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2017.1.18

朝鮮戦争は不可避では?

希望的観測は止めるべきだと思う。

俯瞰的に"事実"を眺め、全く異なる政治風土であることを頭に入れ、自分の頭で考えるにこしたことはない。

その場合、中華人民共和国と北朝鮮は、全く同じ軍事独裁の政治構造であることを忘れてはまずい。中華帝国樹立でまとまっている国家ということ。一見違うように見える韓国の精神風土もそれほど違っていない可能性もある。そこでは、宗族第一主義の儒教的発想が尊ばれた封建時代の思想が未だに生き続けていると言ってもよいだろう。ここが肝要なところ。

戦乱を嫌って逃げて来た様々な人種が雑種化しながら棲み付いたかのような日本列島全般の文化とはかなり違うから、誤解し易いので注意が必要だと思う。

このような国々では、武力による覇権確立と支配地域の拡大は、国家観に組み込まれている。そして、儒教的宗族重視主義をバックにした独裁者と軍民官僚による、統治が行われる。
それには、4,000年もの歴史があり、宗族重視主義である以上、組織内部の角逐は凄まじいものになるし、独裁者側近では常に権謀術数的なイザコザがつきない。しかも、政策転換時の粛清は不可避とくる。そうした古代国家の体質がそのまま現在の国家に温存されているのである。

この視点を欠落すると、流れを見誤る可能性大では。
例えば、「瀬戸際外交」という解説をよく見かけるが、ほとんど無意味な見方。目を曇らせるだけかも。
見るべきは、そのような小手先の姿勢ではなく、大きな流れ。

中華人民共和国で考えてみよう。解放軍からすれば、軍事覇権による領土拡大こそが、最重要課題となろう。さすれば、どのような状況にあるかは自明。・・・
プライオリティNo.1は台湾編入。明日起こるとは思えないのは、独裁者の権力が維持されており、"急ぐな"と指示しているからにすぎない。戦争勢力の独裁者が君臨すれば、方針は変わる。この先、どうなるかは誰にもわからない。
しかし"急ぐな"と同時に"急げ"と命じているものもあり、それは日本のアジア地域への影響力排除。

背景を冷静に見つめれば、そんなことは一目瞭然。
すでに、米国型ルールで進んできたグローバル化は中国によってWTOで明確に否定されたから。次の標的は東アジアでの日本的貿易ルールとなろう。
TPPにしたところで、オバマ政権が力を入れた訳ではなく、なかばレトリック。周りの国々が中国ルールはたまったものではないということへの対応に過ぎない。そういう意味では、日本政府の外交努力は特筆モノ。

それが、軍事分野では、誰にでも見える形で現れた訳である。
要するに、オバマ政権は長期に渡り、西太平洋地域からの段階的撤退を"実現"したのである。換言すれば、東アジア海域を中国圏と認めたということ。無い袖は振れぬだ。(米国新政権が今更舵を切ろうとしても、すでに西太平洋では軍事基盤が弱体化しすぎ。空母を送ったところで、相対的に対空対潜水艦能力が著しく低下している以上、張り子の虎のようなもの。面子維持ということで、派遣を容認して頂いているというのが実情。)
一方、人民解放軍はこの8年に大幅強化された。
どう見ても、台湾の軍事施設を一瞬にしてミサイルで瓦解させる規模の配備はすでに完了している。さらに、大型水陸両用飛行艇配備と来た。(そもそも、日本以外に水陸両用艇製造が必要な国など考えにくかろう。特に、大陸国家にはおよそ不要な軍備。)
南沙諸島の軍事基地化にしても、サポート施設や人員を欠く岩礁であり、維持費用は膨大。それに敢えて踏み切った訳である。これらすべて、隠れた動きではなく、オバマ政権ご承認済みの動きと言ってよいだろう。
当然ながら、東アジア全域で諜報謀略活動も活発化していると考えるべき。これが、一番憂慮される問題だが。

つまり、軍事分野では、オバマ政権は、覇権国としてのレトリック的発言を、中華帝国独裁者から承認して頂いたというのが実情である。それ以外は"実質的"に、すべて中華帝国の方針に従っただけ。
経済構造改革にしても、日本同様に外圧的効用扱いで米国に対応しているのは明らか。思想を受け入れる訳もなく、すべて適宜先送りである。(中央政府は財政破綻の可能性もなく、人民統治さえ問題なければどうということはない。なにせ、政治基盤が安定していれば、財政が破綻していて、経済ゼロ成長でも、バラマキで経済を支え続けることができるとの教訓を日本から学んでいる訳で。)
と言うより、米国は経済が揺らげば、即、政治基盤が崩れるから、長期的にみれば米国は中国に膝まずくしかないことを見透かされていると見るべきだろう。("真面な"ミクロの話を寄せ集めた解説は、こうしたマクロ感覚を失わせるので要注意である。グローバル化させた金融取引やサプライチェーンを突然反故にされたりすればどうなるか考えればわかる話。)

冒頭で触れた通り、中国は、本質的に北朝鮮となんらかわらない国である。そう見えないとしたら、独裁者の力が安定的に維持されているにすぎない。
ここが重要なところ。

つまり、北朝鮮の独裁者の力は、中国ほど盤石ではない可能性があるということ。
中華型帝国とはそういうもの。外からは判別し難いが、お飾りの帝のことさえある。

先代の北朝鮮の独裁者は、軍部のガス抜きに度々様々なことを行ってきたが、どう見ても基本姿勢は戦争回避であった。しかし、その死後、相当に不安定化したのは間違いない。戦争体制を煽りに煽ったし、粛清者も多かったからだ。この一時期を経て、見かけ上は、現独裁者の覇権が盤石になった感がある。
だが、中華の歴史を考えれば、こうした動きは戦争勃発に繋がってもおかしくなかろう。内部抗争が、開戦派と非開戦派に色分けされたりしかねないからだ。たまたま、世代交代の際に、王朝内の中国寄りの非開戦派勢力が勝利したから、そうならなかっただけの話だろう。これを「合理的に考えて戦争は無い。」と見ていたのが識者。小生は、王朝政治に合理性が通用する訳がないと思う。
内部の角逐の結果で方向が決まるだけのこと。どちらに転ぶかはわからない。
そんなことより、見ておくべきは、民族独立を果たした輝かしい金王朝国家としての"誇り"であろう。つまり、その第一義というか、外部から見れば悲願にすぎぬが、南朝鮮の"解放"のために立ち上がることが宿命なのである。韓国とは、米国が傀儡として作ったものでしかなく、南の政府を潰して朝鮮半島の大国を実現すべしと考えている訳だ。しかし、"合理的"に考えたとすれば、米国と交渉し、北朝鮮による韓国併合が実現できる訳がないとなろう。従って、朝鮮半島統一実現は武力しか有りえないと主張する国粋勢力が力を持つのは自明。
独裁者としては、宗族王朝維持のためには、外交努力で戦乱を防ぎたくなるのは当たり前だが、いずれ金王朝はその方向で動く以外になくなるだろう。
軍部強行派の開戦論が高まるのは間違いないのである。
(様々な調査データがあり、どれにしても信頼性は定かでないが、どうも、韓国国民の3〜4割は親金王朝で、半分近くが反米感情を持っていそう。しかも、信仰宗教と相反するにもかかわらず、宗族第一主義の儒教のしきたりが保たれている。…この数字をもとに北朝鮮軍部は判断することになる。)

このように考えていくと、戦争勃発は必然と言ってよいだろう。しかし、それは何時どのような形で勃発するのかは、予想できない。
かろうじてできることは先送り。オバマ政権が中国に丸投げして、放置を決め込んでしまったので、今さらどうにもならないのである。

"合理的に考えれば"、北朝鮮軍部が弾けでもしない限り、米国が北朝鮮を攻撃することは現状の米軍の力量では無理。米国自称の示威行動とはオバマ政権のレトリックと五十歩百歩。それ以外に、なにもできないからである。マ、要するに、手はなにもなく、ドン詰まり。
従って、示威行動がどんなレベルのものであろうと、北朝鮮の姿勢を変えることはありえない。そして、米国からの覇権禅譲路線をひた走る中国にとっては、この地での戦乱ほど迷惑なものはないから、プロ北朝鮮を貫きながら、両者の面子を傷つけないようにその場しのぎで適当に動くだけ。(同床異夢の6ヶ国会議とは、米国国務省の面子維持のためだけに行われたと言っても過言ではない。)
ただ、危険なのは、米中覇権交代の流れの埒外に置かれたロシア。軍事大国としての栄光の日々復活を望んでいるとすれば、ここでのドンパチ発生は歓迎すべき出来事となるからだ。

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