国政の支持を反映する象徴的な選挙ということで大騒ぎしているだけにすぎまい。まあ、地方選挙の前哨戦といったところが実態だろう。

政党支持率はほとんど動かない。
〜 政党支持率の推移 〜
【時事世論調査】(3)
民 主自 民みんな公 明3 野党
合計
2010年
10月
 
20.0%
 
14.7%
 
2.0%
 
3.3%
 
20.0%
9月20.6%15.4%2.8%4.0%22.2%
8月20.0%14.3%4.9%3.5%22.7%
7月18.0%16.2%5.1%3.9%25.2%
6月20.0%13.2%2.1%4.5%19.8%
2009年
10月
U
29.4%
U
17.7%
U
U
3.5%
U
21.2%
 と言った見方をしたのは、当て推量という訳ではなく、この10月の政党支持率が発表され、この一年の変化が見れるようになったから。

 与党の民主党の支持率は、初の政権交代ということで、全国的に昂揚していた時期は例外的に高い。しかし、その後の支持率はほぼ20%というところ。
 20%という絶対値に関心を持っている訳ではない。この間、内閣支持率は大きく変動したのに、この数字はたいして変わらないこと が世情を示していると思うだけのこと。
 支持率がたいしてかわらないのだから、首を挿げ替えて内閣支持率が上がればそれでOKとなる訳である。

 野党にしても、自民+みんな+公明の3党支持率を合算すると、みんなの党支持が上昇した時期を除けば、これまた、ずっと20%程度。両者はまったく互角である。

 この数字は象徴的と言えよう。
 民主党は主義主張がバラバラのよせ集まり。政策課題が一致している訳ではない。小選挙区制なので、とりあえず、政権打倒という目標が一致して集まっているだけ。自民党ではどうにもならないから、ゴチャゴチャな層が大同団結という訳。その支持者が有権者の約2割いるということ。

 長期政権を担ってきた自民党は、国粋的な方向を志向する層が外れ、一部の自由主義的傾向が強い議員が脱党したため、リベラルなイメージが生まれ、内部対立は減少したが、お蔭で支持率はほぼ15%。民主党との差5%が詰まる気配は全く感じられない。

自民党が“真面目に”取り組んだところで流れは変わらないのでは。
 従って、自民党が政権奪回といくら声高に叫んだところで、今の状態では常識的に考えれば無理だろう。課題一致もできかねる与党への批判を強めて民主党内紛を期待する古典的な政治屋も散見されるが、小選挙区制度下で政党が分裂するとしたら、普通は野党であって、与党ではない。
 それに、野合の民主党に対抗するには、もともと主要課題が異なる3党が連立協定を組む必要があり、そのゴチャゴチャ度はほとんど変わりない。

 だいたい、100v.s.75というのは決定的な力量差である。票の重みの違いで実際より多い議員数を獲得できるので、力がまだまだあると誤解しているのではないか。

 そう思うのは、若くなったリーダー層が支持回復を目指して“真面目に”取り組んでいるから。

 “先日の参院予算委員会の質疑を通じて、確信した。この内閣は、急速に国民の信頼を失う、と。
  参院で粘り強く「政策の矛盾」を突いていけば、内閣支持率の下落は止まらないだろう。
  「支持と不支持」が逆転するのは、時間の問題だ。 
 民主党の政権交代の原動力になったのは、メディアの後押しだった。
  それだけに、民主党政権はメディアの論調や世論の状況に過敏に反応する。
  なにしろ、参院選挙の直前に、就任して1年も経っていない現職総理を
  「国民の評判が悪くて選挙を戦えない」という理由で(なりふり構わず)交代させたのだ。
  世論調査(=内閣支持率)が落ち込めば、菅内閣は必ず動揺する。内部対立も加速する。
  ここから腰を据えて、政府与党の弱点を突いていけるかどうか?
  野党として、最大の勝負どころだ。”(4)


 内閣支持率と政党支持率は連動していないのである。もちろん、支持政党無し層が野党を支持する率は高まるが、それは本当の支持ではなく一過性。そんな状態で解散に踏み切る政治家はどうかしている。
 マスコミの意向に沿って首の挿げ替えを図るだけ。野党はそれを手をこまねいて見る以上のことはできまい。

 なんといっても、一番の問題は、未だに“党改革”と言っている点。

 “明日から臨時国会が始まる。正念場なのは民主党だけではない。
  自民党にとってもこの国会で成果が上がらなければ厳しい局面が待っている。
  自民党に過去を振り返っている時間はない。
  参議院では進み始めているが、抜本的な党改革を行って、再スタートしなくてはならない。”(5)


有権者の意向とは“昔に戻せ”だと思うが。
    その意識を変えようという気がないなら、どうにもなるまい。

 それはそうなのだが、現状認識が間違ってはいないか。
 自民党執行部の発言を見てみよう。

 “現在の民主党政府の大臣と対峙させ、
  やはり自民党のほうがよいと有権者に実感していただかなくては
  自民党に対する支持が回復するはずもありません。(6)


 先の支持率のデータでわかる流れを感じているからこその動きのようだ。当然の対処策ということなのだろう。

 “民主党を支持していた方々が無党派層に流れる。
  そこから他の政党に支持に向かうのか、それとも無党派のまま留まるのか、また与党に戻るのか。
  そういうことをしっかりと見ていかなければならないと考えています。”(7)


 まあ、政治屋稼業でなく、政治家として動こうという自負を感じるからその点では評価したくなるが、これではどうにもなるまい。
 稚拙な動きや政治屋的仕掛けが目立つ与党よりは、優秀な人材を揃えているという点をきわだたせたところで、たいした意味は無いと考えるからである。

 何が言いたいかおわかりだろうか。
 政党支持率の読み方を間違えないこと。これに尽きる。・・・有権者は、自民党政治ではどうにもならないと考えているから、民主党支持者が増えたのである。
 早い話、大多数は、自民党政権下での、経済好調・生活水準向上の時代に戻せというにすぎない。自民党が党内改革でクリーンにしたところで、あの時代がとり戻せそうな感じがするかで、支持率が決まる。自民党だと、生活が悪くなりそうだから、他の政党にやらせろというだけの話である。
 ないものねだりに、どう対応すうのか問われているということ。

 当たり前だが、福祉・社会保障の充実と、雇用の流動化を止める方向に進める民主党型政治では、経済が活性化する訳がない。しかし、それでも税金をバラ撒いてくれる方が有り難いと考える人は少なくない。換言すれば、自民党政権で生活がよくなるとは思えないからである。
(表だって言わない人が多いが、民主党政権のバラマキ結構という話も結構耳にする。このままではどうにもならないことが、自民党より早くわかるからだ。できる限り時間をかける“改革”案を選ぶ、旧自民党型の政治手法はいい加減にして欲しいということ。安穏とした生活を保障する力はとうに失っており、その現実を伝えるどころか隠蔽する政治を止めさせるには、民主党のバラマキしかないというのである。)

 こんな状況で、党内改革を進めるとか、与党より優れた人がいることを示すことで支持者を増やそうという施策にどんな意味があるのか。
 もしも、このような政治しかできないなら、日本はどうにもならない。
 政治家としてすべきことは、痛みを伴う抜本的な変革しか方策が残っていないことを率直に語り、政権奪取にかけるべきではないのか。そうでないなら、単なる権力闘争巧者の政治屋でしかない。
 そんなことをしたら、即支持率低下を意味するからできないというなら、政治家の能力が無いというだけのこと。税金バラマキだけで食べている地方の既得権益層と心中するつもりなら別だが。

--- 2010年10月15日付けの時事世論調査-内閣支持率の結果 ---
支持者合計・・・39.2%
  「リーダーシップがある」から支持 1.2%
  「首相を信頼する」から支持 8.8%・・・菅首相支持者は10.0%ということ。民主党支持者の丁度半数に当たる。
  「誰でも同じ」だから支持 6.4%
  「他に適当な人がいない」から支持 19.6%
  その他の理由で支持 3.2%
不支持者合計・・・39.2%
その他・・・21.6%
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_cabinet-support-cgraph

 --- 参照 ---
(1) 穴井雄治: “与党が補選で問うものは”読売新聞 [2010年10月19日]
   http://www.yomiuri.co.jp/column/politics/20101019-OYT8T00320.htm?from=navlc
(2) “社会保障を重視58% 本社世論調査”北海道新聞 [2010年10月18日]
   http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/255937.html
(3) http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_politics-support-pgraph
   http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_politics-support-pgraph-past
(4) “仙谷官房長官、答弁のウソ” blog 山本一太の「気分はいつも直滑降」[2010年10月18日:パート2]
   http://ichita.blog.so-net.ne.jp/2010-10-18-1
(5) “9月30日(木)【日記:過去を捨てて再スタート】” blog 世耕日記 [2010年10月1日]
   http://blog.goo.ne.jp/newseko/e/9712251878ada6d4db2daaf178bbf0a7
(6) “10月12日の予算委員会” 石破茂オフィシャルブログ [2010年10月14日]
   http://ishiba-shigeru.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/1012-1750.html
(7) “予算委員会終了後 石原伸晃幹事長記者会見” 自民党 [2010年10月12日]
   http://www.jimin.jp/jimin/kanjicyo/2210/221012b.html


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