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2014.4.14

オバマ政権の動きは要注意…

ワシントンで開催されたG20の報道を眺めていると、G7とは一体なんなのか、再定義が必要と感じられた方も少なくなかろう。

下手をすれば、世界経済に大きな影響が出るというのに、ウクライナの地政学的、あるいはクリミア問題には一切触れていないことが、なんといっても一番の特徴である。そのかわり、ロシアも含めて、全会一致でウクライナ支援に動こうとの方針が採択されたのである。
米国落日の図そのものでは。

と言うのは、オバマ大統領は、ロシアがもう一歩踏み込めばG7がさらなる制裁を科すことになると発言していたにもかかわらず、G20では、そんな話はなんの関心も集めなかったことを示しているからだ。

しかも、議長国のオーストラリア財務相は、最大の問題はIMF改革と明言。つまり、米国批判一色だったことになる。要するに、米国の議会批准店晒しのママ状態にはもう堪えられないと衆議一致したことを示している。

米国覇権の時代は今いずこ。

言い換えれば、G7も、ついに世界の少数派に転落となる。
もともと、世界経済の流れで協調行動をとりたいなら、G7+中国にならねば、お話にならない。それなら、政治体制上の価値観共有ということでのグループかといえば、はなはだ疑問。誰が考えても、ロシアはソ連の反民主主義文化を踏襲せざるを得ない上に、国際法無視の歴史を誇るような異質な国家。これをあえてメンバーに加えるというのだから。結局のところ、お金儲けとエネルギー資源開放が目的で作られたG8が破綻をきたしただけのこと。

まあ、外交とは、そんな反省をする場ではないが、問題はそんなことを意に介さずの米国政府の姿勢である。失敗に懲りずに同じようなことを繰り返すからだ。

このところのオバマ大統領に関する報道を眺めていると、またゾロ「表現の自由と自由市場」賞賛ときたからウンザリ。それを国際的に維持している仕組みの重要性を指摘する訳で、単なる言葉だけ。G7とその動きに付随する国々で、ロシア制裁を進めるべしと叫んでいるに過ぎまい。
NATO軍の配備拡大による、新たな冷戦開始以外、なにももたらさないことがわかっていても、それ以外に策が思い浮かばないのだろう。
それは、欧州の小国にとっては、当座の安心感をもたらすだけ。欧州の政治的統合は逆にさらに遠のく訳で、欧州の国際的地位の没落が加速されることを意味しよう。そのどこが嬉しいのかはなはだ疑問。

そう考えれば、いくらレトリック的な「大義」を語ろうが、米国の動機は不純そのものと見なさざるを得まい。
そもそも、ウクライナとは、どうみても指導的階層が腐敗している国。にもかかわらず、それを放置し、いかにも民主的国家樹立の動きが生まれているように描くことで、腐敗しきった親ロシア政権の転覆を支援したにすぎない。こんなことをすれば、事態悪化以外にありえないのは自明。そんな方針のどこが嬉しいのか、さっぱりわからぬ。

もっとも、そう見てしまうのは、米国指導層が「まとも」との前提あっての話。「国際的視野」で、米国政府の動きを判断するからだろう。

ところが、目線を低くして、そんな考え方とは無縁な人達の政権と考えると、途端に合点がいく。
要するに、米国の国際政治姿勢とは、100%国内政治の刺身のツマと見ればよいのである。
国内政治で主導権を握るため、「ご都合主義的」に、その場限りの道具として、国際問題に対処するということ。
しかも、もともと歴史が浅い国家だから、海外諸国が抱える伝統に根差す政治的風土をことごとく無視しても全く気にならない。米国の場合はこれが簡単にできるのである。その結果が、訳のわからなさ。

G20の結果はそのツケ。19ヶ国は、米国国内政治がどうなるかを見守るしかなく、それに辟易したということだろう。
と言ったところで、今後、オバマ大統領が国内でリーダーシップを発揮できるとも思えない。それは、個人の資質というより、国の土台がそうなってしまったから、如何ともしがたいのだろう。宗教人口分布から見て、民主党の大統領が続くのは間違いないが、議会選挙は州毎だからそうはいくまい。従って、国際問題を国内政争のタネに使う状況が変わる可能性は極めて低い。当然ながら、オバマ政権は、国内で上手く立ち回るために、外交を100%活用する筈である。国際的観点とは、そのための屁理屈であり、本気度ゼロと見た方がよい。
なんといっても、ここが肝要。

オバマ大統領を国賓でお迎えするのは、実に結構な話だが、そのお土産をよく考えないと、とんでもないことにまきこまれかねないということ。
ただ、米国国内政治のまともな解説にお目にかかったこともないため、素人にはその辺りにどのようなリスクが含まれているのか全くわからない。ここは、玄人に頑張ってもらうしかないが、その能力に疑問を抱かざるを得ない人も散見されるので実に心配である。

なんといっても、時代の変わり目である。G20はそれをはっきり示してくれた。
米国政権には、下手にひっかけられないよう、十分用心しないと

(記事) G20はIMF改革遅延に「深く失望」、ウクライナめぐるリスクを注視 2014年 04月 12日 09:19 JST ロイター

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