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2015.3.12

沖縄問題の先送りは無理

米軍普天間飛行場[宜野湾市]の辺野古[名護市]移設で、安倍政権と翁長県政の対立が深刻化している。年末の衆院選では全4小選挙区で移設反対派の候補が当選しており、自治体としても、移設阻止に向けた取り組みを積極的に進めるしかない状況。妥協は難しかろう。当然ながら、移設反対運動も激化一途となろう。
そんな状況下で、防衛省は海底ボーリング調査再開の動きを見せている。
この対立、全国紙では余り報道されていないが、沖縄のマスコミでは大々的に報道されている筈であり、かなりの温度差がありそう。
この調子でいけば、こじれる一方。抜き差しならぬところまで行きそう。

と言うのは、東アジアの軍事情勢から見て、日米軍事同盟が締結されている以上、沖縄の基地撤廃はおろか、軍備近代化棚上げも無理だからだ。反基地運動に妥協できる余地はほとんど無いのは自明。
県民9割がオスプレイ配備反対だったそうだが、それに応えられる筈がない。できることと言えば、せいぜいが、見かけ上の多少の負担減だろう。一旦決めた装備シナリオ変更が簡単にできる訳がないからだ。もともと、沖縄の本土復帰とは、日米安保体制下での話であるが、どうも、沖縄の人々は、そこを勘違いしているようだ。

もちろん、この決定的な対立を多少先延ばしにすることは可能。しかし、それは事態のさらなる悪化を招くだけでは。
今後、どうするかは、沖縄の人々の判断に任せるしかなかろう。

いうまでもないが、「沖縄独立」の是非ということになろう。
来るところまで来た訳である。

大田昌秀・元沖縄県知事が2012年9月に語った通りである。・・・。「沖縄は歴史では一度も人間扱いされていなく、モノ扱いだった。多数派の目的を達成するための手段、捨て石にされた。多数決原理を根拠に少数派が差別されている。構造的差別だ。モノ扱いがこれ以上続くなら独立論も出てくる。」

実際、琉球新報も独立論を主張しているし、糸数参院議員、照屋寛徳衆院議員も熱心な独立派のようである。2011年の世論調査では独立派は5%で、現状維持6割だが、状況は大きく変わってくるかも。老齢化一途の衰退地域だらけの本土とは違うから、生活に自信がついてくれば当然の推移と言えるかも。

確かに、もともと本土とは独立の統治が行われた地域ではある。500年もの間、中国への朝貢国の地位にあったのだから。と言っても、中国統治下という訳ではなく、外交と交易については中国に従うという代物だったようだ。
もちろん交易独占といっても、昆布と茶の仲介貿易以外に魅力は無く、中国にとっては実利どころか負担のみだったと見てよさそう。要するに、他国が中国周辺で蠢かないようにするための、朝貢国ということ。
今や中華思想以外に拠り所がなくなった中国共産党も、朝貢復活に期待をかけていよう。

現代の沖縄も、地政学的にこうした過去の状況から逃れる訳にはいかない。
中国の朝貢国の道か、日本国の一部として歩むか、はたまた困難ではあるが米国の一部になる以外に手はない。
経済的自立による中立的存在の可能性も否定はできないが、東アジア各国相手の観光業と本土IT産業の芽しかなく、常識的には無理だろう。独立すれば、貧困化の道しかなく、あげくのはては言論の自由も無い人権無視の大国に飲み込まれるだけだと思うが。それも紙上の空論にすぎず、東アジアは軍事的に安定している訳ではないから、戦乱の引き金になる可能性もある。・・・その辺りの感覚が薄いから独立運動勃発なのだと思われるが。

と言うことで、沖縄の人々の選択にまかせるしかなかろう。
それが、期待に沿う結果をもたらすとは限らないし、皆、貧乏籤を引くことになる可能性も高そうだが、ここまでくればもう収まりがつかないだろう。

■大田昌秀・元沖縄県知事の発言掲載記事:臺宏士:【新聞】「沖縄独立論」を聞く衝撃 那覇で開催「マス倫懇」全国大会 朝日新聞 2012年11月9日11時29分
■琉球新報
<社説>琉米条約確認 自己決定権回復に英知を 2015年3月2日
自己決定権 民意の力で尊厳回復を 国連で不当性訴えよう 2014年1月3日
琉球民族独立学会、沖縄の自己決定権を国連に直訴へ 2014年12月21日
■琉球新報の県民意識調査[2011年11月]
「今後の日本における沖縄の立場」
現行通り(県) 61.8%
特別区(自治州)15.3%
  独 立   4.7%
■糸数慶子参院議員(沖縄大衆党)ブログ 「オール沖縄」 沖縄が切り拓く新しい道 2014年知事選と総選挙、沖縄からの報告 2015-02-02 14:47・・・"沖縄には「琉球弧の先住民族会(AIPR)」と言って琉球・沖縄民族を「先住民」であるとして、その自己決定権を回復しようとする団体があり、その活動は1999年から行われています。2014年8月、私はこの団体とともに、ジュネーブで行われた国連人種差別撤廃委員会の日本審査の場にいました。審査に先立って委員たちを前に沖縄の現状と琉球・沖縄先住民族の地における日米両政府の暴挙を訴え、自己決定権の回復を求めるためです。"
■照屋寛徳衆院議員(社民党沖縄2区)ブログ 「琉球王国」を主権国家・独立国家として認めない政府の態度を斬る 2015年03月09日
■大山朝常[元ゴザ市長]:「沖縄独立宣言―ヤマトは帰るべき「祖国」ではなかった」現代書林 1997年
■屋良朝助[かりゆしクラブ(旧名琉球独立党)党首 2006年県知事選6,220票]後援会HP・・・"自主独立 琉球共和国独立運動"
■松島泰勝[龍谷大学経済学部教授]:「琉球独立論」バジリコ 2014年7月
■大城&深沖縄キリスト教学院大学名誉教授]:「琉球独立論の歴史と現在 琉球のアイデンティティ確立への切なる願い」 現代の理論 第3号 2014年12月7日
■歴史
1372年 明(洪武)
 | 朝貢国
1875年 清(光緒)
1429年 建国
 | 琉球王国
1879年 沖縄県化(1872年琉球藩化)
 | 日本統治
1945年 米軍上陸(1952年米国信託統治[SF講和])
 | 米国統治
1972年 日本復帰


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