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2015.1.18

「乱」の時代が始まる

欧州では、「JE SUIS CHARLIE」だらけ。英国では、左派として昔から有名なガーディアン紙が風刺画を掲載した位で、言論をテロで封殺させることを許してはならぬという雰囲気が一気に高まった。
正論だし、反テロの大衆運動は不可欠である。
しかし、テロリスト組織の思うツボでもあることを忘れるべきでない。国際テロリストは着々と歩を進めており、長期的な視野で眺めると、極めて戦略的である。
イラクでも、弱点を狙ったテロで、民衆と西欧との接点を断ち切ることに注力し、結局のところ、アフガン同様の状況に追い込んだ訳である。そうなることなどわかっていても、オバマ政権は動けないことを知り尽くしていたということでもある。

今回も、又、のせられることになろう。

西欧的には上記の標語はよくわかる。しかし、残念ながらそれは西欧の発想でしかない。CHARLIEとは、教祖を徹底的に侮蔑する輩というのがイスラム信仰者の普通の感覚。従って、西欧の大衆はその侮蔑観を支持していると説明されれば、そう受け取られてしまう。いくら説明したところで、知識人を除けば、納得感を覚えるイスラム信者はいまい。
これこそが国際テロリストの狙い。
西欧の思想を理解している有能な少数指導部と、バラバラな実行部隊という組織なのであろう。そうだとすれば、テロ対策部隊をいくら強化しても、それはモグラ叩きでしかなく、かえってモグラの数を増やしているのかも知れず、テロ撲滅は難しかろう。

すでに欧州イスラム人口は6%を越えており、こうした反テロ大衆運動の結果、その目的とは裏腹に、テロ組織の聖戦士は益々増えることになろう。と言うのは、テロリストとの実戦で特殊部隊の存在が人目に晒されてしまったし、盗聴活動を始めとする諜報活動が公然化してしまったから。民主主義国の「自由」とか「人権」の実態とはこんなものという主張が、差別的境遇のコミュニティでは当然視されることになり、被抑圧感が急速に高まるからだ。

但し、国際テロリストの本命は西欧ではなく、あくまでも回教圏。しかし、だからこそフランスを標的にするのである。
シリアとアルジェに繋がるフランスこそ、一番弱い環の切れ目であることを十二分に理解しているからに他ならない。イスラム v.s. 西欧戦争に持ち込む仕掛けを考えながら動いていると言ってよいだろう。西欧発想の反テロ戦争をイスラム圏に引き込むことこそが、世俗主義絶滅のチャンスと見ているということ。
従って、西欧感覚と、イスラム圏の諸国の民衆感情の違いを理解しないと、戦乱は広がること間違いなし。

その象徴と言えるのが、パキスタンでの、軍営公立学校の100名を越える生徒と教師殺害テロ。「パキスタン・タリバン運動」のしわざ。当初、公然組織「赤いモスク」の最高聖職者はこのテロを肯定したのである。
十分ありえる話。対アルカイダ「戦争」ということで、一般民衆多数が犠牲になっている訳で、家族を失う苦しみを軍隊は知るが良いというスローガンが十分通用する状況なのだ。謝罪したとすれば、軍隊が一枚岩ではなく、非世俗主義者の割合がかなり高かっただけでは。

すでに、インドでは、ガンジー暗殺者のヒンドゥー国士化(英雄扱い)が進んでおり、この地域では西欧的な感覚が通用しなくなっている点にも注意を払うべきだろう。

覇権国不在の時代とはまさしく「乱」。
その不安定さにつけ込む動きがついに本格化してきたということ。

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