↑ トップ頁へ

2005.9.5
 
 


デジタル放送ロードマップの破綻…

 2005年7月の民生用電子国内出荷統計が発表された。

 不調である。
 理由は“アテネの反動”らしい。(1)

 デパートで紳士服売り場に活気が戻ってきたというのに、本当かな。

 しかも、すべてが悪いのではない。大型液晶テレビだけは好調である。
 ポイントは“大型画面”である。
2005年6月テレビ国内出荷(2)
タイプ 実績 前年比 BSデジタル
の比率
CRT 27.2万台 62% 4%
プラズマ  3.6万台 100% 97%
液晶 32.3万台 144% 60%

 しかし、テレビ全体で見れば好調とは言い難い。
 総個数で見て上向きという訳ではないからだ。

 なかでも特徴的なのは、BSデジタルの比率である。
 アナログ放送は2011年7月24日までしか見れないと決めておきながら、未だに遅々とした進展のまま。
 ブラウン管(CRT)テレビなど、ほとんどデジタルチューナーが付いていない。高価格の液晶テレビでも6割に過ぎない。

 普及率10%を越えるとそこから一気に普及というシナリオが喧伝されているが、デジタル化政策の失敗を覆い隠すためのお話にすぎない。
 いまだにデジタルチューナーが付いていないテレビが大量に販売されているのは失敗以外のなにものでもない。

 放送行政が招いた、当然の結果と言えよう。

 本気でデジタル化計画を継続する気なら、デジタルチューナーを欠くテレビに「2011年7月24日以降は粗大ゴミ」と明示する必要があろう。
 テレビの補修部品の保有期間は8年ということになっているのに、今販売しているアナログテレビの寿命はあと6年だからだ。

 要するに、このような表示ができないということは、アナログ放送の打ち切りはしないということに他ならない。
 こうなるのは、相当前に予測できた筈だが、行政は動こうとしなかった。

 これは怠慢というより、当然の成り行きである。

 政策に、納得できる論理を欠いているからだ。利権保護と産業育成をまぜこぜにした、さっぱり方針がわからぬ政策だから、計画変更は、新たに計画を作るより難しい。計画変更となれば、様々な損害が見込まれ、新たな利権問題が加わる。アナログ放送廃止の延期について、表立った議論はできないのである。

 こんな行政を続けているから、テレビ放送産業が衰退していくのである。そして、テレビの購入意欲も下がることになる。
  → 「理解できない放送政策」 (2003年9月9日)

 --- 参照 ---
(1) http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0508/25/news026.html
(2) http://www.jeita.or.jp/japanese/stat/shipment/2005/ship_06.htm


 侏儒の言葉の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2005 RandDManagement.com