表紙 目次 | 2014.3.29 クリミア問題の報道を眺めて…27日、国連総会でクリミア半島のロシア編入を認めないとの決議が採択された。賛成国の数は、どうやら過半数を超えた状況。NATOとその実質的同盟国が旗を振り、その影響下にある国々が賛成した図だから、そんなものだろうと感じる人も多かろう。(メンバー国数:193 賛成国:100) 間違えてならないのは、だからといって、決議案がロシアを名指しで批判するようなものだった訳ではないのである。全く逆で、極めて抑制された表現になっている。他国への軍事侵攻が行われたのだから、賛成国はもっと多くてもおかしくないと思うが、そうはいかなかったのである。 従って、こうした状況を、各ジャーナリズムがどの様に伝えているかご覧になることをお勧めしたい。 それによって、彼らが世界の動きをどう見ているかがわかってくるからだ。滅多にないチャンスと言えよう。 そうそう、決議に反対したのは11ヶ国。これも、どの国を記事に記載するかで記者の立ち位置が見えてくる。 と言うことで、先ずは、反対した国をお伝えしておこう。 ロシアは勿論のことだが、案の定、シリアが入る。そして想像通り、北朝鮮も。ベネズエラに率いられた米州の反米勢力が反対姿勢を見せるのもいつも通り。(キューバ、ボリビア、ニカラグア)これから原油価格が低迷し始める筈であり、そんな強がりを続けていて大丈夫なのか、心配だが、余計なお世話か。それ以外は、スーダン、ジンバブエ、アルメニア、ベラルーシである。 余程の事情がない限り、こうした国々と一緒に行動はしたくはなかろうから、まあ世界の異端勢力だけがロシアを支持したというだけのこと。 要するに、この評決の特徴とは、サウジアラビア、メキシコ、インドネシアは賛成したものの、新興諸国はおしなべて棄権した点にある。米国の指導力はその程度でしかないことが明らかになってしまった訳である。 つまり、中、印、ブラジル、南アフリカに合わせるか如く、58ヶ国もが大挙して棄権に回ったということ。ロシアがG8よりG20を重視しているのは、こういうところもある。お仲間意識がある訳だ。 もっとも、もともと、この手の問題だと棄権する以外に手がない国々もある。言うまでもないが、カザフスタン、アフガニスタン、ウズベキスタン、それにモンゴルも入ってこようか。トルクメニスタン、タジキスタン、キルギスタンに至っては欠席である。地理的に離れてはいるが、ベトナム、ミャンマー、カンボジアも同様な立場だろう。ラオスは欠席とくる。 南アジアも同じこと。インドとパキスタンが棄権したから、バングラデッシュ、スリランカ、ネパールも同調して当たり前。賛成に回るのはネパールとインドの圧力に抗する必要があるブータンと欧米に顔が向いているモルジブ。 米国のお膝元である中南米諸国は、フォークランドで住民投票を行った英国の姿勢を覚えているから、それとクリミヤのどこが違うかとの理屈もあり、賛成派が限られるのは致し方ない。メキシコ、コロンビア、チリに、ハイチ、バハマといったところ。ブラジル、アルゼンチンの2大国に右に倣えで、ウルグアイ、パラグアイ、ジャマイカ、エルサルバドル、ドミニカと棄権だらけ。 気になるのは、アラブからペルシアにかけて。 先ず欠席だが、イラン、イエメン、オマーン、モロッコ、レバノン、アラブ首長国連邦。ガルフも分裂含みであり、統一歩調はとれなくなっている訳だ。そうそう、イスラエルも。 イラク、エジプト、アルジェリアといった大国はもちろんのこと、問題を抱える、南スーダン、エチオピア、マリも棄権である。 こんな話など話題にもしたくないと思われる、セルビア、ボスニアヘルツゴビナ、チモールが欠席するのもまあ当然だろう。アフリカや太平洋島嶼の国も欠席が目立つがまあこの辺りは陣取り合戦に乗りやすいから、ありそうなこと。 ついでながら、日本の政治家の発言も、どういう意味なのかよくよく吟味する必要があろう。・・・ 麻生太郎副総理兼財務相(25日の記者会見): 「キエフ公国がロシアのもとだ。 キエフがクリミア半島とわかれて ヨーロッパに行ってしまうみたいな話は、 ロシアとしては、 日本でいえば宮崎県が独立して 高天原がいなくなるみたいな話なのではないか」 「黒海艦隊の租借を考えたらクリミアは絶対だろうが、 キエフもけっこう絶対なのではないか」 そりゃそうだが、一旦こんな話を表立って始めたら、欧州全域が大騒動。バルカン半島など収拾がつかなくなろう。 火薬庫に火がついてしまったら、消すことはできない。にもかかわらず、全てを吹っ飛ばす覚悟無しに手を出したのが米国。こまったもの。 安倍総理は、EU、米国を越える巨額な額のウクライナ支援を表明したが、自由主義国ギルドへの冥加金以外のなにものでもない。 どうせ、笊に水だからだ。ロシアから巨額のエネルギー支援を受けたところで、経済的にはどん底のまま。政権が代わり、今度は日米欧から巻き上げようというだけのこと。 米国も、アフガニスタンの腐敗政権への援助が無駄だったことに気づかされた筈だが、それに懲りたかと思いきや、又、同じことの繰り返し。 これにはほとほとこまったものだが、大国とはそういうものか。ただ、他の大国よりは、ずっとましなことは間違いない。しかし、馬鹿げた施策に付き合わされるのだから、たまったものではない。よくよく注意しないと。 (source) Backing Ukraine’s territorial integrity, UN Assembly declares Crimea referendum invalid 27 March 2014 UN News Center 政治への発言の目次へ>>> 表紙へ>>> (C) 2014 RandDManagement.com | |