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2006.4.6 |
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科学思想の流れ…ギリシア時代の科学者というと、子供の時に習ったアルキメデス(BC287〜BC212年)を思い出す。浮力に気付き“Eureka”と叫んで風呂から裸で飛び出したとの逸話は忘れようがない。この時代は、数学・物理学者といえば、アリストテレス(BC384年〜BC322年)のように哲学者が兼ねていた。あくまでも教理主導だったのである。そのなかで、金に鉛が混入していないか探るという、実践的な課題へ挑戦したのだから親しみが湧くのは当然かもしれない。 もっとも、当時、彼の仕事が注目されたのは、そんなことではなく、もっぱら新兵器考案だったという話もある。なにせ、敵のローマ軍から一目おかれていたそうだ。 先端技術は軍事というのは歴史的伝統である。 しかし、以後のキリスト教帝国は、このような科学・技術の発展を抑え、神学を重視した。 その一方、こうしたギリシアの科学思想を受け入れたのがイスラム教帝国だったというのが、なんとも不思議である。 当時の世界の中心はイスラム帝国で、その周りに、大国中国と、沈滞欧州といった構図だったのである。 → 「イスラム宗教国家について勉強してみた」 (2005年3月13日) 欧州がこの構図を転換できた理由の一つは、新しい科学思想の確立にあったと思う。 その発端は、デカルトの「方法序説」[1637年]である。歴史の教科書で必ず教えてくれるが、教師は内容を噛み砕いて説明しないから、忘れ去られてしまう本である。 現代科学の基本はここにあると考えるなら、もう少し熱意を込めて語りそうなものだが。 早い話、現在、我々が常識と見なしている科学の本質を、初めて明確に打ち出したのがデカルトなのである。 “語学・歴史・雄弁・詩歌・数学・神学・スコラ哲学・法学・医学は、有益な学問ではあるがどれも不確実で堅固な基盤を持っていない”という言葉がすべてを物語る。 [数学/医学, 社会科学が含まれている.] そして、以下の4原則を打ち出す。 (1: 明証) 私が明証的に真理であると認めるものでなければ、 いかなる事柄でもこれを真なりとして認めないこと。 (2: 分析) 検討しようとする難問をよりよく理解するために、 多数の小部分に分割すること。 (3: 総合) もっとも単純なものからもっとも複雑なものの認識へと至り、 先後のない事物の間に秩序を仮定すること。 (4: 枚挙) 最後に完全な列挙と、広汎な再検討をすること。 論理と分析で問題を整理するという科学思想をはっきりさせたのである。 世界には目的性があるとの観念論に基づく、経験と伝承を重んじる「科学」から、原理発見の科学に変わったのである。 こうした思想が結実したものが、ニュートンの「Philosophi Naturalis Principia Mathematica(プリンキピア)」[1687年]と見ることもできよう。 しかし、その思想は、アインシュタインによって、根本から覆えされることになる。 「光量子仮説」「ブラウン運動の理論」「特殊相対性理論」と言えば、素人にしてみれば矢鱈難しそうだが、本質を考えれば主張の核心を簡単に記述することもできよう。 1つ目は量子力学。 --- 世界は連続的なものではないということ。 2つ目は統計力学。 --- 現象は確率的なものであるということ。 3つ目は相対性。 --- 観察者も影響を受けているということ。 このことは、よくわからない現象でも、仮説を立てて、確率的に眺めれば、どう対応すべきかわかるとも言える。 お蔭で、原理性を欠くように見えた社会科学の領域に「科学」が入りこみ始めたと考えることもできよう。 今や、金融業では、ブラック-ショールズ方程式なくして、ビジネスできない状況になったのが象徴的である。 こんな話に限らず、社会に大きなインパクトを与える技術が、ハードからソフトに移ってきたとの感触を持つ人は多い。 これは、技術思想が、ニュートン型から、アインシュタイン型へと変化してきたと言うこともできそうだ。 --- 参照 Wikipedia --- ・「方法序説」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B9%E6%B3%95%E5%BA%8F%E8%AA%AC ・「自然哲学の数学的諸原理」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E7%84%B6%E5%93%B2%E5%AD%A6%E3%81%AE%E6%95%B0%E5%AD%A6%E7%9A%84%E8%AB%B8%E5%8E%9F%E7%90%86 ・「アルベルト・アインシュタイン」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3 侏儒の言葉の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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