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2003.10.10 
 
 


話題の町工場 [日進精機(1:主力事業)]…

 先細りの職人技術「キサゲ三面摺り」を武器に成功を収めたことで、有名になった町工場を眺めてみた。
  ・ 「長島精工」

 長島精工は、マスコミにはよく紹介されが、所在地は京都府城陽市である。大田区や東大阪の町工場密集地域にあるのではないから、町工場としての印象は薄い。
 そこで、同じように注目を集めている、大田区の日進精機も取り上げてみた。こちらは、精密金型技術で世界のトップクラスと言われている。
 [1996年に、マレーシアのマハティール首相が、視察訪問し、技術移転を要請したことでも、有名である。]

 大田区の町工場は数が激減したとはいえ、まだ6,000社以上が活動しているという。機械金属工業が主体だ。企業の数は多いが、家族だけで運営している企業も多く、従業員数が100名を越えると、大手である。日進精機の従業員数は170名だから、相当な大手と言ってよい。
 500社を越える大田区の金型メーカーの「輝ける星」といえよう。

 金型は、自動車や家電製品の大量生産に不可欠だから、日進精機が日本の産業を支えているイメージもある。そのため、モノ作りで成功するコツをうかがおうと、全国から訪問者が絶えないようだ。
 (http://www.nissin-precision.com/Pressrelease.html)

 なにかヒントを得られただろうか。

 我々も、公知資料で考えてみよう。

 日進精機には、3つの主力事業がある。順に見てみよう。
 (目立たないが、自社製金型を使ってプレス品生産事業も行っている。ここに、強みを生み出す仕組みがあると思う。但し、メインビジネスとして扱われていないから、この問題は後で議論しよう。)

 第1のビジネスが、精密プレス金型製造である。このセグメントでは国内では大手といえる。競争力の源泉は、深絞り順送金型の精度の良さとされている。対象は、小型モーター用部品等の微細部品の精密プレス用金型市場だ。切削加工生産で作ってきた微視部品を、プレスによる立体成形で生産することで、大幅なコストダウンを実現できるから、高額でも日進精機製金型を使う訳だ。

 第2のビジネスが、マハティールが絶賛したという、リフレクター(自動車のリアランプや道路の反射鏡に使用されている光を正確に反射する部品)用金型である。競合会社は4社(米/カナダ/日/独)あるらしいが、圧倒的なシェアを誇る。グローバルで5割近いのではないかと思われる。

 第3のビジネスが、1992年に電気通信大学と共同開発した、パイプの曲げ加工機である。金型無しで、曲げ半径に応じて自動的に三次元曲げ加工ができるものだ。2000年に、第25回「発明大賞特別賞」を受賞している。といっても、特殊だから、数十台の市場だろう。

 第2や第3のビジネスは、なかなか真似ができないから、安泰だろうが、これだけでは、よくあるオンリーワン町工場にすぎない。日進精機の凄いところは、第1のビジネスで競争力を発揮している点にある。

 この第1のビジネス、「精密プレス金型製造」は、長島精工とは業態が全く違う。
 長島精工は、1分野の商品に徹していた。多少の仕様の違いはあるが、同じものをできるだけ多く作る体制だ。少量ではあるが、そのなかでマスプロダクション型仕組みと類似の体制を敷いていた。

 一方、日進精機は、特注品受注ビジネスだからそのような体制は不要だ。

 当然ながら、両者を並べて「町工場成功の教訓」など語れまい。


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