表紙 目次 | 2014.6.26 イラク三分割しか手はないかも…オバマ大統領は、そのうちレトリックを駆使した演説を打ち、イラク問題をすり抜けようとの算段なのだろうか。テロリストにイラク北部の都市が次々と奪われており、これは一大事というのだが。どこまで危機を感じているのかお寒いところ。 実態はよくわからないが、米国支援の軍備そのままに、4師団がほとんど戦いもせずに敵前逃亡したのではなかろうか。まさかそこまでということで驚いたということだろう。 しかし、コレ、当然の結果ではなかろうか。 イラクの「国軍」は、100万人ほどには達していないだろうが、水膨れの傭兵組織以上でもなければ以下でもなかろう。政権にしてみれば、米国から頂戴するカネを消費するための道具である。 その状態で、政府がシーア派政権化してしまえば、サダム・フセイン流の徹底粛清をしない限り、内乱的戦乱が発生した途端に、国軍は即瓦解である。 土着部族勢力が立ち上がれば、それに鉄砲を向けるような馬鹿げたことをする訳がないからだ。そこで戦う気概を見せるのは、対立宗派だけ。 こうなったのは、選挙で世俗派が勝利したにもかかわらず、宗教対立路線のシーア派の独裁的政権維持を応援したからである。 要するに、オバマ政権は宗教・部族対立容認というか、イラク3分解への道へ歩を進める方針を是としたということ。 たまたま、その副作用がアナーキズムの原理主義勢力による制圧として現れたにすぎまい。 自ら旗を振っておいて、なんとかできないかと騒いだところで遅すぎ。 そもそも、大統領はテロリスト集団と呼ぶが、国務長官は反アサドの「民主勢力」と見なしていたのだからどうにもなるまい。なにせ、原理主義勢力はシリアには居ないと高らかに宣言したのだから恐れ入る。 おそらく、いまもってサウジ、カタール、クウェートからこのテロリスト勢力へ金銭的支援が続いていることだろう。当初からオバマ政権はこの措置を黙認し続けたのだ。もっとも、武器提供に歯止めという訳のわからぬ方針だった。お蔭で、シリアの西欧的な民主勢力は次々と根絶やしにされた訳である。 これは、リビアしかり。エジプトしかりである。 なにせ、民主化に立ち上がれと鼓舞するだけ。欧米のマスコミが持ち上げてくれるだけだから、そのうち一掃されて幕切れ。 もっとも、いかなる軍事力をもってしても、彼等を助けることは残念ながら無理である。部族社会だし、宗教がいり乱れており、国家観はなにも無いのだから。 ただ、今のイラクの状況は確かに危機的である。 下手をすれば、狂信的動きが始まり、強制移住や住民虐殺が次々と発生することになりかねないからだ。世俗主義者たるサダム・フセインは冷徹な政治的計算の下での虐殺を敢行したが、狂信集団には歯止めがない。 際限なき殺戮も十分あり得ることを忘れるべきではなかろう。 残念ながら、空爆ではそれは防げるどころか、狂信集団を強めることになりかねない。 世俗派である旧バース党勢力を復活させ、できるだけ早く三分割する以外に、残っている手はないのでは。それは簡単なことではないが。 (記事) How did it come to this? The crisis in Iraq has roots going far back in history. But recently the folly of interfering outsiders and sectarian leaders within has made matters a lot worse Jun 21st 2014 イラク・スンニ派の反乱:絶望的な勝算に賭ける(英エコノミスト誌 2014年6月21日号[邦訳]) 政治への発言の目次へ>>> 表紙へ>>> (C) 2014 RandDManagement.com | |