→表紙 | 2013.12.7 | |
| イランとの暫定合意は画期的…イラン核問題暫定合意は歓迎すべきこと、・・・と考える人は思ったほど多くないようだ。米国と同盟関係にあるとされるサウジアラビアやイスラエルは、オバマ政権からどのような説明を受けようと、納得感ゼロだろう。 まあ、こうなったのは、これらの国々が愚かだったというにすぎまい。戦争と、永久的経済封鎖以外の選上肢は無いという態度を貫き通してきたから、どうにもならなくなってしまった訳である。 この先、一体どうするつもりかネ、ということになろう。世界の流れを読む能力ゼロだし、様々なシナリオに対応できる柔軟性も持ち合わせていなかった訳だ。(日本にとっては、まさに、他山の石と言えよう。) もともと、アラブの宗教独裁国は、欧米の民主主義国家とは、文化的にも倫理的にも水と油。単に、実利上の都合で同盟関係的状況が続いていたに過ぎない。ところが、サウジ原油のお客様は全く違う国々でしかなくなっていた訳であり、引き続き従前同様に重視する姿勢を続ける筈と考える方がどうかしているといえよう。(カネのバラマキ先を間違ったということでもあろう。) それに、比較すれば、イランの市場は明らかに魅力的。しかも、そこにはまっさらな原油利権も。そんなビジネスチャンスをちらつかされれば、ソリャ、そちらに流れるのは当たり前である。 しかし、なんといっても重要なのは、イランのシーア派宗教最高指導者が政府の外交自由度を大幅に認めた点。政策的大転換を図ったのは間違いない。こうなれば、他のアラブの宗教独裁国家より、ビジネス上でも政治的にも、親近感では上位に映るのは間違いないところ。その上、イランは、スンニ派主体の無国籍イスラム原理主義を目の敵にしており、テロ抑止の観点では、サウジアラビアよりずっと安全牌と見なされておかしくない。 ただ、このことは、今迄、米国が築いてきた中東外交の枠組みの崩壊を意味していようう。歴史的な転回点と見てよいかも。 その結果どうなるかは、未だ判然としていない。そのため、不安は残っているが、この流れは出来上がってしまったようである。 もちろん残っている問題は小さなものではない。 サウジアラビアがイランを信用することは金輪際なさそうだから。常識的に考えれば、イラン核武装に供えた動きを始めることになろう。手っ取り早いのはカネをばら撒いてパキスタンから核を入手する方策。この可能性はかなり高そう。それが、中東全域にどのような影響を与えるかはよくわからないが、リスクが高まるのは間違いない。 イスラエルに至っては、はなから、イランとの交渉など時間の無駄という主張をしていたから、今後の動きは要注意であろう。単独攻撃ありはブラフではないかも知れぬし。なにせ、戦闘爆撃機、弾道ミサイル、原子力潜水艦といった重層的な軍備を抱えているのだから。 従って、この暫定合意で、地域の安定は大きく損なわれたという見方もあながち間違っているとも言えない。 しかしながら、大所高所から眺めれば、地域安定化に向かった大きな一歩と見るのが妥当なところ。 繰り返すが、画期的なのは、宗教的最高指導者が外交の自由度を認めたこと。これこそ正真正銘の「アラブの春」である。もっとも、この先も続く保証は無いが。どもあれ、この機会を活かして、それを永続的に深化させる取り組みをしないと、・・・。 イランとはアラブ国家ではなく、あくまでもペルシア国家。繰り返すが、無国籍的原理主義者の勢力とは水と油である。その点で、サウジアラビアとは全く違う。先進国の民主主義制度との親和性では、本来はこちらの方が高い筈である。 従って、上手くことが運べば、イラクとシリアの内乱も収まる方向に進むかも知れない。それに賭けるののも悪くない手だと思う。 その逆は、中東大混乱への道かも。 なにせ、シーア派にとっては、イラクとシリアは宗教上切りようがない地なのだから。それこそ、命をかけて守るべき場所である。そんな地域に非イスラム諸国が手を突っ込むのはよした方がよかろう。 と言っても、現状は逆なのである。その地の混乱を大いに喜ぶ反土着イスラム原理主義武装勢力や、油田が安泰なら政治的混乱は有り難い話と考える人達だらけだからだ。それが、現実世界というもの。 (ご参考) ***サウジアラビアはMuhammadの聖地を抱える。*** ○マスジド・ハラーム@メッカ/Makkah ○預言者のモスク+クバー モスク@メディナ/Medina ***シリアとイラクはシーア派の聖地を抱える。*** ○イマーム・アリ モスク@ナジャフ/Najaf → Imam Ali Holy Shrine official website ○イマーム・フセイン廟(モスク)@カルバラ/Karbala → In pictures: Pilgrims in Karbala BBC ○サイダ・ゼイナブ廟(モスク)@ダマスカス/Damascus → Sayyidah Zaynab Mosque Syria 2011 by Joel Bautista 2011/12/26 YouTube ***系譜*** Muhammad │ [娘]Fatimah=[義息子・従兄弟]Ali │ └"Sayyida(Lady)" Zaynab bint Ali ├Hasan ibn Ali └Husayn ibn Ali 政治への発言の目次へ>>> 表紙へ>>> |
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