表紙 目次 | 2017.4.23 シリアへのミサイル攻撃は成果ゼロアサド政権の化学兵器による攻撃を止めさせるという名目で、トマホーク巡行ミサイル攻撃が行われた。それなりに周到に行われたのは間違いない。ロシアに事前に通達し、軍事顧問が当該領域から離れることができるようにしたようだし、イスラエルに対しても報復攻撃の可能性を警告したようだから。 ただ、その後に、国連でそれなりの動きが始まるなら成功といえるが、その兆候はなさそう。 ロシアは海軍と空軍の基地整備を実現したから、アサド政権が安泰となった以上、そろそろ手じまいにしたい筈と読んだ取り組みだろう。そうなれば、米露協調で、国連ベースの和平プロセスに踏み出せることになる。 悪くない仕掛けではあったが、目論みはハズレたようだ。 そうなると、全く意味なし。各国が様々な声明を出したところで、それにはなんの価値もない。 米国には、包括的なシリア政策は何もなさそうだし、この先は手詰まりが続くだろう。 米国議会への事前連絡もしていないそうだから、その副作用もでてくるかも知れない。 結局のところほとんど意味の薄いシリア関与だったことになる。 ・・・どうも、この手の"当たり前"の解説が余りにも少なすぎる。 中国首脳へ米国の姿勢を見せつけたとか、北朝鮮への警告といった直接関係ない地域と結び付けた解説が多すぎる。 当該地域がどういう状況なのかの理解が最初の一歩だと思うが。・・・ アサド政権の悪行は、もともとから。この地域を、少数派が支配するのだから、それしかないであろう。民主主義が通用するような地でないのは自明である。従って、化学兵器を使わない虐殺ならかまわないのか、というのが一般人の常識的反応だろう。なにを今更という印象しかないのでは。ただ、中東一帯から米国は手を引く訳ではないことを示したとも言えるので、安堵した産油国は多かろう。 ともあれ、シリアで停戦の方向に向かわせるには、まずは米露の意思一致ありきである。しかし、それは無理であることが明らかになってしまった以上、難民はさらに増えるし、内乱はいつまでも続くことが決まったと言ってよいだろう。 換言すれば、米国ができることは、1つしか残っていない。 オバマ前大統領を外交行脚させ、最終的に反アサド勢力に謝りに行かせること。マ、そんなことができる訳がないが。 ともあれ、反アサド勢力は敗退が決まったのである。(オバマが火をつけておいて、アサド退陣などできもしない要求をしておきながら、反アサド勢力に表だった武器援助をしなかったのだから当然の結果。スンニ派経由の裏ルート援助が行われ、ほとんどが聖戦原理主義勢力に流されたのは明らかで、穏健派はさらなる劣勢に甘んじることになったのである。しかも、当時の国連事務総長が極めてトンチンカンな人物だったことも、こうした動きを加速させたともいえる。) 要するに、反アサド勢力の敗退が決定的になったからこそ、ロシアが早く決着をつけるべく乗り出してきたのである。 それがある程度奏功し、あとは、いかに早く停戦にこぎつけるかが緊要な課題となっているのである。しかし、今のままなら、どうあろうと力で反アサド勢力をねじ伏せるまで内戦が続く。しかし、鎮圧平定は無理。虐殺が延々と続いていくのである。 (アサド軍は全土を支配できる陸軍力を欠くから、そのような手を使うしか支配を広げることはできないのである。) 政治への発言の目次へ>>> 表紙へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com | |