電波腕時計の時代か…
産業の将来が読みづらい時代が到来した。
典型例として、腕時計を見てみよう。
この産業はもともとは精密機械産業ということで、スイスが世界を制覇していた。
これに対して日本企業が挑戦したのである。高精度な廉価品を提供し、急速に競争力をつけた。
そして、地位逆転の転機が訪れる。「ぜんまい動力+テンプ」の機械式から「電池動力+クオーツ」の電子式への移行が発生したからだ。この代替で、一挙に日本企業が飛躍する。
ところが、電子式の宿命で、しばらくすると大量生産による価格低下が始まる。
その結果、香港/中国企業の激安時計が市場を席巻してしまう。現在でも、深センと東莞市を中心に、中国は、生産個数シェアでは世界の8割を越えていると思われる。
当然ながら、日本企業は業績低迷に悩まされる。
駆動パーツでは、セイコーグループとシチズングループが圧倒的シェアを占めているにもかかわらず、最終製品市場での地位は低下してしまったのである。
・・・良く知られているストーリーである。
この変化を体感するには、高年齢層と若者に、代表的な時計企業名を質問するとよい。日本市場の大変化がよくわかる。
高年齢層なら、まず間違い無く、国産ならSEIKOとCITIZEN、舶来はROLEXとOMEGAといった回答になる。一方、若者なら、すぐに返ってくる名前は、おそらくCASIOだ。そして国産のSEIKOを付け加える。海外ブランドは、人によって違うが、SWATCHがあがってくることが多い。その上で、高額商品として、ROLEXが来る。なかには、海外時計ブランドを沢山並べる人もいる。
これはあくまで現状の話である。この先を考えると、まだまだ変化する可能性が高い。
すでに、次の技術の波が始まっているからだ。
動力の技術革新は、手巻きぜんまい→自動巻ぜんまい→電池からさらに進み、動力発電、ソーラー、熱電発電が登場した。
一方、時刻設定技術もテンプ→クオーツからさらに、内蔵アンテナで電波を受信して時刻を自動修正する技術が商用化された。
「電池動力+クオーツ」の時代から、次世代へ変わりつつある訳だ。
電波時計で先鞭をつけた企業は、日本の電波時計市場で圧倒的なシェアを保っていると言われている。
どの技術にしても、日本企業が先頭を走っている。
高度な技術を凝縮した製品の投入で、日本企業の復活が始まっているように見える。
→ (2004年6月29日)