表紙 目次 | 2014.8.28 素人的なイスラム教分派分類…イスラム教の解説は浅学の身にはえらくわかりにくい。その理由は単純で、次々と用語の「訳」を並べるだけで、互いにどう繋がっているのか全体像がつかめないから。 もう一つの原因は、「Sharia」を"イスラム法"として紹介し、解説は分野毎に細かく記載してあるせい。ある程度理解している人には、詳細がわかるから便利だろうが、全体像を知りたいだけだと、読むのがつらい。 自分流に勝手に解釈してみるのが一番か。 とっかかりは、なんといっても「Sharia」。 小生は、イスラム教徒とは、"世俗法"ではなく、"イスラム法"に従う人達と考える。 前者は、ヒトが作ったルールであり、社会生活が上手く運ぶように決めたもの。 後者は、それとは全く異なり、神の指示そのもの。社会生活への影響を考慮して「法」を変える訳にはいかないのである。一旦、信仰を告白したら、神が指示したルールに従って生きるしかない。"イスラム法"が直接的に個人を律することになる。 ただ、神の指示が個人に直接伝えられる訳ではないから、宗祖の言葉を通してその「法」を理解するしか手はない。当然、解釈は様々。どのように解釈するかで意見が割れる。一枚岩にはなりにくい宗教である。 その解釈に必要かつ十分なのが、以下の4点ということ。 「Quran」・・・ムハンマドが受けた神の啓示 「Hadith」・・・ムハンマドの伝承言行録→慣例[Sunnah] 「Ijma[合意]」・・・法学者が一致して賛同 「Qiyas/Ijtihad[類推]」・・・法学者の理性的判断 このように考えると、スンニ派 v.s. シーア派の対立は当然のことでは。 <SUNNI> 慣例記載書に従って解釈することになる。現代とは違う社会での話だから、現実の儀礼作法/生活規範への適応には違いが生じてくる。しかし、あくまでも、原理原則は上記の「伝承言行録から読める慣例[Sunnah]」に従うだけ。 それをつきつめて考えれば、解釈さえできれば神の指示が読めるのだから、そのプロセスさえ完備してしまえば、政体が完成することになる。その場合、最高権力者が、解釈の最終意思決定者となることになんら問題はなかろう。それが、世俗的独裁者だろうが、国王だろうが、誰でもかまわない訳である。 原理的には、議会という立法機関は不要。解釈する諮問議会はあってもよいが、法は作るものではない。 <SHIA> そのような政体とは水と油の仕組み。と言うのは、恣意的な解釈を許さず、模範となるべき宗教指導者の指示に従うべしという宗派だからだ。社会を宗教共同体と考えるなら、宗教指導者=最高指揮者となる。みかけ上、西欧に似た政治機構になっていようが、その組織の上に"別途"最高権力者が存在することになる。 当然ながら、最高宗教指導者をどのように選ぶかの方法論で、宗派は分かれることになろう。 と言うことで、両者の分派を眺めて、本稿は終わり。 <SUNNI> ○類推[HANAFI学]派 寛容かつ柔軟な姿勢【世俗主義容認】 東地中海・・・トルコ、エジプト大半、シリア大半、イラク西部、ヨルダン 中央アジア〜パキスラン、イラン東部、バングラデッシュ、インド国境周辺地域 ○厳格[HANBALI学]派 伝統的規範/イスラム法の絶対性【純化主義】 メッカ&メディナ サウジアラビア大半(Wahhab派) ○慣行[MALIKI学]派 推論除去で、法と矛盾なき風習の遵守【現実主義】 アフリカ・・・エジプト除く北アフリカ全域(エジプト南部は含む)〜西アフリカ アラビア湾奥西側・・・UAE、クウェート、サウジの極く一部 ○理屈[SHAFI'I学]派 地域慣習軽視/啓示的記載重視【知識人中心主義】 東南アジア・・・インドネシア、マレーシア イエメン〜アフリカの角/東海岸 エジプト紅海側一部、シリア <SHIA> ○ISMAILI(七イマーム派) 中央アジアの一部 インド・パキスタン一部(Khoja派) アフガニスタン、他点在 ○JAFARI(十二イマーム派) イラン、イラク南西、レバノン イエメン アゼルバイジャン ○ZAIDI(五イマーム派) イエメン アラビア半島南西の紅海側 <others> ○IBADI[SUNNIと協調的] 非血族主義(その事実をを明かさない。) オマーン ○DRUZE[ISMAILI分派発祥] 世俗的かつ進歩的な政治スタンス レバノン、シリア/イスラエル/ヨルダンの一部 ○ALAWITIES[異教習合SHIA系] シリア山岳地帯 政治への発言の目次へ>>> 表紙へ>>> (C) 2014 RandDManagement.com | |