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2015.7.25

毎度お馴染み
「中長期の経済財政に関する試算」改訂版

経済財政諮問会議のハイライトはなんといっても「中長期の経済財政に関する試算」。ほとんど意味のないレポートを出し続けていることを示すための会議と言ってよいだろう。換言すれば、「中立的な機関に推計させヨ」という提言をしないことが役割ということ。

真面目に討議しているおつもりの方々には大変申し訳けないが、今回の報告書にも、大笑いさせて頂いた。
なにせ、安倍政権がもたらした好況を反映させ、2月バージョンを大幅改定したとのふれこみらしいから。

まあ、それがお仕事のエコノミストを大量に抱えているから作らない訳にはいかぬが、ほとんど無駄な大労作。

そもそも、老齢化が一気に進んでいる社会であり、多少の削減策など焼け石に水。年金・介護・医療・福祉の費用は大幅に嵩む一方。しかも、"税金が原資の工事費"と"税金が原資の給与"で食べている地域だらけ。財政赤字を減らすとは、ここに手をつける以外にないが、議員にとっては落選必至の施策だからできる訳がない。
ところが驚くのは、赤字はいくらでも続けることができるから、そんな些細なことは気にするな、とのブードゥー経済学が幅を利かしているのだ。彼らの呪術を使えば、そのうち税収が急増するから、信仰せよというのだ。確かに、信仰すれば、当座、カネが降って来るから有り難い宗教である。後は野となれ山となれ。
これが日本の実像。
その赤字の酷さは、ギリシアの財政が超健全に見えるほど。

しかも、集団安全保障体制へと移行しつつある時代とくる。ついに、米国は中東の産油地帯から手をひいていくのだ。米国頼みの、安価な安全保障で済ませるのは困難なのは自明。そのカネはどうするのかもほとんど議論できない国なのだ。

いい加減な前提で適当に数値を作った「試算」を公表し、まあ当座はなんとかなるのではとのくりかえし。

そもそも、安倍政権は、事実上の日銀による国債引き受けを原資とした、万遍なきバラ撒きを旨としている政権。だからこそ長続きしているだけのこと。
そんな政権の「歳出改革」とは言葉の綾。

早く、破綻対応の議論を始めないと。

だが、未だに、それはタブーらしい。・・・
あるエコノミスト曰く:「筆者自身は、日本が財政破綻をするとは決めつけていないが、もしものために備えることは無駄にならないと考えている。 」
まだこんなことを言わざるを得ないのだ。

と言っても、「動きのない預貯金接収」という、銀行安定の原資にまで手をつける筋悪政策を始めるらしいから、裏では破綻はすでに織り込み済。当たり前だが、それは銀行の資産であって、政府が接収すれば憲法違反。まあ、国家社会主義者としては嬉しくてたまらない施策であろう。ついに、バラ撒き赤字の粉飾のために、なりふりかまわずの姿勢に突入したということを意味する。

まあ、バラ撒き与党も、さらなる大バラマキ主義の野党も、国家社会主義をこよなく愛する人々が主流のようだから、"破綻すれば国家統制経済になるのでそれはそれで大いに結構"ということかも知れぬ。
特に、最近の野党は、時代に逆行していることさえわからず、興奮状態にあるようだ。なにが緊要な課題かもわからぬのだから手のつけようもなかろう。
国内に反米大野党が存在していたにもかかわらず、対米従属路線を採用したからこそ、半世紀にわたり戦乱にまきこまれず、米国が提供するインフラ上での経済繁栄を謳歌できたという、冷厳な事実も目に入らないのだろう。そして、ついに、その時代は終わったのである。そんな感覚皆無の政治屋とは一体なんなのだろう。
その頭脳構造は過去を彷彿させるものがある。・・・国際連盟脱退を誉めそやし、腐敗する政権を揶揄するだけがいかに馬鹿げたことだったかの反省も無いのだろう。無知で無責任な陸軍独裁を許したのはそういう社会の流れを先導した人達である。

ビジネスマンはそんな流れに抗して、世界を視野に、自由経済を護るために戦って欲しいもの。国家社会主義に迎合して安泰をむさぼるのではなく。
ただ、日本社会ではほぼ孤立無援。難しいか。
でも、財政破綻のコンテンジンシープラン作成位ならできるのでは。言うまでもないが、これを国家社会主義者にまかせてはならない。

(Source)永濱利:「テーマ:財政危機の末路〜負のスパイラルで経済混乱、円安・インフレへの備え必要〜」2015年7月21日 Economic Trends 第一生命経済研究所経済調査部

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