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2014.10.20

高校生の政治活動をお勧めすべきか…

香港の民主化運動のリーダーは、学民思潮(スカラリズム)を牽引してきた、入学したばかりの18歳大学生になってしまったかの如し。2012年に「愛国教育」導入を阻止したことで知られる。
9月26日夜に、警察が連行したということで、週末の大規模なデモにつながったと言われている。
まあ、一国2制度という、訳のわからぬ方式だから、騒動のネタはいくらでもあるが、どこで妥協するかは難しい問題だろう。
英国統治下の社会は、民主主義とはほど遠い状態だった訳で、中国共産党統治下になったことでようやく政治的自由度が生まれたという大きな矛盾を抱えているのだから。

従って、外部からみるといかにも理想論の運動なのが気にかかる。統治者が妥協することで実現した小さな一歩を無視しすぎるのは危険である。なんといっても重要なのは、どちらの方向に進んでいるかだと思うが。

そういう観点で考えるからこそ、学校以外の社会生活体験を欠く生徒達の大衆政治活動をお勧めしてこなかったということではないかと思うが。
だからこそ、視野が狭すぎるということで、高校生世代には選挙権を与えないし、犯罪行為に対する厳罰も避けてきたのでは。

逆に言えば、高校生の政治運動を全面的に支持するなら、参政権を与えるべきとなろう。まあ、今や、高校生といっても自活能力ある人達も多いから、先進国ではその方向に進んでいくしかないとは思うが。それが果たして妥当な判断と言えるのかはなんとも言えぬ訳だが。

この辺りの考え方を曖昧にしたままは、いかにも、まずかろう。

その典型例が、17歳のノーベル平和賞受賞報道。
近代的な教育を受ける権利を主張した勇気ある行動を支持するのは当然といえば当然。受賞記者会見の発言も素晴らしいものであり、意義深い受賞と考えがち。
しかし、それを、史上最年少受賞として紹介する記事が多すぎる。どういう感覚でその点にハイライトを当てているのか気になる。どう考えても、若者よ、生徒になることを躊躇するなというストーリーには結びつかない表現だからである。

これから先も運動のリーダーとして活躍を期待するということで最年少受賞を賞賛するのだろうが、そのような姿勢が妥当と言えるのかは、なんとも。
世の中には、道は色々ある訳で、どんなオプションがあるのかを知り、自分が進みたい方向を決めるための準備期間が高校生生活と見るというのが暗黙の了解事項だったのではなかろうか。そうだとしたら、最年少にハイライトを当てるのは考えもの。

ただ、高校生をそのように見ないというのであれば、素晴らしき受賞となる。

米国では、11月の州下院議員選挙に18歳の大学新入生が立候補している。予備選挙で現職議員を破り、共和党候補の座を獲得したのである。
ウェストバージニア州は年齢制限無しだから可能ということ。と言っても、米国といえども、十代の州議員は極めて異例。20代を加えても、5%未満なのだそうである。

若い有権者の声が州議会まで届く必要があるとの主張だが、もっぱら保守層の集票を図っているようだ。「一生の職業としての政治家という考えには納得がいかない」ということでの挑戦。対立候補は民主党で、当然ながら、「自分のほうが経験がある」点を訴えている。

経験豊富な職業政治家だらけだからこそ、しがらみがありすぎ、政治が低迷しているというのも確か。そこから脱皮を図るには若い人達が立ち上がる以外に手は無いという主張にも一理あろう。
そう考えるなら、高校生の政治活動の自由度を高める必要があるということになるのだが。はたして、当の高校生はどう考えているのだろうか。

(WSJのコラム/記事)
香港民主化デモ、先頭に立つ17歳の学生運動家 By ISABELLA STEGER 2014年10月1日 18:36 JST
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