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2014.1.15
 
 

日米関係が心配…

首都ワシントンでの自民党議員団の記者会見(10日)の報道を眺めてみたが、発言の一部をママ引用しているだけ。周辺取材やコメントの類を欠いている。その後、なんらかの解説記事が出そうなものだが、なかなか見つからない。
外交における発言は、一般に恣意的なもの。この手の記事だけ読んで終わらすのでは、状況判断を誤りかねないのではなかろうか。
と言うことで、書いておきたくなった。

発言は、以下のようなもの。・・・
共同通信の引用記事だと、"安倍晋三首相の靖国神社参拝について、米政府当局者や連邦議員らが「それなりに首相の真意を理解している」との認識を示した。"
日経は「理解を得られた」で、WSJ日本版は「好意的に受け止めてもらったと思う」と紹介。

どんな会談が設定されたのか、眺めて見よう。

先ずは、訪米メンバー。・・・
超党派の日米国会議員連盟訪米とされているが、安倍政権の代理としての訪米と見られて当然の編成。
 ・日米国会議員連盟の中曽根弘文会長
  (元外務大臣、元自民党参議院議員会長)
 ・塩崎恭久政調会長代理
  (第一次安倍内閣官房長官)
 ・小坂憲次参議院憲法審査会会長
  (元自民党参議院幹事長、元文部科学相)

だが、常識的には、成果が上がったとは言い難い。・・・
オバマ米大統領の訪日は「予定通り4月の印象を受けた」とのことだからだ。
おそらく、4月の会談を"検討している"のは確かとの返答があっただけだろう。このレベルのメンバーがわざわざ訪米すれば、「予定に入れるべく最終調整中」と答えてもよさそうな時期だが、そうならなかったのである。
コリャ、まずくないか。

会談相手の設定にも注視する必要があろう。報道によれば、以下の方々。・・・
共和党-上院議員:マケイン、マコウスキー、エイヨット
民主党-下院議員:カストロ、ハナブサ
政府:ラッセル国務次官補(東アジア・太平洋担当)
元高官:キャンベル前国務次官補、アーミテージ元国務副長官

注目すべきは、米国政府の「代表」の人選である。
"重要な"同盟国間で齟齬が持ち上がったにもかかわらず、オバマ政権の出席者はなんと国務次官補。一応お会いだけはするとの姿勢を、「公的」に示したようにしか映らない。
「元高官」の出席やその発言は政府の姿勢を反映したものではないから、これこそが安倍政権への対応を表わしていると考えてよいのでは。
つまり、安倍政権には最低の処遇で対応すると、中国にメッセージを発したことになる。
コリャたまらぬ。

こうなると、TPP協議も前途多難かも。
もともと、米国の目論見など自明。・・・国家資本主義的な産業育成と独自の貿易ルールで、自国だけの利益を追求する中国の体質を変えるには、TPPは使えるというにすぎまい。すでにその効果はあがっており、上海自由貿易特区化が促進されている。ここらあたりまでは、結構な話だったが、靖国問題での日中対立が経済に持ち込まれたりすれば、TPP協議の意義は失われかねまい。日本市場で具体性あるメリットが得られないとなると、頓挫もありえそう。

但し、このミッションは、日本政府が送り出したものではないから、そうそう気にする必要はなかろうという見方もできなくはない。超党派で構成される日米国会議員連盟の訪米とされているからだ。
確かに、その線での出席者が含まれている。この手の会合には常に登壇するアーミテージ元国務副長官に加え、故イノウエ議員以来のハワイ州選出議員、日本との貿易が最重要なアラスカ州選出議員が揃っているからだ。従って、いつもながらとの印象も。(ハワイ州選出コリーン・若子・ハナブサ議員は4世代前が日本人。リーサ・マーカウスキー議員はアラスカ州選出の二代目。ブッシュ政権では東アジア太平洋委員会委員長だった。)
・・・日本からすれば、重要な日本通の方々だが、この方々の米国内での影響力はすでに限定的では。従って、靖国問題に関しては、お茶を濁した発言で終始するにすぎまい。この問題に手をつけたところで、どうにもならないのを一番よく知っているからだ。そんな議論より、日本経済を早くなんとかしろヨとなるのではなかろうか。

他の議員では、ワキーン・カストロ議員は外交畑とはいうものの、"Terrorism, Nonproliferation, and Trade"のメンバー。一方、ケリー・エイヨット議員は尖閣諸島が日米安保第5条の適用対象とする上院での議案通過に貢献した方のようだ。
ジョン・マケイン議員は誰でもが知る大物だが、その立場は素人から見ればネオコン的。反独裁、かつ、「自由主義の輪」重視外交論者と見てよいのでは。今や米国は内向きで、海外派兵に余計なカネを使うな雰囲気蔓延の状態だから、議会に影響力を持つとは思えない。それに、米国議員達が突然にして靖国参拝を問題無しとみなす筈もなかろう。(もともと、国連の敵国条項抹消方針を打ち出す気がなさような人達なのだから。)

オバマ政権の姿勢は、言辞上では、「日米同盟」は最重要で、両国は友人関係となってはいるものの、プラグマティズムならぬ、ご都合主義である点に注意を払うべきだろう。自由主義擁護のための同盟関係にあると勝手に解釈しない方がよい。おそらく、民主主義や人権に縁遠いサウジアラビアとの同盟/友人関係とたいした違いは無い位置づけと考えておいた方が安全である。
ともあれ、どう見たところで、米国の大半の政治家が日本に期待しているのは、あくまでも経済とカネ(駐留費用)。しかしながら、間違えていけないのは、中国経済の方がより重要という点。
従って、それを揺るがしかねない安倍政権の姿勢を容認するなど考えにくかろう。ここから、日米関係に齟齬が生まれないようにして欲しいものである。

アベノミクスとは、後が無いハイリスク路線。にもかかわらず、国内産業の新陳代謝抑制を続けるつもりだし、バラマキも抑える気も無いのである。
米国経済繁栄の波に乗せてもらわない限りどうにもならないのは明らかであり、日米関係だけは問題なきようにしてもらわないと。

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