表紙
目次

2014.11.18

香港民主化運動にたいした意味はない…

香港の行政長官は思ったことを素直に発言しているように見える。訳のわからぬイデオロギー的な衣を被せてはいない。
と言うか、それは当たり前のこと。
中国共産党には、世界に影響を与える思想的発信能力は皆無だからだ。その手の危険性は無いのである。つまり、覇権国家の物真似大国化以外の道は無い訳で、香港の為政者としては、波乱が発生しないように、その路線に合わせて動くだけ。

要するに、政治経済的安定を一挙に崩すことになる普通選挙はできないと言っているだけ。

驚くような発言ではなかろう。
発展途上国では当たり前では。
タイの状況を知らない訳ではあるまい。

例えば、普通選挙を行えば、民主主義的制度を全廃し、宗教指導者による独裁国をつくろうという勢力が政権を握ることが明らかな場合どうするかネ。
民主主義のために普通選挙をすべし、という主張ははたして「正論」と言えるか。
政治とはそういうもの。

香港にしても、英国統治の時代は、政治的自由などゼロ状態。普通選挙を始めたりすれば、英国支配が崩れることは自明だったからである。
言うまでもないが、紅衛兵支配の地にしたい人達が、方便的に「民主化」を要求していたりするのが実情。「民族自決」を欧米対抗の軸としていた勢力でもあるが、チベット、ウイグル、モンゴルは中国の一部でしかないと、早くから決定していたことを見ればその思想基盤がなんたるかは一目瞭然。民族勢力を力で一気に消滅させたソ連型統治の忠実な物真似以上ではなかろう。
しかし、そうは伝えないメディアだらけ。日本など、紅衛兵万歳的報道がなされていたのである。
それと、表裏一体なのが、発展途上国で勃発する先進国的リベラルな動き。そんなものは、無理筋であり、表面のうたかたにすぎまい。わかりきったことでは。

しかし、英国支配が終焉し、「一国二制度」ということで、香港は中国共産党の支配下になり、表面上は民主化が大いに進展したのである。
皮肉な話だがそれが事実。

秀逸なのは、現英国政府の態度。

資本主義制度と生活様式を変えないとした"Sino-British Joint Declaration"を締結しているにもかかわらず沈黙。民主化運動への支援姿勢を見せようともしない。自国の経済に悪影響を与える動きをして何の得があるか考えれば、そうならない方がおかしかろう。

間違えていけないのは、この宣言以降、政治経済構造が民主的になったというのは単なる幻想という点。
香港における重要な産業はほとんど寡占化されており、ほんの僅かな人達がこの都市国家を動かしているのが実態。発展途上国によくある経済支配構造そのもの。それを民主的と呼ぶなら別だが。

ただ、金融自由度を保った上に、起業の制約がほとんどない。そのお蔭で、自由経済の国々と、中国との間のパイプ役を果たせたので、経済的大発展を遂げたということ。
その結果、統計的には、日本より豊かな生活を送っていることになる。

この辺りに関しても、行政長官は結構正直に語っている。
つまり、そうした統計はあくまでも平均でしかない。実際は低所得層は極めて多いというか、住民の半分近くを占めているようだ。
従って、まともに普通選挙を行えば、この層に応える政治が始まってしまうことになる。一挙に政治経済的安定性が失われるから無理だという訳である。

この見方は間違っている可能性もある。しかし、それはあくまでも可能性にすぎない訳で、博打的政治を始める訳にはいくまい。

資本主義社会とは多かれ少なかれ、こうした姿勢をとらざるを得ないのである。富裕層は、口に出さないだけで、貧困層に政治的選択をゆだねると国の基盤が崩れると考えているだけのこと。
それは、中国共産党とて同じ。

ただ決定的に違うのは、領袖による軍事独裁体制である点。

(参考になるニュース)
"Chris Patten[former governor] admits Britain did poor job in introducing democracy to Hong Kong" the South China Morning Post Wednesday, 05 November, 2014, 5:40pm


 政治への発言の目次へ>>>    表紙へ>>>
 (C) 2014 RandDManagement.com