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2014.6.7

気になるG7コミュニケ…

ロシア外しのG7宣言が出たので眺めてみた。
この時期、どのような問題を重視しているのかを知るには、これが最良のマテリアル。目を通してみて、普段のマスコミ報道の印象から想定したものとの違いを確認しておいた方がよかろう。

経済問題は皆無で、武力紛争に係ることばかりが19項目にまとめられている。網羅的であり、順番と記載分量が関心の程度を示すのだろう。

簡単にまとめるとこんなところか。・・・
ウクライナ
1. 選挙実施を歓迎
 ペトロ・ポロシェンコ次期大統領を歓迎、称賛
主権事項に対する干渉は許容不能
 法秩序回復措置は慎重な方法を奨励
 欧州安全保障協力機構の実質的な貢献を完全に支持
 憲法改正追求を奨励
3. ウクライナと協働する決意
 マクロ経済支援の迅速な支出を歓迎
 国際的ドナー調整メカニズムを支持
 ガス供給源多様化の取組を歓迎
4. ロシアによる主権領土への侵害を一致団結して非難
5. G7諸国による制裁決定を確認
6. チェルノブイリ原子力発電所の追加的努力と経費抑制を要求
シリア
7. アサド政権の残虐性を強く非難
 ジュネーブ・コミュニケ支持
 シリア国民連合・自由シリア軍の約束を歓迎
 露・中の国連安保理決議案への拒否権行使は遺憾
8. 難民流入負担に耐えている周辺諸国を支援
 流入している外国人戦闘員による脅威に対処
 化学剤の度重なる使用疑惑を深く懸念
9. リビア
 民主的なリビアを支持
  <マリ及び中央アフリカ>
10. [マリ]
 停戦合意歓迎 国連(MINUSMA)の努力を完全に支持
11. [中央アフリカ]
 フランス/EU派遣部隊と共に移行を支援 AU主導ミッション(MISCA)の役割を称賛
12. イラン
 核問題の外交的な解決への我々の強い決意を再確認
13. 北朝鮮
 核及び弾道ミサイル開発の継続を強く非難
14. 中東和平>
 米国の努力を全面的に支持
15. アフガニスタン
 アフガニスタン政府を引き続き支援
16. 海洋航行及び飛行
 東シナ海及び南シナ海での緊張を深く懸念 一方的な試みに反対
   <その他の問題>
17. [宗教を含む、人権と基本的自由の保護及び促進]
18. [テロ行為非難・・・ナイジェリアのボコ・ハラム]
19. [軍縮・不拡散問題が最優先事項の1つ]

注目すべきは、19項目の、ほとんど最後、16番目に記載されている<海洋航行及び飛行>。当然ながら、中国の一言もないが、あの国こそが問題というトーンには仕上がっている。

欧州にとっては無人島などどうでもよい話であり、日本だけが突出して関心高しの領土問題。にもかかわらず、よくここまで記載したものだと思う。
ただ、シリアやエジプトへの対処でわかったように、これこそがオバマ外交の特徴そのもの。このような表現にまで踏み切ったからといって、姿勢が転換しつつあると勝手に読むべきではなかろう。

当初、米国政府は、日本政府が領土問題に火をつけようとしたと見たきらいがある。それが、ようやくにして「国際法守れ」とだけは公言するようになったという状況では。
こういう問題は最初が肝心。
「火をつけるな」姿勢以上ではないことはお見通し。どのような文章にしようと、単なるレトリックとしてしか映るまい。
しかし、ここまでこぎつけたのだから、日本政府は外交力を十二分に発揮したといえよう。

だが、それこそが問題では。日本外交が、中国孤立化雰囲気醸成で領土問題での中国の強硬な姿勢を崩そうという方針に映るからだ。欧米にそんな気はゼロなのに、そのような努力をするのは無駄足では。「冷戦型」に戻そうというのも、どう見ても無理筋。経済を上手く回すためには、中国なしではやっていけないのに、欧米がそちらに振ることなど考えにくいからだ。もともと冷戦はソ蓮に対してであり、中ソ蜜月が終わった瞬間、中国は冷戦の対象ではなくなったのは明らか。
だからこそ、日本が米国の経済的進出の露払い役をさせられたと見るが。

米国にしても、欧州にしても、中国なしには経済はニッチもサッチも状態なのだから、日本の領土問題などどうでもよい話に決まっている。単に、中国に対して「動きを急ぐな」と言っているにすぎず、聴いてもらえなければ致し方なしで終わるだけのことではなかろうか。

例えば、TPPにしてもその目的は中国外しのブロック化ではなく、政府の干渉を減らすための貿易ルール作りにこそ意味がある。成立したら中国も加えていく道を探るべきもの。まあ、成立自体が危ういのが現実ではないかと思うが。・・・国内政治で力を失いつつあるオバマ政権にとっては、成果がでそうにないとなれば切ることになりかねまい。

そうそう、そもそも、「国際法」を遵守せよとは、強い国が弱い国に言う言葉。パワーバランスが崩れ始めている時に、そんな話をしたところでたいした意味はなかろう。この辺りの現状認識が重要では。

もともと、南シナ海での米軍のプレゼンスは無きに等しい。台湾にしても平和的統合方向で暗黙的合意がなされているとしか思えまい。しかも、北朝鮮問題は中国に丸投げとくる。つまり、東シナ海でも米軍はゆくゆくは引いていくということ。実質的になすがまま路線を採用しているのは間違いあるまい。単に、中国にはコトを急ぐなと言うだけで、それ以上ではなかろう。
米国政治の主流は、あくまでも中国との経済関係最優先派。産軍複合体時代は今は昔である。そうした潮流に乗るのがオバマ流プラグマティズムということ。
その流れを止めようとする算段は、リスクが大きすぎると思うが。

(source) 2014 G7ブリュッセル・サミット 首脳コミュニケ−外交政策 [平成26年6月4日] http://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page24_000290.html

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