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2014.5.10

Thomas Piketty旋風を耳にして…

Thomas Piketty氏のベストセラー書籍"Capital in the Twenty-First Century."は勿論のこと、著者の名前自体も全く知らなかった。

The Economistを眺めて、ようやく、フーンそうかネといった程度。
Mankiw教授がブログでコメントしているのを知ったので、流石にド素人でも気にかかるから眺めてみた訳である。
まあ、ホホーという以上でも以下でもなかったが。
   "First Thoughts on Piketty" [Friday, April 25, 2014]

当然ながら、学者というよりは、流行作りを楽しむジャーナリストのように映る、Paul Krugman先生も取り上げている。
   "The Piketty Panic" [APRIL 24, 2014]

案の定というか、相変わらずのハハハの一文だが。・・・
自由主義者の夢想する、「類稀なる個人的能力を活かすことができる」社会とは幻想に過ぎぬと指摘され、保守層は反論もできず、パニックっているとか。
マルクス主義者とのレッテル貼りしかできない無能さを示しているとの由。

どうかネ、この手の議論。

多分、政治的には、相続税を上げよという単純な話に落ち着くのではないか。
そうだとしたら、コリャ筋悪。そんなものに、たいした効果は期待できないからだ。

世の中、抜け道などいくらでもある。補足可能な「資産」は、様々なものに変わりうる。そんな施策で金持ち政治の状況が変わる筈がないし、中産階級が肥るような経済活動が盛んになる理由もなかろう。
ともあれ、増えた税収をバラ撒いたところで、経済構造が変わらないかぎりどうにもならないのである。そんな小手先の施策というか、再配分巨大化政策を矢鱈に嬉しがるのは、中産階級の小資産持ち。マルクス流に言えば、プチブル、小市民的感覚の人々である。当座は、この層にお金が回ってくるからでもある。そして、当然ながら、屁理屈が横行し、バラ撒き利権政治へと流れていく。こうなれば悪循環から抜け出られない。
そもそも、金持ち許せぬだけのスローガンの勢力に一旦牛耳られたりすれば、その挙句の果てがどうなるかはわかりきった話。
従って、小さな資産さえなき人達が、再配分の話など、端から信用していないのが普通。

今、我々が直面している問題とは、富が1%の人に握られているということではなかろう。それは結果でしかないからだ。・・・
先進国では、全面的に単純労働化が進んでおり、しかも、海外の低賃金労働者が担える部分は労働市場から消滅しつつある。従って、教育や訓練で、より高度な労働を提供することによって、より大きな価値を生み出すことができるというドグマが成り立たなくなってしまった。これはえらいことである。

持てる者が自動的に、より多くの富を得るようになってしまった、とも言えるからだ。換言すれば、「クラブ」に属さない家庭で育った子供は、一生うだつが上がらない時代の到来である。そんな流れができあがっている状態での相続税強化がどんな影響を与えそうか考えておく必要があろう。

おさえておくべきは、今から富の再配分を図ったところで、社会の仕組みが変わる訳ではないという点。
既存の仕組みで守られている層はさらにお気楽に生きていけるが、なにからも守られず、ほとんど資産もなく、フローのみで日々生活している層の生活は不安定のまま。こうなると、社会は分断される方向に進むかも。それは避けられない可能性は高い。

重要なのは、先進国で「まともな」雇用を生み出す新産業を立ち上げること。イノベーション創出と言い換えてもよいだろう。
これに関係する施策なら是非にもというところだが、そうでなければ、ほったらかしにした方がよい。余計なことに注力している時間は無い。

(The Economist)
<Buttonwood's notebook Financial markets> Savers and monetary policy Who are you calling a rentier? (blog by Buttonwood) May 7th 2014
<The Economist explains> Thomas Piketty's "Capital", summarised in four paragraphs (blog by R.A.) May 4th 2014
<Lexington> When facts are weapons May 3rd 2014
Piketty fever: Bigger than Marx May A wonky book on inequality becomes a blockbuster May 3rd 2014
Capitalism and its critics A modern Marx May 3rd 2014
<Charlemagne European politics> Thomas Piketty: Le French touch (blog by S.P.) Apr 28th 2014


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