■■■ 多摩動物公園大人向きコース 2013.4.23 ■■■

   山羊さん巡り

今回は、多摩動物公園の山羊さんを見て回ろうという企画。
そんな話をすると、どんなイメージが湧くだろうか。

黒山羊さんから白山羊さんにお手紙が、という歌のフレーズが頭に浮かぶ人もいるかも。小生は、この情景は朝鮮半島と日本列島の文化的溝を表現した歌と見ている。日本では山羊といえば白色が当たり前。しかし、半島では黒ばかりでは。その理由どころか、山羊の違いがあることさえ知らないというのが現実。黒山羊さんからのお手紙を読んだところで、どうせ一知半解。話がそれてしまった。
黒白という色の違いより、アンゴラやカシミアのセーターを提供してくれる山羊の方々への表敬訪問ととる方も少なくなさそう。
一方、山羊好きだと、小振りで頑固なシバヤギ君や、日本ザーネン以外の、海外のヤギが見れるならこれは嬉しいとなるか。シェーブルの原料提供者の顔と臭い位は知っておきたいといったところ。
学術志向が強いと、原種のパサンやアイベックスに会えるなら行こう行こうと張り切るかな。

色々、想像して書いてみたが、以上のどれもが該当しない。そもそも、多摩動物公園は家畜種展示場ではないのだから当然だろう。おっと、例外があった。ふれあいモルモット場横に家畜のヤギさん達が暮している。

前置きが長くなりすぎたが、ヤギ一族の野生種を見物に行こうというお話である。

簡単な話に聞こえるかも知れぬが、素人にとってはこれが結構厄介きわまる。分類に関する知識が欠落しており、牛、山羊、羊の境界がよくわからないのである。と言うか、家畜における見ただけでわかる差に慣れずぎていて、野生種だと一体どれに該当するのか考えあぐねてしまうのだ。まあ、牛、山羊、羊とは、そういう動物に進化してしまったということでもある。おそらく世界の飼育頭数は、どれも10億辺りと巨大な筈だし、改良種も様々あるだろう。従って、野生種は、例外的存在ということになる。わかりにくくて当たり前だ。

従って、山羊巡りをする前に、予め、学問的にどのような分類方になっているのか勉強しておく必要があろう。と言うことで、「鯨偶蹄目」を整理してみた。「目」だ、「亜目」だと言われたところで、素人には豚に真珠だから、自分でわかるように勝手にに改変してみた。その結果、ご覧になればおわかりのように、"ウシ""ヤギ"が異なる分類階層に何回も登場してしまった。こうでもしないと、なにがなんだかわからなくなるのでご容赦のほど。尚、赤字記載動物は多摩動物公園の飼育種である。
 ●ラクダ/リュマ・・・乾燥対応
 ●猪-----
ニホンイノシシ
 ●カバ/鯨・・・水棲
 ●
"ウシ"・・・反芻動物
   
豆鹿
   
プローンホーン
   
鹿-----ヤクシカシフゾウ(2013.3.23)トナカイ(2013.4.14)
   
麒麟/オカピ-----アミメキリン(2013.3.28)
   
麝香鹿-----カモシカ
   "ウシ"
     
ブラックバック、リードバック、インパラ、ダイカー、
     
ブルーバック-----シロオリックス
     "ウシ"
       
アジア水牛-----水牛[家畜種](2013.4.21)
       
アフリカ水牛
       
バイソン
       
"ウシ" ・・・、ヤク、etc.
     
"ヤギ"
       
チルー
       
麝香牛/カモシカ-----ニホンカモシカ
       "ヤギ"
         ・ヒツジ-----
ムフロン(2013.3.31)
         ・バーバリーシープ、・バーラル、・サイガ、・シロイワヤギ、
         ・ターキン-----
ゴールデンターキン
         ・シャモア-----シャモア
         ・タール-----ヒマラヤタール
         ・"ヤギ"-----山羊[家畜種](2013.4.11)

多摩動物公園の飼育動物はかなり"ヤギ"に偏っていることがわかろう。好き好きだが、これが素晴らしいところ。たまたまそうなっているのか、その辺りは知らぬが、主張性を感じさせる。それこそが、一番の教育である。特に大人の。ちなみに、小生は背景をこう読んだ。
 ・偶蹄類主流派は、家畜たる"ウシ"
  同じ草食動物だが奇蹄類("ウマ")を駆逐する勢い。
 ・と言うことは、"ウシ"とは、家畜種なのだ。
  換言すれば、その"元祖"野生種は絶滅の憂き目。
  例外的に、見世物として、アフリカの野生種が残る。
 ・しかしながら、その近縁たる"ヤギ"にはまだ野生種が残存。
  辺境に逃亡した野生種がアジアの高地に存在しているからだ。
  ・・・野生の反芻動物を眺めたいなら、アジア高地の"ヤギ"だ。
 ・鹿は、家畜化されなかったので、部分的に野生種が存続。
 ・特殊な"ウシ"であるキリンは、それなりに地位を維持。
簡単に言えば、反芻動物がヒトとつるんで、家畜化によって世界を制覇したのだが、ヤギだけは家畜化を受け入れた一方で、完全家畜化を拒み、野生種も並存させた訳である。この辺りの姿勢が日本人に好かれる遠因かも。
従って、多摩動物公園のヤギ一族訪問は、日本人的好みに合うのではないか。どんなもんだろう。

それでは早速出発。

正門をくぐり、まっすぐにメインロードを進み、無料マイクロバス乗り場を過ぎると、左側に小さな小屋が見えてくる。
(1) ヤギ[家畜種] >>> (2013.4.11)
普通に「山羊」といえばこの家畜種。このコースは野生種だから、ここでのご挨拶はほどほどにして、先を急ごう。

メインのマイクロバス道を道なりにさらに上る。左手崖下に大きなバードケージがあり、この先に水牛舎が見えてくる。運動場のどこかにペアでのんびり休んでいる筈。"ヤギ"ではないが、比較するのも面白いので、折角だから立ち寄り眺めていこう。下に降りる道に入るだけ。
尚、水牛舎までトコトコ歩く気がしないなら、無料マイクロバスで、サイ舎前停留所で降りてもよい。そこは水牛舎の裏の崖上で、これならそこから下りるだけですむ。
(2) スイギュウ[家畜種] >>> (2013.4.21)
こちらも、家畜種。"ウシ"だが、"ウシ"でないという、なんだか訳のわからぬ言い方しかできない。注目すべきは、ダラダラ気分の動物である点。そこに親近感を覚える方は暫くおつきあいしてみたらどうだろう。まあ、そんな性情が確認できれば十分だろう。

メインロードに戻って、左手崖下に水牛舎の天井があるちょうど斜め反対側に"ヤギ"の野生種が住んでいる。早速、ご挨拶しようではないか。
(3) ヒマラヤタール
ヒマラヤタール君だが、多摩動物公園では注目されない動物として有名らしい。場所が悪いとされている。サイ舎まで来ると、次にオーストラリアゾーンを目指す人が多いので、ヒマラヤタール前に至らずにここから横道に入ってしまうというのだ。一方、メインロードを下りてくる人は少なくないのだが、水牛舎の天井がお好きな放し飼いの孔雀君がいて、これ見よがしに羽を広げているので、丁度坂道のカーブでそれが目に入るので、ヒマラヤタール君そっちのけで孔雀君の大道芸見学にはせ参じることになるのだ。確かに。小生も経験したからよくわかる。
しかし、なんといってもヒマラヤタール君の孤高の精神、糊口ではないと思うが、に触れることができるのがこの展示のウリ。"わざわざ足場の悪い岩の上を歩き"、"くつろぐときでさえ、安定した平地ではなく、しばしば岩の縁のわずかなくぼみに張り付くように座って"いるという、その姿勢に拍手を送りたくなる。「かっこいい!」というか、武士は食わねどたか楊枝とういう今や忘れられた精神性を感じるからでもある。
じっと見つめられ、可愛いとおっしゃる方々もおられるようだが、おそらくそういうことではない。好きな飼育員さんと、一般観客と同じように対応している訳ではなく、じっと見つめているのは胡散臭い輩というだけのこと。試しに、手を振るとか、荷物を急に動かすと、どうなるか。一瞬にして散り散りバラバラになる筈。尻尾をよく見るとよい。全員でないのが、個性発揮の動物らしくて面白いのだが、飼育員さんに好意を持っているほんの一部だけが、かろうじてその意を示すのである。おそらく基本思想が染み付いていて、いくら好きでも、ヒトとは懇意にならないようにしているのだ。それは、ヒトの目から眺めれば、矢鱈に臆病ということになるかも。もっとも、そりゃそうだろう。歴史から見て、とうてい信用できる輩とは言い難いのだから。

そのお隣は、ヒツジの原種である。"ヤギ"のお仲間。
(4) ムフロン >>> (2013.3.31)
眺めるには、このメインロード側ではなく、崖上のゾウ舎-ハクビシン舎前の細道側の方が体の細かいところがよく見える。干草の餌入れで一心に食べていて、観客には知らん顔だが、柵のすぐ近くだからだ。
小生は、直感的にコリャ"ヤギ"ではないなと思った。ヒトと上手く付き合っていこうとの意志がありあり。俗に言う、世渡り上手のクチ。ヒマラヤタールのように、追いやられたら、そこで生き抜くという覚悟を持っているようにはとうてい映らないのである。とはいえ、急激な変化を見て取ると、一瞬にして、一斉に動くから、そこだけとれば似てはいるが。

さらにメインロードを上ろう。左崖下は広場。題して「シフ像広場」。ヒトがのれる大きさの銀色の像があるので、そんな名称がついたということか。その広場の端から、動物舎が並ぶ。メインロードから下の横道に入り、眺めることとしよう。
(5) カモシカ
鹿というよりは、"ウシ"だと思う。しかし、分類的には真性"ヤギ"ではないが、"ヤギ"のグループと言えそう。天然記念物だから大切にという主張もあるが、日本の代表的害獣でもある。という話はすでに別のコースで触れた。

お隣は"ヤギ"とは無縁だが、覗いていこう。
(6) シフゾウ >>> (2013.3.23)
動物をどう見るかという点では、絶品といえなくもないが、まあ、鹿である。間違うことはなかろう。

引き返して「シフ像広場」の端を歩いて、反対側の崖を上る階段道を上ろう。出くわした広い道を上に上ると、このコースの真打。
(7) シャモア
ほとんど崖といった感じの運動場。餌を食べ終えると、上の方に行ってしまうので、崖下から眺める観客は空家と勘違いしかねない。しかし、草が沢山あると、食べるのに夢中なので柵越しに全身の様子を逐一眺めることができる。それにしても柵の高さが異常だが、これは飛び抜けたジャンプ力のせいだという。その♂モンブラン君だが、2006年に両親と来園したが、今や独身状態。群れで生活する動物だろうからえらく寂しいに違いない。しかし、どうも国内にはお仲間はいないようで、どうにもならないようだ。今、唯一の楽しみは餌のようだ。好物が入っていると嬉しい一日が過ごせるといったところ。

そのお隣が今回の出し物のトリ。
(8) ゴールデンターキン
名前の通りで、金色に輝いており、一見の価値あり。油脂成分が表面を覆っているのだろうか。ケアが行き届いている証拠でもあろうが、体躯が牛を凌駕しそうな大きさだから、大仕事ではなかろうか。
尚、この金色は、近縁3種、アッサム[Mishmi:少数民族名] ターキン、スーチョワン[チベット] ターキン、ブータン ターキンでは見られないようだ。もっとも、輝くのは雄だけで、雌は褐色に近い。石楠花や竹林で現れるそうだから、その情景を想像すると、絵にも勝る美しさなのだろう。多摩動物公園の運動場は殺風景な岩山で、まあ、林の谷間よりは、そんな場所を主領地にしている動物らしいから、妥当なのではあるが残念が感じもする。まあ、僅かな植物しかなくても、ミネラル分を摂るには岩山的生活にならざるを得ないのだろう。山羊族の信条として、粗食に徹している訳である。
生息地は東ヒマラヤのチベット辺りだから、高地で、いかにも寒そうな場所。実際、毛足が長くて、厚い毛皮のコートを着こんでいる上に、巨大な体躯というのも当然だと思われる。
ただ、寒さが厳しいというよりは、乾燥した地域と見た方がよいようだ。さぞかし、日本の湿潤の夏は辛かろう。辛くても、そんな素振りは絶対見せないのが山羊族の掟である。でも、ココ多摩動物公園では裏山に辺り、冷え冷えとした場所であり、都会ではなかなかこんな場所は無いのだからそこら辺りは納得して頂きたいところ。
♂ボウズ君は運動場で座っていることが多いが、ご高齢のせいらしい。たいていはメス2頭と一緒にいるのだが、そんなときは干草を食べて健康なことをアピールするらしい。メスがいないと絶食。歯が悪かったらしいと、飼育員さんが気付いて対応したら、食欲が戻ったそうだ。
2013年4月現在、多摩動物公園には♂3頭、♀4頭が飼われており、繁殖に注力中だそうだが、♂ボウズ[1997年@多摩]・♀オーキ/鶯姫[2005年@多摩]夫妻も2010年同様に、♂鶯巓/オウテン君の次ということで、一つ頑張って欲しいもの。そろそろお爺さんお婆さんコンビだというのに無理なお願いというのが一般論だが、山羊族のモットーはなんといっても旺盛な繁殖。老齢化なにするものゾの筈である。

さあ、これで終了。
帰りだが、「アジアの平原」が4月下旬に開設される予定だが、そうなると、今、通行止めになっている道から、この新設展示場を通って正門出口に抜けることができる。(もともとは、ここはマイクロバス通りだったから、いずれ復活すのかも知れぬ。)そこには、"ウシ"に地位を奪われた、"ウマ"の野生種であるモウコノウマの運動場。反芻動物の天下の前までは、絶好調だったようだが。

(東京ズーネット ニュース)
ヒマラヤタールが見やすくなりました 2011/07/29
クジャクに負けるな!!ヒマラヤタール 2009/06/26
もう1頭のシャモア 2008/06/06
元気になったゴールデンターキンの「ボウズ」 2013/01/11
ゴールデンターキンの「オーイ」が出産──3/28



 多摩動物公園の見所−INDEX >>>    HOME>>>
 (C) 2013 RandDManagement.com