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2014.6.20

集団的自衛権論議の前に…

いよいよ集団的自衛権行使へと一歩進むことが本決まりになったようだ。国会会期後も自公協議を続けるというのだから。

ケネディ駐日大使の日米国会議員連盟での発言を見ると、大勢はすでに決している感じがする。
集団的自衛権の重要な議論の結果を盛り込んだ、
 最新の日米防衛協力の指針
  =いわゆるガイドラインをまとめ、
 日米の同盟関係を近代化する必要がある


それにしても議論が低調なのが気にかかる。

賛成派も反対派も、いままでの体験によりかかっているだけに映るからでもある。ステレオタイプな賛成反対論だらけということ。これはいかにもまずい。
安全保障について、日本は上手くやってきたのは間違いない。しかし、その成功体験の延長線上で今後の進路を考えるのは避けるべきだと思うが。

今は、変化の節目。そんな時に慣性力のママ身をまかすのは、えらく危険である。問題は議論に時間をかけることではなく、現実を見据えること。現状認識が違っているのに、賛成反対の論議が成り立つものかね。

先ずは、「節目」感をしっかりとつかむこと。

例えば、米国政府は、稚拙なのか恣意的なのかはわからぬが、中東大戦争につながりかねない路線を歩んでいる。その結果、イラクでは、米国提供武器を略奪した反政府派が首府周辺への武力進攻を始めそうな状況。なにせ、オバマ政権は派兵せぬと公言しているのだから。内乱阻止には、米軍も加えた国連軍派兵しか道はなさそうだが、原油一大消費国にもかかわらず、日本だけはお断わりすることになろう。

そのためには、半世紀の流れを頭に入れておく必要がありそう。素人的には、以下のように描ける。

(1) 日米安全保障条約締結(1952)後

ほぼ、貿易関係に限定されていた模様。

もちろん、米国主導である。
 ・国内基地の有事利用可能体制構築が最優先事項
 ・自衛隊は米軍の作戦に組み込まれる仕組み
日本政府の姿勢は明瞭だった。
 ・経済復興最優先
 ・米軍依存で軽武装徹底
従って、日本政府は米国の要求に合わせることを旨とした。
 ・ソ連と極東で対峙する米軍布陣への協力
 ・資本蓄積に影響を与えない範囲での軍事力強化
反政府的な「国連依存」論は強かった。
しかし、自民党政権の進路はぶれなかった。
 ・国連依存は不確実性高すぎとの認識。
 ・なにはともあれ、米国との防衛協定締結ありき。
地域安全の責務は負うべきでないとの国論に従うということで、反安保勢力の攻勢をかわしたとも言える。

(2) ベトナム戦争後

70年代に入り、制度的に定常的外交協議開催のはこびに。

そこに、ベトナム戦争終結で、米軍再編。
米国政府は、日本政府に軍事力増強要請。
 ・自国防衛力構築要求。
  ・・・オホーツク海/シベリア沿岸(空)対応能力

(3) 1980年代

日本の経済力が急速に発展。

それ相応の対応が必要との米国政府要求。
 ・ベトナム戦争での後方基地提供程度では不足
 ・自衛隊の東アジア地域軍事バランス組み入れ
日本政府はできる限り応える方針。
 ・欧米支援可能な国力ありと判断
 ・日米共同作戦本格化(合同演習)
 ・ソ連対抗の「不沈空母化」姿勢

(4) 冷戦終結後

日本周辺領域での軍事同盟構築。

米国政府の要求拡大。
 ・カネだけ拠出姿勢からの脱却
 ・周辺有事以外でも軍事的協力不可欠
しかし、日本政府は従前の姿勢転換は無理と判断。
 ・レトリック的グローバルパートナーシップ構築
  (安保体制がアジア太平洋地域の平和と繁栄の肝)
ただ、安保体制の再定義には結びついた。
 ・限定的な戦乱対処ではなく、
    国家に直接打撃を与える事態を想定
 ・「周辺」の地理的定義から、事態定義に
 ・自衛隊の能力強化
   -防衛力の質的向上に邁進(長距離攻撃視点)
   -日米役務分担の明確化

(5) 米国内大規模テロ以後

世界的問題へ日米同盟として関与するようになった。

政治、経済、軍事のすべてを包括する同盟へ。
米国政府は自衛隊の軍隊化要求。
 ・グローバル・レベルでの軍事協力
 ・ミサイル防衛システムの一体化
 ・日本の軍事大国化
「アーミテージ・レポート」の共有化
 ・有事法制整備
 ・集団的自衛権行使
 ・国連平和維持軍参加

(6) 世界金融危機後

米国の経済力が急激に落ち込んだ。

米国のGDPシェアが5割という時代は夢物語の世界であり、よくてどうやら2割の時代である。世界のどこだろうが派兵できると豪語どころか、台湾海峡への空母派遣もできない状況に来ているのが現実。
米軍のアジアからの撤退も、公言できないだけで、それは時間の問題でしかなかろう。

一方、中国は軍事力を急速に増強する経済大国。
東アジア地域でのリーダー交代間近なのは自明。

軍事バランスが崩れたことを如実に示したのは、2010年3月のこと。中国海軍が、渤海-黄海-東シナ海-太平洋-南シナ海のデモンストレーションを敢行したのである。いうまでもなく、沖縄-宮古間、バシー海峡、マラッカ海峡東部を通過した訳である。

時あたかも、鳩山首相の登壇(2009)。反米路線への転換を志向する政権と見なされた頃のこと。
従来の勢力図から見れば、反米保守ということになるが、そんな見方は昔の政治地図に基づいたもの。・・・
 <親米派>
 ・[過去の主流]現実主義的リベラリズム
 ・ナショナリズム
 <反米派>
 ・反米保守
 ・反安保+観念的平和主義
ところが、21世紀に入って、政治状況は大きく変わってしまった。そこを理解しておく必要があろう。
 <親米派>
 ・[現在の主流]ナショナリズム
 ・穏健派
 <反米派>
 ・急進ナショナリズム
 ・穏健派
 <没落一途の古典的反米派>
 ・自称リベラル
 ・古典的サヨク

ここら辺りの見方も重要だと思う。
何故にリベラルが落ち込むのかがわかっていない人が多いからだ。

小生は、人権擁護や弱者救済といった、かつてはまともに映っていたスローガンが、今や、一部の人達の既得権益強化運動と見なされてしまったことが大きいと思う。自分達だけお気楽生活を送りながら、反経済成長論を展開する人達とのイメージが出来上がってしまったということでもある。一度、見放されてしまえば、ジリ貧は避けられまい。
ところが、その自称リベラル勢力は、公明党も自分達と同類と見誤っているようで、集団的自衛権の動きを潰すことを期待しているようだ。
その見方は通用しないのでは。経済成長志向の政治勢力だからだ。
単に、穏健派の役割をはたしているだけだと思う。

(記事)
米大使 与党協議のガイドライン反映期待 6月13日 21時07分 NHK
US, China need broader framework for bilateral talks: Clinton [Interviewed by Tsuyoshi Sunohara, Nikkei senior staff writer] June 13, 2014 7:30 pm JST Nikkei Asian Review


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