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2004.12.3 
 
 


松茸のお山は残るか…

 2003年は稀に見る松茸不作の年だった。
 とはいえ、市場で流通しているのはほとんどが中国産で、国内産は3%程度だという。もっとも、これは量の話で、国内産は香りが素晴らしいので、小売価格が数倍に跳ね上がるから、金額ベースで見れば存在感は薄れてはいないそうだ。

 実際、シイタケ生産日本一を目指す岩手県岩泉町のマツタケ生産量を見ても、1999年には11トンに迫っていたのに、2003年は僅か651Kgと大きく落ち込んでいる。(1)

 この町には、12,546haもの広大なアカマツの人工林があり、まつたけ山づくり事業を進め、ブランド化に励んできた。
 1993年には岩泉まつたけ事業協同組合が設立され、森林組合が岩泉まつたけ研究所を運営しているのだが、それでも増産は難しいようだ。(2)

 マツタケ菌は、松の根に感染して共生関係を築くのだが、菌自体が非常に弱く、成長力も低いため、富栄養化が進んで、様々な微生物が繁殖していると、生存競争に敗れてしまうと考えられている。従って、簡単に増産体制を整えることができないのである。

 1999年には、「マツタケ菌の大量増殖」(3)が日本菌学会で発表されたことがある。ナガイモ培地で菌を育てると、成長力がシイタケ並になるという報告だった。

 マツタケ人工栽培の試みは江戸時代から、と言われており、様々な取り組みが図られているが、なかなか上手くいかない。

 ところが、2004年11月に、山形県米沢市の民間研究家が培養した種菌の増殖に成功し、シイタケを育てることができたというニュースが飛び込んできた。(4)
 と言っても、マツタケのつぼみが発生するメカニズムや、アカマツでなければ成長しない理由が判明した訳ではなさそうだから、人工栽培が実現したとは言えそうにないが、一歩前進したのは間違いなさそうだ。

 ・・・というように、どうしても、人工栽培の夢をかなえる話になってしまいがちだが、マツタケ生産産業はその時、どのような業態になるのか、じっくりと考えておく必要があろう。

 今や、椎茸、舞茸、エノキダケ、シメジ(ヒラタケ)等の人工栽培は当たり前になっている。
  → 「知られざるシイタケ栽培技術発祥元」 (2003年7月6日)

 これらのキノコ生産産業は地域の林業との位置づけだが、現実には、産業が森を育てているとは言い難い。森不要の林産物生産産業が勃興し、従来型の林業を代替していると見た方が正当だと思う。
 つまり、人工栽培技術開発が、林業の転換を促進しているのだ。

 ところが、松茸だけは、アカマツ林なくしては育たないし、下草が生えすぎると消滅しかねないから、手間のかかる管理が必要だった。管理コストは膨大だが、高価な茸なので、どうやらペイした訳だ。
 しかし、これがいつまでも続けられるとは思えない。

 マツタケ山をつくり続けるつもりなら、(5)今のうちに、競争力が発揮できる新業態を案出する必要があるのではないだろうか。

 --- 参照 ---
(1) http://www.town.iwaizumi.iwate.jp/rinsui/ringyo.htm
(2) http://www.echna.ne.jp/~iwaizumi/txt/h02.html
(3) http://www.pref.akita.jp/morigi/research_results/research_g_h11.htm
(4) http://jyoho.kahoku.co.jp/member/backnum/news/2004/10/20041025t55005.htm
(5) http://homepage.mac.com/hitou/satoyama/bn/014yosimura.html


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