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2015.11.19

「政治とカネ」問題雑感

パンツがどうしたとか訳のわらぬ話が一段落したと思ったら、今度は香典がどうしたとかの議論。挙句の果てに解党すべきかどうかだと。

未だに、このセンス。
なんの勉強もせず、まともな政策論争一つしようとしない。ただただ、足を引っ張るタネ探し。この結果、政府が打ち出す政策が悪い方向に振れる。まあ、そうなれば、さらなる粗探しができるから嬉しいのであろう。
そもそも、内閣支持率は相変わらず約5割程度。にもかかわらず、こんな問題を国会で議論し、政権打倒と叫ぶのだ。喜劇もいいところ。もっとも、国政は、直接生活に関与する地方政治とは違うから、のんびりと議員稼業で暮らそうというご仁の溜まり場化している可能性も高い。そんな姿勢に驚く方がどうかしているということかも。

もっとも、海外派兵に繋がる悪法阻止ということで、大衆運動が今迄なかったほど盛り上がったらしいから、今度は政治腐敗許さずで失地回復を狙っているのかも知れぬ。
小生は真逆の効果しか与えないと思うが。おそらく、選挙では、コア支持層の票しか集まらず、ボロ負けだろう。

なにせ、経済政策はなに一つ打ち出せないのだから。健康保険一つとっても、危機が迫っているとの感覚も全く無いようで、どうするかのシナリオは官庁まかせ。野党の取り巻き学者連中は、何が面白くて仕事をしているのかはなはだ理解に苦しむ。不況になれば、反政権の動きが生まれるので、それをただただ待ち望んでいるだけか。
その主張とは、政権党以上のバラマキと、自分達の支持基盤の現状維持にプラスとなる規制強化だけ。どちらにしても、なんの方向性も感じられない。そんな人達に国政選挙で一票を入れたくなる流れが生まれるとはとうてい思えない。

一昔前の野党の姿勢に似てはいるが、それより悪質である。今や中産階級の自己顕示欲を満たすだけの勢力に変わってしまったからだ。昔は、近視眼的ではあるものの、貧困層救出とか、冤罪防止に力を注ぐ良心派が大勢活動していた。ところが、今や、そんな動きは僅少。貧困や冤罪問題は政権が悪いからと言うだけで済ますのである。

ここまでくれば、政治勢力と一線を画す若者が動き始めそうなものだが、動いたのが「反海外派兵」運動とくる。まさに同じ穴の貉。社会の歪みがここまで来たことがよくわかる。

ただ、こうした運動を、若者の政治意識高揚と見て、高く評価する向きもあるようだ。小生はピント外れと見る。かつての若者の反体制的動きとは根本的に異なっているからだ。

かつての政治的な動きは、現実はどうあれ「インターナショナル感」が根底にあった。ベトナム反戦運動には、欧米の若者と共有可能な心情があったからこその高揚。
安保反対にしても、世界中で米ソ代理戦争の様相を呈しているなかでの動き。現実生活に流されるだけでは、平和どころではないという見方があってこその反米運動。当然ながら、民衆運動弾圧を旨とする連中に対する怒りも抱えていた訳である。

つまり、世界は平和には程遠い状況との認識を踏まえてのこと。
素人的な大雑把な感覚だと、朝鮮半島での戦争で死者300万人。ベトナムで200万人。ローカルな各地での東西代理戦争の合計はわからぬが100万人にのぼるのかも。
その後も、アフガンでは終わりなき戦乱が続いているし、イラン-イラク戦争はどう見ても死者100万人レベル。
冷戦は終わったが、人民解放軍が関与していたスーダンの悲惨な状況や、ウクライナ内戦を見れば、状況が変わったと見ることはできまい。

しかも、それでも過去の方が状況は安定していたと考えるべきだろう。
米国がついに世界の警察官役を降りたからだ。しかも、稚拙で中途半端なやり方だから、今や、中東は地域大戦争の方向に邁進中。
言うまでもないが、東アジアはもともと平和には程遠い状況。米国の圧倒的な軍事力が地域を支配していたから安定していたに過ぎまい。核武装した北朝鮮と米国、日本とロシアの間での平和条約締結の見込みなど皆無だし、人民解放軍は台湾の武力解放がレゾンデートルとくる。しかも、中国共産党は、朝鮮戦争終結以後も、ソ連、インド、ベトナムと、一貫して挑発的国境紛争を続けてきた組織とくる。

ともあれ、米国政府の方針転換とは、この先の片務的な安全保障体制は一切お断りというもの。それにどう対処すべきかが問われているのに、それを一切無視すべしと主張する人々が大勢存在するのだから驚くべき事態と言えよう。
それでも、難民受け入れとか、世界の問題に対応するならまだしも、機雷除去作業への自衛隊派遣までまかりならぬとまで言い始めるのだから唖然。これ以上軽微な海外軍事活動などおよそ考えられぬ訳で、世界の安定にタダ乗りする所存と宣言しているようなもの。中産階級特有の自分だけよければ主義を臆面もなくひけらかした訳である。

昔なら、それも軽く受け流されただろうが、今はそういう訳にはいかない。
胡錦濤政権の発展途上国優遇方針により、WTOの仕組みが最終的に破綻させられたからだ。グローバルな自由経済自体の基盤が崩れ始めている状況であり、この先の平和維持は極めて難しいものがあろう。そんななかで、国際協調を進めるためにはどうすべきかの議論を封じさせる動きをして、大喜びするのだから、トンデモ運動と言わざるを得まい。極めて、危険な動きと考えるべきもの。

小生は、このような身勝手な人達が増えれば増えるほど、戦争に引き込まれる可能性が高まると見る。
解決が難しい現実問題を直視せず、議論を封じるだけの役割しか果たさないからだ。

無能な日本陸軍に牛耳られたのは、議論を封じた大衆の動きがあったから。ただただ政治の腐敗を追求するだけで、現実を踏まえた実践的意見を悉く無視し、国際協調の重要性を説く人達をも敵視したのである。
それに懲りず、又、同じことの繰り返しが始まった。

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