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2014.11.26

オバマ型理想論は続行か…

オバマ政権での国防長官辞任はこれで3人目。
 Robert M. Gates
 Leon E. Panetta
 Chuck Hagel
国防総省、大統領補佐官チーム、制服組の三つ巴状態が続いており、抜き差しならぬ対立発生は時間の問題だったと言えよう。

政権としては、大統領補佐官と国防長官のどちらを選ぶか突きつけられていたようなもの。従って、結論ははなから見えていた。

もともと、アフガニスタン/イラクからの撤兵と国防費削減遂行のために起用された人物であり、その路線が破綻をきたしたのだから、いかんともし難かろう。
再び戦時体制へ進めるか否かの対立が発生すれば、どうにもなるまい。

ブッシュ政権も失敗の連続だったが、オバマ政権も全く同じである。
イラクにせよ、アフガンにせよ、米国の規準からすれば、こうした国に新しくできた政府組織とは腐敗した連中の巣窟以外のなにものでもなかろう。国家機構を、部族や宗派の利権争奪の場と見なしているのだから、当たり前の話。しかも、昨日の友は、今日の敵の風土とくる。敵対する宗派だろうが、対立する部族だろうが、利用する価値があれば、一時的に手を組むことも有りうる社会。もちろん、国のために動いている訳ではない。
利権漁りをしない勢力とは、そのような戒律を有する原理主義者以外にあり得まい。

そのような、混沌の世界を理想論で変革するなど無理筋。
ところが、オバマ政権中枢には、それを認めたくない人達が集まっているようだ。そんな体質だとすれば、「無辜の市民」が虐殺される理由もわからないかも。

独裁政権下では、権力維持のために必要とあらば、虐殺はいつでも挙行される類のもの。見せしめ効果を発揮させるためであり、周到に用意されることの方が多そう。故意に、間違った罪状で虐殺することも厭わない。ほんの少しの反権力と見なされる行為があっただけでも、極刑が待っていることを知らしめようとの意図で行われるのだ。
一方、原理主義者の「無辜の市民」虐殺は、そのような仕掛けとは違い、単純な憎悪の発露から発生することが多いのではないか。単に為政者に従っただけと称する人々を一番毛嫌いする勢力だからだ。信仰心が欠けており、唾棄すべき対象とされれば、どう扱われるかわかったものではない。
特に、世俗主義的生活を送っている「無垢な人々」に対する嫌悪感は相当なものである可能性があろう。

オバマ政権の一番の問題は、そうした現実を見ようしない態度。
民主化実現を応援するとか、武力抜きに政治交渉で問題を解決しようと言い出したりと、常に夢物語を持ち出す。それは表向きで、実際の動きは練に練ったシナリオで動いているのならわかるが、そんなものは何も無いのである。
部族主義者や宗教独裁勢力にとっては、実に組みし易い政権と言えよう。当然ながら、その結果は悲劇創出以外に有りえまい。そして、世界は不安定化の方向に進んでいくことになる。

あるべき姿を求めるからこそ、現実にはそれと違うことを平然と行う。それこそが、実践的な動きなのだが、オバマ政権はそれが全くできない。
非道なリーダーを倒すのには熱心なようだが、普通選挙に意味が無い社会では、それはたいした効果を生まないことがおわかりにならないようだ。副作用が大きいのがわかっていても、それがお好きとくるからこまったもの。アラブの春称賛運動のお蔭で、民主主義者は撲滅させられ、この地域の不安定化は甚だしいものがある。それをお望みだったのかと思えるほどのひどさ。

どうも、オバマ流実践主義とは、時々の世論の風向きに合わせ、理想論を調整するということらしい。

今回の辞任を見ても、この体質は続いていそう。
そうなると、この先、できる限り低コストで、イスラム国とだらだらと戦い続ける方針が選択されるということか。
そのうち、彼らが疲弊することを願って。

おわかりだと思うが、本気なら、イスラム国打倒は難しい話ではない。それが引き金になって、中東全域大戦乱突入の危険性はあるものの、今のままでもそうなるかも。
例えば、単純明快な策なら、トルコ軍地上部隊の大規模投入があろう。もちろん、それを可能にするために、いくつかの面倒な手を打つ必要があるし、戦争の副作用を低減させるための布石も不可欠。
そんなシナリオを案出するのが、リアリズムに立った政治の本質ではなかろうか。
それなくしては、地域安定は無理だと思うのだが。

(記事)
「ヘーゲル米国防長官が辞任する理由」By Gerald F. Seib 2014年11月25日 14:13 JST WSJ日本語版
"Hagel Resigns Under Pressure as Global Crises Test Pentagon" By HELENE COOPERNOV. 24, 2014 NYT
"Defense Secretary Chuck Hagel To Step Down" Nov. 24, 2014 - 01:43PM By JEFF SCHOGOL and ANDREW TILGHMAN DefenseNews
オバマ米大統領、ヘーゲル国防長官を事実上の更迭 2014/11/25 9:33 by ワシントン=吉野直也 日経
米国防長官が辞任 シリア政策で大統領と対立 2014/11/25 0:12 (2014/11/25 1:41更新 by ワシントン=吉野直也 日経

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