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2015.2.10

米露体質にはこまったもの

2008年の米国防総省研究報告書が公開され、プーチン大統領の仕草と表情の分析から自閉症の可能性ありと記載されているとのこと。[USA Today]ついに、こんなどうでもよさそうな報道が登場するようになったか。
ロシアに対する制裁を進めているにもかかわらず、さっぱり効果をあげていないので、米国にイラダチ感が生まれていることを示していそう。

素人が見ても、現在の経済制裁程度では、たいした影響力を期待できないのは初めからわかりきったことなのに。
せいぜいのところ、ロシア国内の物価高騰止まりだろう。ロシア国内の不満は欧米に向かうだけで、政権基盤は強化されると見るのが妥当。(「米国が仕掛ける経済制裁などなにするものゾ」で国内が反米意識高揚一方になるのがオチ。)にもかかわらず、いかにもロシアが深刻な危機に見舞われるかのようなトーンの報道を続けていれば、不満が高まるのは当たり前。それを狙っているのではないかと思うほど。

ともかく論調がロシアに打撃を与えるための「経済制裁」一本槍。ロシア経済なくしても、世界経済はどうということなし感覚で。

現状認識こそが出発点である。・・・
  【ロシア経済の基調】
財政赤字に直面どころか、基本的に財政黒字で来た。
経常収支も黒字基調である。
政府が抱える債務規模は小さい。
国も民間も、外貨建て債務が積み上がっている状態ではない。
経済の生命線である原油・ガス生産にはなんら問題が生じていない。
原油・ガス輸出が急激に落ちる兆候はない。
原油価格下落はドルベース。[ルーブルも下落。]
  ルーブルベースの国家歳入が極端に落ち込むことは無い。
  【制裁の経済的影響】
ルーブル下落により、輸入物価は高騰する。
当然ながら、インフレは発生する。
それを抑えるために、高金利政策を採用せざるを得ない。
それが資本流出を抑えることにはなるまい。
低成長化必至であり、それがさらなる資本流出を招く可能性は高い。
  【ロシア国内の政治勢力】
まず、押さえておくべきは、反プーチン政治勢力に力が無いという点。
大統領の権力基盤は、あくまでも諜報機関と軍。
  これによりエネルギー産業支配を貫徹してきたのは明らか。
この領域では、反対勢力は完膚無きまで叩きのめされたのは誰でもがご存知の筈。
  従って、内部分裂が発生しない限り政権安泰である。
しかし、この領域以外の産業では、改革に踏み出さないというのがプーチン流。
  適当にお茶を濁すことで、潜在的な対抗勢力との軋轢を避けたということ。
  経済制裁は、こうした分野でのプーチン政権の強権発動を容易にしただけ。

従って、現状の打ち手にフラストレーションを覚えるのなら、本格的な経済制裁に進むしかない。確実に打撃を与える、原油・ガス交易停止や、SWIFT決済からの締め出ししか残っていない。
しかし、これは経済制裁とは言うものの、事実上の宣戦布告に近い。太平洋戦争に打って出た日本の軍部と同じ状態に追い込むことを意味する。
ロシアにとって、ハイ、そうですかという対応で済ませることは無理。

代理戦争が盛んだった冷戦時代は終わっており、直接対峙の時代にこれを試みるのは冒険主義以外の何物でもなかろう。

引退老人の心配は当たるかも知れぬ。

(イーゴリ・イワノフ元露外相の意見)
Securing the Euro-Atlantic Community by Des Browne, Igor S. Ivanov and Sam Nunn FEB 3, 2015 Project Syndicate
The Risk of a New Cold War By IGOR IVANOV and MALCOLM RIFKIND AUG. 3, 2014 NYT
(ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連邦共産党書記長インタビュー)
Gorbachev Interview: 'I Am Truly and Deeply Concerned' Interview Conducted by Matthias Schepp and Britta Sandberg January 16, 2015 - 11:43 AM DER SPIEGEL


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