表紙 目次 | 2014.9.20 スコットランド独立騒動は他山の石…スコットランドが「独立」するか否かで、最後の最後まで大騒動。結果は予想通りだったが。世界中の金融業界関係者は最初から揃って大反対。当然である。実生活を考えれば、誰の身にもマイナスに響くとしか思えない訳で。 しかしながら、今の状況を考えると、それを体験するのも悪くはないかも。 ・・・と言うと、余りに無責任ということで、怒る人だらけだろうが。 もちろん、政治は独立、貨幣はポンドのままなど無理筋である。遅かれ早かれ破綻に遭遇することになる。そして、皆、えらい目にあうだろう。だが、それだけのこと。 世界経済は迷惑をこうむるが、根底からひっくり返る訳ではなかろう。それより重要なのは、今の世、コトは、経済だけではないという点。世界の長期安定のためにはどうすべきか考えてもらうためには、高額な教育費も必要かも。 FTやBBCの報道を眺めていて感じたに過ぎぬが、反対だらけだった状況から、両者均衡状況にまで至ったのは、独立派勢力の主張が有権者の琴線に触れた訳ではなさそうである。 この点の確認は重要だと思う。 ということで、ご参考までに、小生が感じた点をまとめておこう。 小生は、「賛成」がここまで増えたのは、もっぱら「反対」派が後押ししたからと見る。それは恣意的だったとか、ミスというより、時代精神の反映ではないか。 こういうこと、・・・。 ●第一に、ネガティブ・キャンペーンばかり打った点。 成熟した社会で、この手の主張を繰り広げると、人々は民主主義の危険を感じるもの。結果、今迄投票に行かなかった人まで投票登録した模様。(登録率97%)この層の投票はYes.だらけだったのでは。 ●第二に、今迄知らん顔をしてきたにもかかわらず、突如、自治権拡大を行うと言い始めた点。 しかも、為政者として、やろうと思えばできたのに手をつけようともしなかったどころか、口にもださなかったらしい。それが態度豹変。侮蔑統治をしていることを見せつけたようなもの。 もともと政治家を信用する社会ではないだろうから、おそらく、静かな怒りを呼んだろう。記録的な投票率を実現したのは、イングランドの政治家の体質に対して不快感を覚えたから。 ●第三に、保守党政治の、政府支出削減、政府の社会サービス廃止と、所得税の最高税率削減といった政策が、スコットランド社会の体質に合わなかった点。報道によれは、なかでも、ベッドルーム課税への不快感は相当なものだったようだ。 U.K.のなかでは、医療、教育、福祉といった点では十分な恩恵を受けている地域でもあり、生活レベルはおそらく相対的にかなり上。従って、スコットランド優遇策がこの先抑えられるしかなかろうと、感じさせたのは間違いあるまい。 もともと、スコットランド地方議会に保守党は存在していないも同然なのだから。しかも、よりによって、なかでも嫌われていそうな政治家をわざわざ選んだように、現地で説得演説を挙行したのだから最悪。 ○但し、スコットランドの人口、GDP、国会議員の数で見れば、それ以外のU.K.との比率では、すべて1割程度。決して、特別な扱いが必要な訳ではない。要するに、まともに対応していれば、独立賛成派は少数で終わった可能性もあったのである。 ●小生が最悪と感じたのは、珍奇なスローガンを掲げて独立運動を潰そうとした点。これが第四の理由。 そもそも、「独立反対」という主張が奇妙。本来なら、「分裂主義反対」とすべきもの。 しかし、それはU.K.の基本理念に正直だったということでもある。この国は、スコットランドを北部イギリスにする気はもともとないのだから。米国のように価値観で国をまとめるとか、文化的に同質化した国民を作り上げる気ははなから無いし。 連邦化とは、生活レベルを揃えるということであるし、社会的権利の平等化と、経済権益の共有化という以上ではなさそう。 従って、グローバル化で産業構造が揺さぶられると、スコットランド内部では、同質性維持の方向に動くことになる。 その流れに配慮しながら、連邦性維持の主張ができなければ、No.への支持を集めるのは難しかろう。 ●第五にあげるべきは、U.K.の没落を感じ取っている人々にどう対処すべきか考えていなかった点。政治家にしては、えらく鈍感と言わざるをえまい。 もしも、それを踏まえていれば、U.K.の素晴らしさを訴えている筈である。誇りはU.K.ではなく、スコットランドしかないとなれば、誰だって、Yes.に投票したくなろう。 U.K.は、原子力潜水艦を保有するという点で世界に冠たる国家の1つだが、今や、仮想敵国を描くことさえできない状況。大陸に脅威ありと考える人はいないのだ。このことは、U.K.の軍事力が重要だった時代は終わったと、皆、考え始めていることを意味する。 言うまでもないが、国教会の宗教的威光が世界に広がっていると見る人もいまい。ローカルな教会だけで十分ということ。 英国の威力とはシティだけと見る人がでてきてもおかしくないのである。 換言すれば、スコットランド社会は、十分に豊かになっており、日々の生活にも余裕があるということでもあろう。力を失っていく連邦に依存し続けても、そんな生活が保証される時代ではなくなったと実感していると思う。慣性のまま、お気楽に進むことはもう無理な時代に入ったという時代認識ができあがりつつあるとは言えまいか。 ●第六に、「スコットランドの」独立という狭い視野で対応した点。 例えば、ロンドンにしてみれば、シティを核として自由都市として発展したいに違いなかろう。グローバル化に乗り遅れた地域と一緒の対応など無駄と考えておかしくないからだ。その一方、肝心要のイングランドは、E.U.からの離脱方向へと奔流ができつつあるのが実情。スコットランドの方が明らかに親E.U.なのである。 つまり、総体としては、グローバル化失速中ということ。分裂主義が急速に勃興してきたのである。このことは、反グローバルの主張を論破する力を失っていることを意味しよう。この状態で、独立反対と言っても、説得力は弱い。 さて、このような流れを「他山の石」とすべしというのが、書きたかったこと。間違えてもらってはこまるが、琉球独立運動の話ではないし、道州制の話でもない。 そういう点では、途方もない話かも。 U.S.A.の地位は崩れ始めているのは明らか。その流れはオバマ政権の施策で思った以上に速いが、政権交代が発生したところで、弾みがついてしまった以上、もう止まるまい。 世界に冠たる軍事力で世界の安定を図ってきたのは過去の話になりつつある訳だ。当然、グローバル化にも熱をあげなくなるだろう。どの国も、勝手に、独自の道を歩いたら如何との姿勢に転換していくことになる。 と言うことは、突然にして、日米安保体制破棄の方向に進もうと言い出しかねないということでもある。日米同盟が永遠に続くことなどありえないし。NATOが抱える問題と同じようなもの。台湾防衛の法律上、米軍は効率的な体制を敷いているが、沖縄を見ればわかるように撤退方向。日本政府の要請でそう見せないようにしていると言えなくもない。 当然ながら、米国政府は、ゆくゆくは朝鮮半島には一切関与しないということでもあるから、どういう形になるかはわからぬが、分裂国家は統一されるだろう。日本の預かり知らぬところで。 そうなると、アジアの安定をどう図るかを、日本は自らの頭で考え出す必要に迫られる。そうなってからでは、簡単に対応できないから、今のうちに、どう動くべきか考えておく必要があろう。布石も早目に打っておくにこしたことはない。 今日明日の話ではないとはいえ、すでに、そういう話をせざるを得ない状況に来ているのでは。 政治への発言の目次へ>>> 表紙へ>>> (C) 2014 RandDManagement.com | |