2014.2.2

一般教書演説の記事を読んで…

今回の一般教書演説とは一体なんなのかネ。
要旨や解説記事が出揃ったが、素人にはどうもよくわからん。だが、原文を読む気はまったくおこらない。時間の無駄という気がするからだが。

ただ、鮮明になった点はある。
グローバルな枠組みの提起を全くしなかったこと。なにを考えているのか、さっぱりわからぬ。・・・まあ、自称プラグマティストとしては、マドルスルーで行くしかないとの宣言というところか。どうせ構想を語ったところで、議会が反旗を翻すだろうし。世界の話で、選挙で優位に立てる訳でもなく、無駄話と考えたのだろう。
このことは、「すべてを国内目線で行こう」との姿勢を示したことに他ならない。もともとそういう体質の国民が多そうであるが、ついに大統領自らその方向で政治を進めることになりそう。
同盟国にとってはツライ時代の到来か。

そうそう、予想通りの展開も。
外交において、アジアではなく、中東最優先という方針。
アジア重視姿勢をかいま見せたクリントンとゲーツ両長官を切ったのはそういうことか。(この人事の結果、オバマ政権の体質がなり明らかになってきた。)
しかし、問題はその「優先」の内実である。グローバルな枠組という土台なき関与で一体どうしようというのか。安全保障に関する原則論無しの和平交渉ってなんなのになりかねまい。しかも、米国が責任を持って、率先して問題に対処する訳でもなさそう。
要するに、パワーバランスを考慮せず、その時々の情勢で鵺的に動くだけ。利権喪失が無く、米国の負担軽減の流れに乗るなら、いかようにもという安直そのもの。

当然ながら、こんなことをすれば、米国の存在感が薄れていくだけ。その結果、様々な勢力が勝手勝手に、自分の都合の良い方向を目指し一斉に蠢き始めることになる。
一般に、この状態を不安定化と呼ぶが、それをレトリックで安定化にすり替えるのがオバマ流政治ということかも。

シリア和平会議など典型例では。
すでに、会議は踊る状態だと思われる。これは、中東の全面的宗教戦争化への道を切り拓く第一歩でしかなかろう。この問題は、シリア-イラク-イラン-ロシア枢軸 v.s. サウジアラビアの戦い。米国が手を引く姿勢を見せれば、戦士の人的供給源にはことかかないから、スンニ派原理主義勢力にさらなる莫大なカネが流れ込むことになる。
それは、中東原油安定供給を脅かしかねないし、先進国へのテロ輸出激増を意味するかも。
コリャ、たまらぬ。

この姿勢を眺めていれば、東アジアの安全保障問題放置はまず間違いないところ。
実際、演説でも北朝鮮の核問題は無視されたようだし。前々から、実質的に中国へ丸投げだった訳だが、ついに正式にその姿勢を示したことになる。アジアの安全保障を支える役割からは早く降りたいので、自分達でどうするか考えろということのようだ。
ソリャ無理筋だと思うが。

コレ、日本にとっては、厄介な話である。早晩、同盟国とは名ばかりになることを意味するからだ。しかも、それに対応可能な国内体制が整っている訳でもない。
換言すれば、この先、米国からなにをされるかわかったものではないということ。日米の信頼関係なるものは砂上の楼閣になっていく可能性があろう。問題はそのスピードである。日本は動きが鈍いから、齟齬が生まれると取り返しがつかなくなる。その兆候が表れていないことを祈るしかない。
例えば、台湾を誘導して、日本孤立化を図る可能性も十分あり得よう。台湾防衛もなし崩し的に消し去りたいのだから一石二鳥だし。これを背景に、日米首脳会談実施カードで、中間選挙にプラスになる「成果」を、日本から獲得しようとの算段が頭に浮かばない筈が無いと思うが。日本政府に、米国民にうけそうな玉が無いのはお見通しであり、あとは力づくて成果をもぎ取るしか手はないのは明らか。
しかも、中東政策を見てわかるように、長期的視野もなければ、全体観も無い人達の政府だ。そのボスに構想がなければどうなるかは知れたこと。
まあ、日本にとっては、とんでもない大統領と見ておいた方がよさそう。日米関係悪化を招かねばよいが

NHKは、演説前から、「TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉妥結を急ぐ考えを示すものとみられます。」と解説していたが、はたしてそう見るべきかも大いなる疑問。・・・議会から貿易交渉を一任してもらい(ファストトラック)、スムースに進めたいとの一般論しか述べていないからだ。
と言うのは、もともと、TPPとは、関税や数量規制による障壁を減らすための制度ではなく、貿易における政府の恣意的な干渉を無くす仕掛け作りだからだ。グローバル企業が、各国政治の動きでビジネスをメタメタにされるリスクを下げようという取り組みである。
今の東アジアの政治状況を考えれば、どう考えても、TPPを急ぐ意味は薄かろう。しかも、日本との「単なる」交渉で、雇用増進や輸出拡大が見込めるとも思えない。有無を言わさずに、日本から成果をもぎ取るには、孤立化政策は一番効果的であり、それを採用しない歯止めはすでに消滅しているのでは。

総括すれば、結局のところ、演説前から報道されていた国内「経済問題」で一言発したというだけのものに終わったとなろうか。
社会格差の是正に向け中間層の底上げに注力すると語っただけで、他は刺身のツマ。メッセージ性が欠けているように思えるが、それは海外から見ているからで、「貧困との戦い」を続けるというだけで十分なのだろう。ただ、それは掛け声だけ。
賃金引き上げや移民制度改革をしたところで、流れが変わる訳ではなかろう。それに、議会共和党はこの手の話はお嫌いな訳で、まともに法案を通す力が無いから、手の打ちようもない。ともかく「頑張るゾ」という、日本でよく見かける態度に似てきた。

ついでながら、その「貧困との戦い」だが、グローバルに見れば、上手くやっていると評価してよいだろう。貧困から抜け出た人口は膨大だし、非先進国に中産階級が生まれたからだ。副作用に目をつぶれば、米国の政策は輝かしい成果をおさめたと言うべきである。
しかし、先進国では、この戦いでの勝者は欧州のみ。自由経済好みの米国と、規制経済好みの日本は、揃って敗者である。

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