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2005.1.25
 
 


年収100万円生活の危険性…

 税金の基礎控除額(38万円)と最低の給与所得控除額(65万円)の合算額は、生活に必要と考えられる最低レベルと見てよいだろう。従って、世帯年収103万円とはギリギリの生活を意味している。

 常識で考えれば、年収100万円程度の世帯とは、働くことができない人や、年金世代が中心だろう。低所得化を避けようとしても、逃れるすべが無い人達である。

 一方、進んで年収100万円程度の生活に甘んじる人達もいる。
 若いミュージッシャンや劇団員、起業を図る人達は、低所得であっても、将来を夢見て頑張るのである。
 とはいえ、このような人は少ないと思う。

 もっとも、夢が実現する確率が極めて低い職種もあるので、必ずしも数が少ないとは言えないかもしれない。
 なんと、アニメーターの5割は年収200万円未満なのである。(1)それでも、好きだから、低所得生活を受け入れているのだろう。

 ところが、最近のフリーターには、こうした夢や希望とは無縁のままで、単なる低所得生活を平然と受け入れる人が多いらしい。
  (現実に、フリーターの年収は100万円強といったところ。(2) 但し、扶養家族の資格を失わないために低所得を選定する人など、様々なタイプが混ざっており、実態はよくわからない。)

 しかも、そうした生活を長く続ける人が結構多いという。

 驚いたことに、そんな生活でかまわない、と考える若者が急増しているそうだ。なかには、すでに、このタイプが主流化していると語る人さえいる。

 先日、ゲーム三昧のマニアの生活実態に気付かされたが、「最低限の仕事だけで食べていく」型の人間がそこらじゅうにいるようだ。(3)
 面倒なことはできる限り避け、多少、好きなことができて、食べていければ、それで満足なフリーターが多いのである。こうした人には、100万円生活の本(4)など不要である。自然な成り行きで100万円生活を続けているからだ。

 このような「最低限の仕事だけで食べていく」人達には、「何時かチャンスが巡ってくるから、若い時は挑戦すべき」とのアドバイスなど、耳に入るまい。
 おそらく、300万円生活の議論など、眼中にない。
  → 「300万円生活は可能か? 」 (2004年7月12日)

 心配なく毎日を送れる人達の話など、聴く気もしない、ということである。

 年収300万円! えらくリッチじゃないか、というのが本音であろう。

 とはいえ、年収100万円生活の現実感がわかなかったのだが、横須賀市居住、1970年生まれの技術者氏の『貧しい食事』報告を眺めて、納得することができた。(5)

 この技術者氏によれば、2004年の年間食費が352,042円だったという。ここには飲み会費用や会社で集める茶菓代金も含まれている。 (一般の扶養親族の控除額38万円と同レベルな訳だ。)
 ちなみに2005年1月5日の新年初出勤日のデータを見ると、
  「 朝:豆乳+クッキー 150円
   昼:かけ蕎麦+サラダ 450円
   夜:ワカメ蕎麦+おにぎり@えきめん屋横須賀中央店 400円
   合計1000円の豪華食日だった。」

 う〜む。

 このほか、出費として、
   光熱費:15,000円/月 (水道、電気、ガス、電話、プロバイダ)
   医療費:10,000円/月 (病院、針治療、常備薬購入等)
   お小遣: 5,000円/月
 があり、これが、年間36万円である。

 これで住宅/衣料費を月3万円程度に抑えることさえできれば、年収100万円強ですむ。
 この食生活で不満が爆発しないなら、住める所さえ確保できれば、のんびりと生活できるとも言えそうだ。
 (横須賀市の最低賃金は708円だから、1455時間働けば103万円稼ぐことができる。)

 従って、こんな生活者が急増しているという話は、正しそうだ。
 働いたところで、たいした収入増が期待できないなら、食べられる最低収入を得れば十分と考えてもおかしくない。

 ところが、年収100万円生活者は、こうした「最低限の仕事だけで食べていく」型の人達だけに留まらないらしい。

 「アナタにだって起こり得る!」(6)と語る人がいるのである。

 う〜む。

 もちろん起こり得る。しかし、年収300万円へとステップアップが図れるなら、たいした問題ではない。
 だが、そうでないとしたら・・・。

 「最低限の仕事だけで食べていく」型生活者が増えているということは、このステップアップが簡単ではなくなったことを意味しているのかもしれない。
 それが無気力なオタクを増やしている可能性もある。

 本当なら、恐ろしく危険な兆候である。
 社会から気力が消えかねないからだ。

 --- 参照 ---
(1) http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/wadai/price/archive/news/2004/20040603ddm008070077000c.html
(2) UFJ総合研究所「フリーター人口の長期予測とその経済的影響の試算」2004年3月
  http://www.ufji.co.jp/publication/report/2003/03116.pdf
(3) http://www.randdmanagement.com/c_media/me_014.htm
(4) 実藤秀志 著「年収100万円で楽しく幸せに生活する本」経済界 2002年
  横田濱夫 著「明るく賢く暮らす年収100万円安心!生活術―発想の転換で「幸せな人生」を手に入れる! 」経済界 2002年
(5) http://www2.diary.ne.jp/user/61659/
(6) http://www.fusosha.co.jp/spapage/2004/spa291101.html


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