■■■ 多摩動物公園の人気者 2013.4.30 ■■■

   ヴァルデマール君

ヴァルデマール君は、多摩動物公園のユキヒョウ。 [2013.3.17]>>>
2004年、北欧フィンランドのKORKEASAAREN動物園生まれ。2006年来園。
名前はデンマークの中世の王だそうで、その名に恥じぬ好男子である。

・・・それに気付いたのは、「グレの歌」を知ったから。

なんのことやらわからぬ題名だが、デンマークの作家ヤコブセンの小説「サボテンの花」中で語られる詩である。それをドイツ語に翻訳し、シェーンベルクが曲をつけた大オーケストラ編成の作品。演技や舞台装置無しのオペラと言ってよかろう。
小生など、シェーンベルクの名前を聞いただけで敬遠する口だが、これは一聴の価値がある。ただ、浅学の身には、歌詞を日本語訳にしてもらっても、すぐにはさっぱりわからないので辛いものがある。ところが、森鳩が詠う箇所に至ると、言葉の意味など不要で、何故か不思議と感動を覚える作品なのだ。と言っても、宗教的な深遠さに感じ入ってしまう訳ではない。どちらかと言えば反神学的な感じがするから、多分、古代から連綿と続く世界観を、突然にして思い起こさせられるからなのだろう。

筋は単純である。・・・

○中世デンマークのヴァルデマール王はグレの森にある城で愛人トーヴェとの逢瀬に命の息吹を感じる。
 ---//---我が唇は歓呼する「今こそ我が時!」と。
 だが時が過ぎゆけば
 私はさまよい歩くことになるだろう---//---
 悲しみに縛られ
 黒い十字架で
 おまえの愛しい名前を
 土に刻み
 地に沈みゆきつつ嘆くのだ
 「我らの時は過ぎ去った!」と。
  [V 逢瀬 ヴァルデマ]

○王妃は、逢瀬を知り激怒し、トーヴェを毒殺してしまう。
 王の思いは奇妙な入江の中をのたうちもがき
 トーヴェを探し求めていますが
 見つけることはできません。
  [VI 森鳩の歌]

○ヴァルデマール王は慟哭し神を罵る。
 主よ、---//---
 あなたは私を最後の隠れ家から
 狩り出してしまったのだということをご存じですか?
 ---//---
 主よ、あなたは苛酷なやり方をなさるが
 そんなふうに完全に破滅させる方法で人を支配すべきではないのです!
  [VII ヴァルデマ]

○そのため、ヴァルデマール王は家来の兵ともども亡霊としてグレの地を彷徨し続けることになる。
 ――静かに! 風の行為の意味は何だろう?
 枯れた葉をみんな翻して
 ああ、親族を探しているのだな。
 春の青く白い花の流れや
 過ぎ去った地上の夏の夢を。
 それらはずっと前から土になっているのに!
  [IX 夏風の荒々しい狩り]

なるほど。
そういうことか。

運動場で遊んでいるのを見てもわかる話だが、ユキヒョウの生息可能域は極めて狭いと見られている。現在、野生の生息数は4500〜7500匹と推測されているそうだが、そこまでいかないような気がする。ここ16年間で少なくとも20%減ったと見られているらしいが、激減していておかしくなかろう。
ブータンの自然公園を彷徨している姿が画像を通じて知られるようになったが、そもそも、雪彪が棲むような辺鄙な高地が公園とされた時点で運命は"決められて"しまったのである。

(NHK Eテレ) クラシック音楽館 − 東京フィルハーモニー交響楽団特別演奏会“グレの歌”−2013.4.21 21:00-23:00
(プロジェクト杉田玄白正式参加作品) Jens Peter Jacobsen [鷺澤伸介 訳] 「サボテンの花ひらく」
(記事) ブータンで絶滅危惧種のユキヒョウを撮影 。[時事通信社-ロイター] 2012/02/15-12:37
(東京ズーネット ニュース) ユキヒョウ、新顔おひろめ! 2006/07/25



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