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2006.4.17
 
 


化石のニュースでつい考えてしまう…

 カナダ北部 Ellsmere 島で、3億7,500万年前[デボン紀]の魚らしき、不思議な化石が発見され、早速「Tiktaalik roseae」と命名された。(1)

 魚ではあるが、四本足の脊椎動物への進化の過程を示す特徴が見られるという。再現モデルの写真を見ると、首があり頭が動きそうだし、指が付いた前足は手に近い感じがする。全体の形状は、魚と言うより、ほとんど陸上動物である。

 進化の決め手は、どう見ても「足」だから、この発見は画期的だと思う。

 進化論(2)支持者にとっては、陸に上がる魚の発展史はわかり易く納得性が高い。(3)この化石で、説得力はさらに高まったと言えよう。

 魚の祖先は顎のないタイプだ。現存する種としては、ヤツメウナギのような類。

 その次に登場してくるのが、顎がある軟骨魚。ガブッと噛める魚が主流になったのである。この食性で一時代を築いた。そのうち敏捷なものは今でも残っている。鮫である。

 しかし、所詮は軟骨。やがて硬骨魚全盛となり、さらに、鰭が発達してくる。

 この鰭が頑丈になると、手足に変わることになる。肺魚はその前駆者だ。呼吸できるようになれば、陸へ上がれる。

 足の機能が優れていたため、様々な種類の陸上動物が爆発的に発生することになる。

 こう見てくると、画期的な機能変化が、王者の地位を与えることになる、と言えそうだ。

 陸上動物も繁栄したが、魚類も負けず劣らず繁栄した。進化が進んで「スズキ目」が大繁栄したのである。
  → 「魚の勝手な分類 (4: 主流派) 」 (2005年4月28日)

 繁栄した種といえば、4つ足動物だけでなく、鳥も大いに繁栄した。
 こちらは、恐竜から生まれたと考えられている。突然、そういえば、鳥は恐竜に似ているなと気付いた学者の想像力がきっかけであろうが、実際に恐竜類似の鳥の化石が見つかったから凄い。
 この化石とは、教科書にも載っている「Archaeopteryx(始祖鳥)」だ。

 しかし、よく調べると、足の形状からみて、始祖鳥は木の枝を掴めないそうだ。2005年12月に、突如発表された。(4)
 という事は、木が無い、干潟に棲んでいた鳥なのだろう。しかし、これが鳥の祖先なのか、大論争が始まりそうである。

 要するに、羽毛や癒合した鎖骨構造は、鳥だけの特徴ではないことが解ってきたのである。両者の線引きは難しいのだ。
 多分、恐竜では、保温のための羽毛、力を加えるための翼、でしかないのだろう。ところが、突然、この羽毛と翼の機能を使って、飛揚メカニズムが登場したのだと思われる。そうなると、突然、「鳥」と定義されてしまう。

 恐竜の特異な一種が、その独特な機能を本来とは違うことに使うようになって、一気に新勢力を作りあげたという流れが見えてくる。
 「非連続的な」イノベーションの見本のようなものだ。

 変化の波に乗り、新機能で新適応方法を発明すると、種の爆発的な飛躍に繋がる訳だ。

 その際は、新機能に合わせ、今まで持っていたものを上手く利用するのが、進化の特徴と言えそうだ。

 ヒトにしても、中耳にある耳小骨は、機能は全く違うが、もともと魚の顔の骨だったと言われている。(5)

 進化の話を聞くと、ビジネスの話によく似ている感じがして、気になってしまう。

 --- 参照 ---
(1) John Noble Wilford 「Scientists Call Fish Fossil the 'Missing Link' 」[2006-4-5 NYTimes]
  http://www.nytimes.com/2006/04/05/science/05cnd-fossil.html
(2) 河田雅圭「はじめての進化論」講談社 1990年
  [全文ウエブ掲載] http://meme.biology.tohoku.ac.jp/INTROEVOL/hajimete.pdf
(3) J. A. Clack原著の翻訳版 「手足を持った魚たち: 脊椎動物の上陸戦略」講談社 2000年
(4) 訳「最古の鳥は恐竜のような足を持っていた」[Science magazine 2005-12-2]
  http://www.sciencemag.jp/highlights/20051202/index.html
(5) 耳小骨のつち骨・きぬた骨・あぶみ骨が魚類の舌顎骨・接続骨・方形骨に相当するとされている。


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