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2015.4.6

中華帝国の時代は来るか

TPPは時間切れということで、どうも頓挫方向に向かいつつあるようだ。
そう見えるのは、米国議会が大統領にファスト・トラック権限を与えそうにないから。未だにモヤモヤ状態との報道が流れる状況なのだから。しかも、反グローバル派や労働組合だけでなく、民主党右派までもが反オバマの立ち位置に転じ始めているとか。
こうなるとどうにもなるまい。

これは、新たな経済繁栄の牽引車となるべき経済基盤の構築に失敗したことを意味しよう。

そうなると、この先は、中国経済だけが頼みの綱となる。しかし、人民代表大会の李克強演説が示した通り、コスト上昇・デフレ続行というお寒い状況にある。それを突破するための政策も"当たり前"の代物と来た。要するに、リスクが高い改革無しには経済成長は難しいとの結論を述べただけ。
コレを真面目で結構と見なす訳にはいくまい。官僚制独裁国家には改革は無理筋なのは当事者が一番ご存知の筈だからだ。そんなことが可能なら、ここまで腐敗が進む訳が無い訳で。一般的な解釈なら、綺麗ごとを言わざるを得なくなったということ。

と言っても、世界経済はその垂涎モノの7%成長にブル下がるしかないのだ。それが冷徹な現実。

そんな状況下でのAIIB設立の動き。

どの先進国も老齢化待ったなし。最優先課題は経済再建と財政支出削減。中国が仕立てたバスに乗り遅れる訳にはいくまい。
ただ、中国の考える戦略的価値と経済関係強化とが相反する場面が待ち構えており、摩擦無しに進展する可能性は低かろう。
この一手で、グローバル経済がなんとかなるという代物ではない。

しかし、中国主導の経済発展の道が無い訳でもない。

それは、米-中蜜月による経済発展時代の再来ともいうべき、中-印蜜月の実現。
習独裁体制が盤石だとしたら、モディ政権の印度との間で短期間に密な交流体制構築は可能な筈。
資本が国内に溜まり過ぎて、投資先を欠く中国と、労働人口過多で資本過少の印度の組み合わせは理論的には最良である。
もっとも、政治的には、不可能に近いコンフリクトだらけ。ただ、中国は独裁国であるから、面子を傷つけない形での首脳合意さえできれば、すべてを御破算にした動きが可能である。

逆に、そんな踏み込みができないとしたら、独裁体制の意味が無いとも言える。中国共産党は内部対立激化の道しか残されていないことになろう。

もしも、その方向に一歩進んだとしたら、それは、中華帝国の時代の始まり。世界人口の巨大国が世界の趨勢を決めることになる。
言うまでもないが、印パ紛争は中国の力で平穏化することになり、アフガニスタンも中国圏に入ることで安定化する。米国型民主主義運動は霧散することになろう。そして、中-印枢軸による地域安定が進む。当然ながら、華僑・印僑のネットワークが強化され、東南アジアは完全に取り込まれることになる。一大経済圏が生まれ、それが世界経済の中心となる訳だ。

中国共産党が、そんな大風呂敷構想を持った指導者を生み出すことに成功したか否かが、やがて判明することになろう。

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