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2014.12.6

「対イスラム国有志国連合」では拙かろう…

12月3日、NATO本部で米国主導の「対イスラム国有志国連合」会議が開催された。

参加国数は多いが、NATOの影響下の国々と、アラブとアジアの欧米同盟国がほとんど。当然のことながらイラク国内で空爆を開始しているイランは含まれていないし、イエメンや、北アフリカのリビア、チュニジア、アルジェリアは不参加。ソマリアとエジプトの間の国々も。
アラブ圏外のアジアのイスラム教国も全く加わっていない。
はたして、本気で呼びかけたのか、なんとも言い難いものがあろう。
しかも、印・中・露の立ち位置がどうなっているのかも定かでない。

もちろん、理屈の上では、この会議が世界を動かすエンジン役を果たす可能性が無いとはいえない。しかし、NATOは防衛能力を越えた水膨れ組織と化しており、安全保障体制が形骸化しているのは明らか。しかも、盟主たる米国にはカネもなく、米軍展開能力維持もままならず。
常識的に考えれば、この流れこそ大歓迎と眺めているのが、覇権主義一色に染まる国々。特に、GDP No.1に上り詰めた大国からすれば、「人類の普遍的価値」を延々と叫び続けるNo.2は衰退したいならご勝手にというところでは。延々と苦しんでもらって結構と、傍観を決め込むに違いないと思う。

本来なら、この問題は、全世界的ベースで立ち上げるべきもの。
と言うのは、一番重要なのは、会議で決まった項目の5番目だからだ。しかし、上記の体制では、中途半端に進めるしかなかろう。最初から、負けているようなものでは。

簡単にいえば、宗教原理主義のイデオロギーを潰すために世界を巻き込んで動くべきなのに、それができていないということ。
かつては、自称「社会主義」の盟主が、イデオロギーで世界を支配しようと画策し、世界各地で"東西"代理戦争を繰り広げた訳だ。しかし、結局のところそれは破綻。裸のママの国粋主義的覇権追求国になり変わってしまった。軍事力強化路線はそのままなので、軍事的危険性は高まってしまったが、他国への思想的攻撃能力はゼロとなった。「革命」の輸出はできなくなり、逆に「革命」の輸入を恐れる状態に陥っている訳だ。

その思想的空白に現れたのが、イスラム国と考えるべきである。

アルカイーダとは違うし、宗教原理主義的姿勢を見せている国家群とも全く違う点を間違えるべきではない。この組織は「政教一元国家」体裁を整えている点に注意すべきだろう。イランにしても、サウジにしても、政教一致という看板を背負うものの、指導者はそれなりに政教分離を進めており、独裁化を避ける工夫をしていることが見てとれる。先進国から見ると、自分達の生活との落差が余りに大きいからその辺りが皆目理解できない訳だが。要するに、「イスラム国」的思想に染まらないように努力しているともいえる。
これに対して、イスラム国にはそんな動きは皆無。それどころか、その動きを完全否定している訳だ。つまり、危険な国家思想が現実化してしまったことを意味する。
従って、思想的な反撃を加えないままでいれば、大事になると見るべきもの。
どう考えても、欧州・アラブ・米国とその同盟国だけの問題ではないのである。

<決定した方針>
1 Supporting military operations, capacity building, and training;
2 Stopping the flow of foreign terrorist fighters;
3 Cutting off ISIL/Daesh's access to financing and funding;
4 Addressing associated humanitarian relief and crises;
5 Exposing ISIL/Daesh's true nature (ideological elegitimization)
<参加メンバー>
【主導】
米国[国務長官+特別チーム担当/John Allen]
イラク[首相]
【参加国際組織】
NATO,EU,アラブ連盟
【アラブ圏中核国】
サウジ,カタール,UAE,バーレーン,カタール
【シリア隣国軍事支援可能国】
ヨルダン,トルコ
【アラブ圏参加国】
オマーン,クエート,レバノン
【北アフリカ】
モロッコ,ソマリア,エジプト
【イラク空爆/支援組】
英,仏,蘭,ベルギー,デンマーク,カナダ,オーストラリア
【クルドへの武器供与国】
独,伊
【欧州】
キプロス,ギリシャ,アルバニア,スロベニア,ボスニア・ヘルツゴビナ,コソボ,モンテネグロ,セルビア,マケドニア,ブルガリア,クロアチア,ルーマニア,ハンガリー,オーストリア,ポーランド,ラトビア,エストニア,モルドバ,アイルランド,チェコ,スロバキア,スウェ−デン,フィンランド,ノルウェー,ルクセンブルク,ポルトガル,スペイン,グルジア,ウクライナ
【アジア太平洋地域からの参加】
日,韓,台,シンガポール,ニュージーランド

(米国国務省リリース)
Remarks at the Counter-ISIL John Kerry@Brussels, Belgium December 3, 2014
(Saudi-US Relations Information Serviceのリリース)
Anti-Daesh Coalition Conclave in Belguim December 4, 2014

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