■■■ 多摩動物公園の見所 2013.4.26 ■■■

   マレーバク

体つきも、ツートンカラーなのも、実に奇妙だが、その仕草もよくわからないところがある。
立ち寝ている訳でもなかろうに、なにをするでもなく、じっとして動かないことがある。なにかがきっかけとなって固まってしまったかのよう。地面をじっと見続けていることもある。何か気になるものを見つけて観察しているのだろうか。どちらにしても、そんな体勢を続けていれば、くたびれてくるから止めそうの主うが、一向にそんな気配がない。
ところが、一転して、突然走りだしたりすることがある。一人遊びでもしているかのよう。
もっとも、梅雨の時期は雨に興奮して生き生きとして動き回るそうだ。ただ、風除けもなく、屋根無しの場所で、傘をさしての観覧という気にはなれないので見たことはない。

まあ、危険を避けるための避難予行演習をしているということか。熱帯雨林の沼沢地に生息しているそうだから、天敵は間違いなく虎だ。なんか嫌な予感がしたら、先ずはじっとして動かず、周囲に虎がいないか気配を探るに限る。下手に動けばかえって、虎を呼び込んだりしかねないからだ。猫との我慢比べである。
そして、その存在を察したら、三十六計逃げるに如かず。猫だから、必ず追いかけてくるが、これを振り切るための疾走の練習を怠る訳にはいくまい。
となれば、水遁の術の練習もしないとまずかろう。だが、多摩動物公園の小プールでは水浴びレベルしかできないから、しかた無しかな。

そんなことをつらつら考えていると、マレーバクを「奇蹄類」というか、"ウマ"の仲間とするのは妥当と思えてくる。脚力を見せ付けるスマートな姿とは、似ても似つかぬ体型だし、蹄がある動物だといっても、前肢の指は4本で、後肢は3本で、ソリャ奇偶蹄類と言いたくなるが、その本質は奇蹄なのがよくわかる。まあ、勝手な解釈ではあるが、こう考える訳である。
「偶蹄類」とは、基本的には"ウシ"と"ヤギ"の反芻食グループ。山羊を考えればわかるが、岩山に登ったりする訳だから、ひっかけるためには偶蹄の足が望ましいのは明らか。逃走用の蹄でもあるが、餌処にいち早く到達するための蹄でもある。バク君も、森の中や、沼地の辺りの、決して平らとは言い難い場所を移動するには偶蹄の足が欲しくなるのは至極当然。従って、そこだけ見れば偶蹄類。
一方、平原の"ウマ"のグループは危険を察した瞬間にさっさか逃げる。これが生き延びれた最大の理由だろう。平原面積が広い以上、偶蹄類より繁栄していた時期があったに違いないのである。足の中心の一本の蹄で、おもいっきり地面を蹴って疾走するのだから、これ以上逃げ足の速い動物はいまい。「奇蹄類」は逃げの一手で生き抜く決意を固めて生きてきたのである。従って、決意という点では、バク君は明らかにこちらのタイプ。
こんな説明では舌足らずか。偶蹄類は、奇蹄類と違って、逃げの一手では生きていけないことを説明しておく必要がありそうだ。ポイントは反芻動物である点。要するに、大喰らいで、体内に植物繊維の大型醗酵タンクを抱えているということ。このことは、逃げる際にはかなりのハンディを背負っていることになる。従って、疾走して逃げることに全精力を割かなくても生き延びれる手を見つける必要がある訳だ。それが、大勢で角をつきつけて、至近距離の肉食獣を威嚇する手となった訳。豊富で良質な餌がある場所を見つけながら、すぐに逃げてばかりいたら、干上がってしまうし。偶は蹄類逃げの一手ではないのだ。
・・・"ウシ"と"ヤギ"の反芻食グループとはそんな動物達であることは、山羊さん達を見て回るとわかってくる。
  多摩動物公園大人向きコース「山羊さん巡り (20130422)

ともあれ、バク君は逃げの名手である。モノクロツートンカラーなど、隠遁の術そのもの。動かなければ、虎に見つかることはあるまい。
体躯も見事。森の低木や下草のなかを全力疾走するのに最適化された、流体力学で計算されつくしたかのような姿。
鼻が伸びていて自由に動かすことができる構造も素晴らしい。潜水艦状態で何時間でも水中に引きこもることも可能な訳だ。腕を磨いて泳げるようになった猫も、流石にここまでされると手がでまい。

おっと、こんな話をしていると、バク君が日中動き回っていると誤解を与えてしまうか。
訪問すれば、たいていは寝ている。ガラス展示室でただただ熟睡ということも。しかも、暑さ寒さから部屋の方が過ごし易いとも思えない時期でも。まあ、直射日光は苦手というだけかも。
どうも、寝相は決まっていないようだ。足を内側に入れて寝ていることもあり、重い体を乗せるのだから痺れかねないと思うが。ガラス間近な場所でゴロン、遠くの草地で爆睡と、多摩動物公園の環境に安心しきっているようだ。臆病な動物とされているようだが、とてもそうとは思えない。
寝ていると、耳がピクッと動いたりすることもあるが、用心ひているとも思えないから、熱帯雨林を歩いている夢でも見ているのではなかろうか。そんなことに気付くのは、耳先だけが白くなっているから。この装飾もなんだかネ。
獣臭が漂っていることがあるが、室内外のどこを見ても糞が見つからない。そうそう掃除ばかりしている訳にもいかないだろうし、まさか排泄場所のご指導があったとも思えないが、糞貯めでもあるのだろうか。水辺の動物である、水牛や犀は水中に糞尿を放出するのがお好きなようだから、バク君も催してきたら小川までトコトコ行くのかも。
ともあれ、寝転ぶところは清潔に、をモットーにしているようだ。いかにも汚れ易そうな体だが、結構綺麗なのである。これだけ大きいと、頭数も多いから、いくら可愛いといっても全員洗ってやる作業をそうそうやっている訳にはいかないからだろうから、時々、自分からプールに入って汚れを落としているのかも。

(東京ズーネット ニュース) 梅雨のマレーバク 2010/07/09


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