表紙
目次

2015.1.10

イスラム国放任のツケ

ついに、先進国でカラシニコフ自動小銃によるアルカイダ系のジハード主義者の襲撃が始まった。
対立するイスラム国とジハードで競争するのだから、たまったものではない。この流れは止まるまい。ついにカリフの国が復活したということで、高揚感が生まれているに違いないからだ。

こうした組織とは無縁な筈の普通の住民が、一夜にして聖戦士に変身することもありうる時代が到来した訳である。ジハード志願者を短期間で戦士に仕立て上げる仕組みが出来上がっており、武器を手渡すルートも完備していそうだから、いよいよそれがフル稼働を始める状況に至ったということ。
ここまでくると、従前の治安体制の対応ではどうにもなるまい。よくてもぐら叩き。・・・ジハード主義者は異端ではあるが、すでに欧州のイスラム教徒人口は6%を超えていると言われており、アラブ地域との頻繁な交流がある以上、潜在的には、そこいらじゅうに存在していると見てよかろう。

こうした流れを予見している、サウジアラビアやヨルダンはイスラム国打倒に動く姿勢を見せてはいるが、それは為政者の地域パワーバランスからの決断に過ぎまい。コトと次第によっては、協調政策への転換も十分有りうるというのがアラブの政治。おそらく、この両国にしても、大半の住民はイスラム国のシンパ。冒涜者は死刑に処すべしの社会なのだから。ジハードの資金源もここいらしか考えられない訳だし。アラブとはそういう風土の地域である。
厳格な経典宗教の民なのだから、そうなるのは、ある意味当たり前である。アラブ民衆の反欧米感情は、日本のように、傲慢な姿勢をみせる大国はけしからんという話ではなく、聖書に反する動きだらけの不信仰「先進国」文化許すまじということなのだから。

ただ、なんといっても一番の問題は、オバマ政権の体質。
中東政策にはなんの方針も感じられないからだ。やっていることといえば、ただただ軍事的動きを抑え、即断実行を避けるというだけ。この大統領の治世が続く限り、事態は悪化の一途をたどろう。

まあ、前政権のアフガニスタン敗戦から続くトンデモ路線を引きずっているから、致し方ないところもあるが。・・・
とてつもない戦費を投入し、数多くの兵士を失い、もちろんアフガニスタン人も大勢死亡。しかし、敵たるタリバンはそのうち僅かなのは自明。
その結果、華々しくデビューしたのは、腐敗した政府と国際的テロリスト集団とくる。しかも、麻薬生産量は以前より増加していると言われている。
そして、それに輪をかけたような、フセイン政権打倒。残虐な独裁政治の国ではあるが、それによって宗教対立や部族抗争を抑えていた世俗主義大国をわざわざ崩壊させたのである。先進国撃滅を叫ぶ聖戦主義者を生み出すための戦争だったと言わざるを得まい。
しかも、よりにもよって、リビアまで崩壊させるのだから、どうにもならない。ここから、北アフリカ一帯に武器がバラ撒かれた筈で、部族主義者と無国籍型原理主義が跋扈する世界に一変した訳である。
あげくのはてに、宗教・部族のモザイクをまとめていた専制国家シリアを崩壊させるとくる。そんなことをすればどうなるかなど自明。
もう手のつけようがない状態。

政治とは、思想をそのままの形で政策に移してはいけない領域。現実を直視し、どのような結果をもたらすのか考えて動いて欲しいものだ。

カルト民主主義者は、カルト宗教原理主義者と同じように、恐ろしい結果をもたらすのである。カルトだけはご免蒙りたいものである。それこそ、カルト格差是正主義位でも、被害は小さいとはいえ、結果は悲惨である。

オランド仏大統領の動きを見ればわかろうというもの。
「格差」をタネに富裕者課税強化で当選したようなものだが、そんな施策がどのような結果をもたらすかなど、すぐわかる筈。
結局のところ、税収を増やすどころか、稼いでいる人達の海外移住促進と、国内投資減退を招いただけ。方向転換を図らなければ経済悪化一途である。
もちろん、公約に反してそんな姿勢へと転向すれば、カルト格差是正主義者達は裏切り者と大合唱することになる。貧困化を進めて、革命につなげたいのかも知れぬが。
(リベラルアートを学ぶ余裕が生まれた社会にもかかわらず、こうしたカルト思想は消えるどころか、逆にお盛ん。まことに残念。)

プラグマティストなら、中東の課題ははっきりしている。
 イの一番は、原油市場の安定。
 次が、大戦乱防止のための、イランとのデタント。
 そして、国際テロリスト跋扈の防止。
簡単に言えば、地域のパワーバランスの大きな変動を避けることに尽きる。
従って、米軍はこの地域から撤退するのではなく、機敏に動ける機動部隊を駐留させる方向に進まない限り、一歩も進展しないだろう。つまり、多くの国々が、必要な時に、米国の軍事支援をいつでもすぐに受けられる状況にするということ。
そのためには、中東では同盟国をつくらないという方向転換が不可欠。それは簡単ではないが、それ以外に道はなかろう。
そのために、何を先送りし、どこで妥協を急ぐべきか、シナリオを描くことが始めの一歩ということになろう。

その観点では、カルト民主主義者と一緒になって、専制政治の民主化を目指せと言い出すなど最悪。それは、上記のどの点から見てもマイナスにしか働かないからだ。しかも、まともな層への弾圧を招くこと必定。それを見捨てる以外に手がないのを重々承知にもかかわらず。

 政治への発言の目次へ>>>    表紙へ>>>
 (C) 2015 RandDManagement.com