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2016.10.1

米国マスコミの恣意的報道[続]

メディアの大統領選挙の恣意的な報道には唖然とさせられる。
クリントン v.s. トランプの競争がデッドヒート中というトーンをできる限り醸し出そうと躍起になっているからだ。
いうまでもないが、「クリントン絶対支持」だからである。そこには、「オバマムード」を称えた反省感などはどこにも感じられない。

現状認識の一助になるような報道をできる限り避け、できる限り「反トランプ」感情が持ち上がるように報道を続けていると見て間違いない。換言すれば、クリントン選挙参謀のシナリオに乗ることを旨としているようなもの。

大統領選挙だけで考えれば、すでに民主党が候補一本化にこぎつけた時点でほぼ決着がついている。共和党がどう動こうと、クリントン完全圧勝で決まり。

この度の討論会でそれはさらに確実になったというに過ぎない。

これも間違ってはいけないが、議論内容がどうのこうのではない。それで結果が左右されることはおよそ考えられない。
クリントン完全圧勝のポイントは、あくまでも、ヒラリーの健康状態が万全であることを見せつけることができるか否か。誰がみても、健康に問題無しなら、大差でのクリントン勝利確実である。

ここらを誤解している人が余りにも多いのには、愕然とする。

マスコミは、クリントン v.s. トランプの微妙な支持率変化を大きく取り上げているが、たとえトランプ支持率がクリントンを数%程度上回ったところで、大統領選挙結果を左右することは考えにくい。(米国の選挙人制度を知っていれば、そんなことは自明。民主党大統領選択州は"ガチ"だから、すでに勝負はついているのだ。)・・・このことは、マスコミは、どうでもよい数字に関心を向けさせることに大成功していることを意味しよう。

こうしたマスコミの姿勢を理解しておくことは極めて重要である。

マスコミの腐敗とは、議会制民主主義制度が機能しなくなる前兆現象と見ることができるからだ。

内実からいえば、こういうことではないか。・・・
ともあれ、クリントン圧勝予測報道を避ける。ひたすらトランプのようなトンデモない御仁に勝たせてよいのかと言わんばかりの解説を付けたいが故である。

それは何故かといえば、議会選挙で、トランプ的な国粋主義者が急伸長しかねないからであろう。
議会は共和党多数が続き、大統領とのネジレ政治が続行すると予想されるが、問題は、そのこと自体ではない。なんといっても恐ろしいのは、共和党内の穏健政治勢力が一掃されかねない情勢がうまれかねない事態に立ち至っていること。

クリントン v.s. トランプとは、従来型の政治文化を打ち壊すべしという戦いが始まってしまったことを意味する。
いわば、疑似的国際主義 v.s. 反グローバル企業的国粋主義の戦いが表立って発生したということ。
しかも、この事態は相当に深刻である。後者には勢いがあるからだ。

ついに、大統領が行使した拒否権が覆されたが、その再可決結果が凄い。・・・
  上院:賛成97、反対1
  下院:賛成348、反対76


法案の真意は別として、反グローバル企業的姿勢を選挙区民に見せる必要がでてきたことを物語る。
オバマ大統領は、最後の最後まで、マスコミを従えて、レトリック政治を貫いた。そのお陰で、米国社会はここまで変質してしまったのである。

オバマ政治の現実をよく見る必要があろう。
現実を俯瞰的に見ようとしない、市民運動家的発想による政治が追及されたため、世界の不安定化が一挙に進んだのである。その観点で見るなら、世界大戦後最悪の大統領ということになろう。・・・
  事実上凍結されていた核兵器PJに予算をつけた。
  人民解放軍の海洋軍事力膨張をいち早く承認した。
  中東〜北アフリカの大戦乱へと歩を進めた。
  金融主導の経済発展体制をさらに深化させた。
  国際貿易量増加の流れを止めた。


(参照) "米議会、オバマ大統領の拒否権初めて覆す 「テロ支援者制裁法」成立" ロイター 2016年09月29日10:06JST

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